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トガリ  作者: 吉四六
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大災害の後は復興と正座

 各地の被害状況を、イデアを使って、確認させる。

 ハルディレン王都で、全人口、百四万二千五百六十二人の内、死者十四万五千五百六十二人、負傷者三十五万四百六十三人。

 この時点で目眩がしたよ?

 一割以上の人間が死んでるよ。三割強の人間が負傷者ってどうよ?嘘だろう?

 各領地から軍が集まってたから、とんでもない人数になってるよ。

 ディラン・フォン・コーデル伯爵領で、全人口、二十一万六千八百一人の内、死者が九千三百七十八人、負傷者が九千百二十七人。

 少ないように感じるのは気のせいか?気のせいだよ。超激甚災害だよ。

 ヘルザース・フォン・ローエル伯爵領で、全人口の十二万三千六百八十二人の内、死者九十二人、負傷者千六十二人だぞ?

 全部で、いったい何人の人間が死んだんだ?

 知ってるよ。

 十五万五千三十二人だよ!

 負傷者に至っては三十六万六百五十二人だぞ?

『それでも俺達の量子情報体の人数の方が多いな。』

 イズモリ、超、超、超他人事。

 もう吃驚(びっくり)だよ。お前のその冷静さ。

『大規模なトリアージが必要だ。ヘルザース領は比較的被害が少ない。問題は王都とディラン・フォン・コーデル伯爵領だ。王都の負傷者数は桁違いだが、被害範囲が狭い。ディラン伯爵領の被害範囲が極端に広い。航空母艦と駆逐艦はディラン伯爵領に回した方が良いだろう。王都は国体母艦だけで対処出来る。』

 冷静だから、的確な指示が出来るってことか。わかった。

 全員に一斉通信を行う。

「各員に通達。部隊の再編成を行う。ヘルザース・フォン・ローエル伯爵領にあっては、現状のヘルザース隊が単独対応、ハルディレン王都にあっては、国体母艦が対応する。他の駆逐艦及び航空母艦は、全てディラン・フォン・コーデル伯爵領に向かえ。航空母艦搭載機、八咫烏にあっては、消火作業用に換装、要救助者搬送及び航空支援機のみを残し、各員は酒呑童子に運用変更。各艦の空中停泊座標及び要救助者座標にあっては、イデアから地図上にマッピングされる。各艦、速やかに目標座標に向かい、救出救護活動を実施、なお、遺体にあっては対応可能な地元民に任せ、暴動略奪にあっては、現場指揮官の判断に任せる。以上。」

 ディラン・フォン・コーデル伯爵領においては、広域活動となるため、駆逐艦と航空母艦を集中させ、救護所拠点として運用する。

 八咫烏は救助現場と各救護拠点を往復させる。パワーアシスト機能を有した酒呑童子は救助専属だ。

 酒呑童子は、パイロット生還率を向上させるためにサバイバル機能を特化させた。

 各種センサーと運動性能は充実させたのだ。

 瓦礫内に取り残された要救助者のバイタルサインを遠距離から検知、確認することができ、イデアのサポートで、的確な瓦礫の撤去作業が出来るはずだ。

 国体母艦に残されている酒呑童子は三百六十機と少ないが、その分、俺が、救助現場に向かって、瓦礫を分解消去すればいい。

 治療については、イズモリ分体を当たらせ、国体母艦の獣人培養カプセルをフル稼働させるつもりだ。

 そう、そういう、つもりなんです。

 そういう、つもりなんですが、今、俺は正座させられてます。

 そうだよ。正座しながら、さっきの指示を出したんだよ。

『航空母艦四番イカヅチ、カナデから国体母艦指令部へ。ディラン・フォン・コーデル伯爵領担当区域の要救助者にあっては少数のみを確認、艦内に救護者を収容後、速やかに王都に向かいたいと考える。その点、如何?』

 何だよイカヅチって。勝手に名前を付けやがって、ビリビリの名前にノリノリだな。

 俺は足がビリビリだよ。

「国体母艦指令部から各隊、担当範囲の救護者を確保収容後は、暴徒鎮圧警戒の部隊を編成、担当地域に暴徒鎮圧警戒部隊を残留、その他の者は速やかに王都に集結、王都救助の支援活動にあたれ。以上。」

 はい。今も正座です。

 目の前には、オルラ、トンナ、アヌヤ、ヒャクヤ、ロデムス、それとイデアがいる。

 なんでイデアがソッチ側なんだよ?お前もコッチ側だろ?おかしいだろ?

「さて、状況はわかったよ。とにかく、お前は、あの光の中に、単独で、生身で、飛び込んだんだね?」

「…はい。」

 俯き加減に頷く。だって、オルラがメッチャ怖いんだもん。

「イデア。間違いないのかい?」

 オルラに問われて、イデアがオルラの方に向き直る。

「間違いありません。コックピットハッチは閉鎖しておりましたが、マスターが粒子化加速移動にて、単身生身の状態で、励起した霊子エネルギーの中に飛び込んで行きました。私には止める暇もありませんでした。」

 おいっ!AIプログラム!なにを自己弁護に走ってやがるんだ!お前はこっち!こっちに座れ!

「いや、だって、あの状況じゃあ、ああするしか他に方法なんて…」

 オルラに睨まれて、口を(つぐ)んでしまう。最後の方では視線を逸らして、ゴニョゴニョと呟くだけになってしまった。コエーんだよ。オルラの睨みって。

「本当に、他に方法はなかったのかい?」

 俺は頷く。

「そんなことない!!」

 あれ~?トンナが俺に対して魔獣モードだよ。なんで~?

「トガリなら!何とかできたはずだもん!!」

 いや、もんって言われてもなぁ、もっと具体的に、建設的なことを言ってくれなきゃ…それに魔獣モードで涙を流すのは止めてくれ。かなり胸が痛むので。

「そうなんよ。チビジャリなら、もっと、とんでもなくって、凄いことを思いついて、余裕で、あんな魔獣をやっつけちゃうんよ。」

 何だよそのスーパーマンみたいな、ご都合主義なマキナデウスは。

「むう。我は恥ずかしいのじゃ。我と闘った時の主人ならば、あの程度のことで、我が身を危険に晒すことなど無いと思うのじゃがのう。」

 オイオイ。無茶振りにも程があるだろう?それじゃ何か?ロデムス、お前は、あの恐竜魔獣よりも強いってことか?オッ?

 ヒャクヤが俺の頭を優しく抱き締める。

 え?

 ヒャクヤにはあり得ない展開だよ?

「皆、酷いの。ウチは、この変態ド助平マザコンノータリン馬鹿マスターが、生きて帰って来てくれただけで嬉しいの。」

 おい。絶対、(けな)してるよな?それに、皆に見えないように俺の頬っぺたを(つね)るのを止めろ。抱き締めてるのは抓るのを隠すためだろ?コラッ!

 とんだ修羅場中の俺を余所に、救助現場では殺気立った通信が飛び交っている。

「ヒッ!!」

 ヒャクヤがトンナに睨まれて、チビリながら、俺から離れる。

 腹黒チビリで、神秘的アルビノ美少女って、どんだけキャラ付けするつもりだ。

 トンナが俺の目を真剣な眼差しで覗き込む。

「…ホントに…死んじゃったかと思ったんだから…」

 うん。まあ、覚悟はした。確かに死ぬと思った。

「でも、トガリなら絶対死なないって思った。…でも、死んじゃったかもしれないって…」

「うん。ゴメン。」

 トンナが俺を抱き締める。

 うん。トンナ、俺、トンナに殺されるんだね?そんなに力一杯締められたら、俺、死ぬよ?

「まったく、お前は、何度あたしらを心配させるんだい?」

 オルラが溜息を吐きながら肩を竦める。

「そうなんよ。トンナ姉さんもオルラ姉さんも、もう無茶苦茶に慌ててたんよ。オルラ姉さんなんか、もうスッゴイ絶叫してたんよ。」

 アヌヤの不用意な発言に、オルラとトンナの顔が赤くなる。

 オルラが咳ばらいを一つして、体裁を整え、口を開く。

「まあ、とにかく無事で良かったよ。でも今後のことを考えて、叔母のあたしから、お前に一つ、命令するよ。」

 トンナが俺に凭れ掛かったまま、オルラの方を見やる。

「へ?命令?」

「そうさ。この命令は絶対に守ってもらうよ?」

 オルラが悪い笑みを見せる。

 イヤな予感しかしない。

「お前、この三人と契りを交わしな。」

 トンナ呆然。

 アヌヤ呆然。

 ヒャクヤ、チビリながら呆然。

「へっ?」

 ちなみに俺は唖然だ。

『契りキタ――――!』

 うん。クシナハラは黙ってようか?な?

 トンナが真赤になりながら、徐々に、にやけてくる。

 ヒャクヤが真赤になりながら、徐々に、にやけてくる。

 アヌヤが真赤になりながら、徐々に俯きだした。

「な、なんで?あれ?オルラ義母さん?保護者でしょ?なんで?あ、俺の聞き間違い?」

 オルラが笑う。

「いいや。聞き間違いじゃないよ。お前は護るものを持つべきなんだ。死んじゃ駄目だっていう重しがいるんだよ。」

 ええええええ?

 イヤイヤイヤイヤイヤイヤ。俺は皆を護ろうとして、今回こういうことになったんだよ?

「あれ?皆を護ろうとした結果がこうなんだけど?え?」

「いえ、マスター。それは誤解です。」

 イデアの横槍に、俺は思わず、イデアを睨んでしまった。

「今回、建造された各竜騎士の外装には幽子除去マイクロマシンが塗布されております。したがって、励起した霊子エネルギーであっても、幽子除去マイクロマシンで無効化することが可能です。よって、皆さんを護るためとの、マスターの考察及び見解は間違いであると判断いたします。」

 …

 おい。

 お前は俺の下僕だよな?

 俺を崖下に突き落とす下僕なんて必要ないぞ?

「聞いたかい?お前は、もっと自分を大事にしなきゃいけないんだよ。」

 トンナが力一杯抱き付いてくる。

 ほら、殺されそうだよ?今、殺されそうだよ?

「ねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえ。どうする?子供は何人欲しい?一杯産むよ?沢山産むから!一桁じゃ寂しいから、二桁は欲しいよね?三桁に挑戦する?良いよ?あたしは、全然頑張るから!」

 何言ってんだ?一人っ子じゃ寂しがるから二人は欲しいね?みたいなノリで三桁の子供が欲しい?三桁は無理だろ。

 一年に二人産めても五十年かかるぞ?まさか、獣人って、いっぺんに六つ子とか産むのか?イヤイヤ、出生率低いって言ってたじゃん。

 ヒャクヤがトンナの反対側から抱き付いてくる。

「まあ、変態ド助平マスターが、ウチのことを求めるのは、(やぶさ)かじゃないの。子供が欲しいってのならジャンジャン産むの。」

 イヤ、その前に死ぬよ?今、死ぬよ?両サイドから首絞められてるんですけど?

 アヌヤが俺の前に仁王立ちになる。

「決めるんよ…」

 何を?ってか、声が出ないッス。

「チビジャリがっ!童貞を捧げる相手を決めるんよおおおおお!!」

 お前は真っ赤な顔して、仰け反りながら、何を叫んでる?訳がわからんぞ?

 トンナとヒャクヤが幽鬼のように立ち上がる。

「アヌヤ、ヒャクヤ…ボコられる覚悟は出来たかい?」

「勝負の判定は子作り大好きマスターなの。勝負方法も変態サドDEATHチビ親方に決めさせるの。」

「ちょ、ちょ、ちょっと待って!なんで?なんで三人?」

「だって、この子達は契約の所為(せい)で、一生、お前から離れらないんだろう?じゃあ、キチンとお前が責任取らなきゃ駄目じゃないか。」

『そりゃそうだ。責任取らないとな。』

 イズモリ…お前まで…

『そうだよ。年上の男として、キチンと責任取らないとねぇ。』

 イチイハラ…

『当然だね。』

 カ、カナデラ…

『当たり前だ!男として!!』

 タナハラ~!

『責任…とらないで、ヤリ逃げしようよ。』

 クシナハラ、お前、それはそれでクズだろ?

 そうか、そうだよな。避けては通れぬ道だ。クシナハラ、お前のお陰で目が覚めたよ。

「わかった。契りを結ぶ。」

 トンナ、アヌヤ、ヒャクヤが正座したままの俺の方を振り返る。

 キラキラしてやがるな。まったく。

「でも、その理屈なら、コルナも入れて四人だ!」

 俺の一言で、トンナ達が、あからさまに嫌そうな顔をする。

 コルナ、スゲエな。かなり嫌われてるぞ。

「コルナが承知するなら、俺は四人と契りを結ぶ!でも、コルナが嫌がったのなら、この話は無しだ!!」

 頼むぞコルナ!お前だけが俺の希望だ!

 俺は現在、長距離の瞬間移動が出来ない。したがって、コルナをここに瞬間移動させることも出来ない。

 とにかく、この話は保留となった。

 ヤバかったよ。貞操の危機だったよ。三人に蹂躙されるとこだったよ。

 正座から解放されて、痺れる足を擦りながら、ハンガーに向かう。

「俺の童子丸は行けるか?」

 隣を歩くイデアと頭の中のカナデラに聞く。

「はい。復旧整備完了しております。」

『いつでも行けるよ~。』

「よし。」

 歩きながら、俺から分体が別れる。

 イズモリ、救護活動を頼む。

『わかった。』

 通路の分岐で俺とイズモリが別れる。

「魔狩り隊!行くぞ!!」

 俺の後にオルラを始めとした、魔狩りの仲間が続く。

 ハンガーにて、正座した酒呑童子の背後に立つ。

 圧縮空気の抜ける音と共に背面装甲が動力系統と共に跳ね上がり、着装内殻が現れる。

 足を差し入れ、専用のヘルメットを着装し、腕を通す。

 俺の専用酒呑童子。童子丸に火が入る。

 一本の角が特徴的なスッキリとした外観だ。カラーリングはスサノヲと同じ、一目で俺の装着機だとわかる。

 オルラの酒呑童子は御殿(みどの)(きさき)、トンナのは(ごう)(おう)()、アヌヤが天来(てんらい)()、ヒャクヤがチビ(ひめ)(さま)だ。

 プロポーション、カラーリング共に各自の竜騎士と同じだが、特徴的なのは角だ。

 酒呑童子だからね。というのがカナデラの拘りだ。

 ハンガー内には多くの人間が右往左往している。

 怪我人を乗せた強襲揚陸艦が着艦し、(から)になった強襲揚陸艦が発艦を繰り返している。

 ハンガーハッチは開けたままだ。

 閉じる暇もないのだ。

「管制ブリッジ。酒呑童子、童子丸、御殿后、豪王姫、天来姫、チビ姫様、以上五機。出場する。救助作業中各機の予定ルート送れ。」

 前面のモニターパネルに強襲揚陸艦の進入、発出予定ルートが、三次元図形で明示される。

 イデアが、入れ替わり立ち替わり、救助作業に追われる強襲揚陸艦のルートを避ける形で、俺達の発艦予定ルートを明示し、管制ブリッジにそのルートを送信する。

『酒呑童子五機の発艦ルート確認、各強襲揚陸艦に伝信よし。発艦許可どうぞ。』

「酒呑童子、魔狩り隊。発艦!」

 背中に取付けられた小さな円盤、質量方向変換器が回転する。

 脇の下と腰に取付けられた霊子ジェットが青白い光を吐き出し、童子丸が浮き上がる。

 急激なカーブを描いて、強襲揚陸艦を器用に避けて、空へと飛び出す。

 この日から三日間、俺達は不眠不休で、救助作業に従事した。

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