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トガリ  作者: 吉四六
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魔獣のいる海(挿絵あり)

挿絵があります。

 大半のマイクロマシンを失った俺は、遠距離の情報を知る術を持たない。あくまでも、竜騎士の索敵機能である、レーダーと遠距離望遠、各種センサーに頼るしかない。

 僅かに残ったマイクロマシンのほとんども、カナデラとトーヤに譲っている。

 俺が保有しているマイクロマシンは咄嗟の場合に使える瞬間移動用、俺を分解し、再構築するマイクロマシンだけだ。

 視認できない距離で瞬間移動は使えない。

 今までは、移動先をマイクロマシンで確認していたから、遠距離瞬間移動していたのだ。

「イデア、お前が頼りだ。頼むぞ。」

「了解しております。マスター。」

 俺の竜騎士だけではない。国体母艦を始めとする駆逐艦、航空母艦、強襲揚陸艦、戦闘機、そして酒呑童子と名付けた、パワーアシストスーツ、魔導強化鎧にもイデアのAIプログラムが搭載されている。

 俺も竜騎士のコックピット内でトロノアの姿から、普段のトガリの姿に戻り、その魔導強化鎧、酒呑童子を再構築、装着する。

 子供の俺が酒呑童子を装着することで、トロノアと同じ身体サイズとなる。

 俺の酒呑童子だけ特別製で、マスタースレイブシステムを搭載しているので、身長がかなり高くなるのだ。

 酒呑童子は、パイロットの生還率を向上させるためにイデアのセクションから接収した物だが、そのパワーと頑強さは、龍を除く、ダブルナンバーの魔獣であれば、十分に戦える仕様だ。

 スペシャルナンバーの魔獣や、龍であっても、軽戦闘機の八咫烏と組めば、余裕で討伐出来る。

 俺以外の戦力は十分に分散したはずだ。

 皆、死ぬなよ。

 酒呑童子の胸部ハッチを上げて、竜騎士操作用のマウスピースを酒呑童子にシッカリと噛ませる。酒呑童子の胸郭内から竜騎士連動用のマウスピースが迫り出し、俺はそのマウスピースを噛む。

「酒呑童子ナンバー00童子丸、竜騎士ナンバー00スサノヲとリンク、同期完了、霊子回路接続。いつでもどうぞ。」

 マウスピースを噛みながら、俺は獰猛に笑う。

「行くぞ!イデア!!」

「アマテラスモード起動、光翼展開、霊子エンジン臨界、目標、北緯五十三度〇六分二十五秒、西経八十二度十三分五十一.六秒。高速飛翔準備完了。」

 俺の竜騎士の名前はスサノヲだ。

 外観はシンプルに纏めていたのだが、ローデルに叱られた経緯があって、背中には円盤を取り囲んだ、三重の円環が取り付けてある。

 神々しい意匠を求められたので、仏像の光背が元ネタだ。

 このスサノヲ、アマテラスモードとツクヨミモードがある。今使っているアマテラスモードは高速移動、多対一の戦闘時に使用する。

 ツクヨミモードは長距離狙撃時、スサノヲモードは、殲滅戦用だ。

 一番外側の円環が、最上部のジョイント部分を中心に、下から割れて、半円を展開する。

 光背が翼の縁を形成し、霊子ジェットの青白い光を吐き出す。

「光翼展開完了、霊子ジェット出力上げます。」

 イデアのナビゲーションを聞き、俺は真直ぐに前を向いたまま静かに命令する。

「高空警戒怠るな、全速前進。」

 光翼から青白い光が噴出し、翼を形成しながら機体を打ち出す。挿絵(By みてみん)

 最高速度はマッハ七.五。

 身体内の霊子を操れない者なら死んでしまう急加速だ。

 体の細胞一つ一つに霊子を満たし、その霊子に機体の進行方向と同じ方向へと質量移動を命じる。

 細胞の一つ一つが機体と同じ速度で同じ方向に進んでいるからこそ出来る加速だ。

「上空から落下物体接近。〇.〇三秒後右後方に着弾。」

 イデアの台詞が終わった直後に、通り過ぎた地面が大きく抉れる。

「イデア、もうちょい早く教えてくれる?」

「以降は、報告前に回避行動に移ります。ご許可願います。」

「…うん。許可します。」

 何か、こいつも下僕から外れそうな雰囲気だな。

 そんなことを思っている内にスサノヲが回避行動を取る。右に高速スライドしながら、左に傾く。

 機体の左を黒い物体が通り過ぎ、王都と同じようなクレーターをその着弾地点に作り出す。

 左へと錐揉みしながらスライドする。

「人里を避けたい。ホルルト山脈に移動する。」

「了解しました。質量弾落下予測地点表示、回避予測ルート表示します。」

 十三か所の質量弾の着弾地点が赤く明示され、青い回避ルートがホルルト山脈へと誘導する。

 錐揉みを混在させながら、着弾地点を避けるが、イデアが俺からコントロールを奪う。

 予測着弾地点から離れて、正確にスサノヲを狙って質量弾が降ってくる。

「おい。」

「ただ今の高空狙撃にて、Gナンバーズが、演算にてスサノヲの進攻ルートを予測していないことが判明。高空座標にてGナンバーズの分体を散開させ、こちらの位置座標を特定している可能性があります。」

 シレッと言いやがるな。

 ホルルト山脈の斜面に沿って上昇する。

 下降中の龍の姿を確認する。ヘルザース領へと向かう龍どもだ。

「アマテラス兵装、高出力レーザー砲展開。」

「了解しました。高出力レーザー砲展開します。」

 光背中央の円盤が分割され、中心部分がせり出してくる。

 龍がこちらに向かって飛来する。

 せり出した円盤の周囲には三十六個のレーザー射出口がある。

 俺の背後で質量弾が着弾し、山脈を抉り、谷を作り出す。

 射出口を備えた円盤が回転を始める。

「龍をマーキング。」

「Bナンバーズ、ダブルナンバー二十三頭をマーキングしました。」

 スサノヲの姿勢を変えないままに急激な上昇で、龍の群れを(かわ)し、龍の群れ、中心上空で下降する。

 龍の群れが渦を巻くようにして、俺の目指す座標へと待ち伏せのために集結しようとする。

「目標座標に到達カウント、三、二、一。」

 姿勢を補正。

「撃てえええええ!!」

 高速回転する円盤からレーザーが射出される。

 三十六個の射出口から、連続して、五発づつのレーザーが龍の頭と言わず、足と言わず、体中を撃ち抜く。

 同時に加速。

 さっきまでいた座標に黒い質量弾が駆け抜ける。

 加速したスサノヲで、撃墜された龍の間を縫うように飛ぶ。

 上昇。

 ホルルト山脈を遥か下に臨み、俺は魔獣を捉える。

 海の上。

 体の大部分を海に沈めた状態だ。

 体と接する海水が沸騰し、白い水蒸気を立ち昇らせている。

 四肢で立つそれは、恐竜のブラキオサウルスに似ていた。

 ズームアップ。

 巨大なシルエット。

 二百メートルに及ぶ長い首がうねるように持ち上げられる。

 顔が上を向き、これでもかと口が開かれる。

 ゴツイ腹部がブクブクと、見た目にも急激に膨らんでいく。

 直立した喉に無数の裂け目のような(えら)が開く。

前脚の付け根の関節が、折畳まれた状態から伸展して、前駆その物が持ち上がり、胸部が爆発したように膨張する。

 喉の鰓から炎を吹き出し、海に沈んだ尻尾の辺りで海面が爆発して、大量の水蒸気が発生する。

 大きく開かれた口から爆炎と共に黒い弾丸が射出され、目では追えないスピードで上空へと消えていく。

「全長八百メートル、重量六千二百五十八トン。直径三十センチメートル、全長六メートルのタングステン製の質量弾を高度一千キロメートルまで上昇させ、軌道補正用のブースターにて軌道修正後、地表に向けて落下させるGナンバーズです。」

 機体が右へとスライドする。

 スサノヲの左側をタングステンの質量弾が通り過ぎ、山脈の岩塊を吹き飛ばす。

 出来上がったクレーターに周囲の岩塊が崩れ落ち、深い谷を形成する。

 ホルルト山脈の美しい稜線は既にない。

 歯の欠けた櫛のように、極端な乱高下を見せる折れ線グラフのような、山脈とは呼べない状態だ。

「体温上昇抑制と自重を支えるために、当該Gナンバーズは海から出てきません。体温冷却と射出時の冷却材として、尻尾から海水を吸引、冷却後は水素を抽出、水素爆発で質量弾を打ち上げます。」

 再び持ち上げられた首が、上ではなく、水平に伸びる。

 腹部が膨らみ、鰓が開く。

「おい。水平射撃もするのか?」

「可能です。」

 大きく開いた口から、黒い弾丸が爆炎と共に射出される。

 ピンポイントの着弾ではない。

 カルザン帝国まで飛ぶかもしれない。

「スサノヲモード起動!!暗黒粒子噴出収縮展開!!」

「スサノヲモード起動しました。暗黒粒子噴出。必要量展開までカウント二、一、展開。」

 スサノヲの胸から黒い霧が噴出し、意思を持っているかのように蠢きながら、スサノヲの前面に展開していく。

 タングステンの弾丸がその黒い霧に真直ぐに飛び込んで来る。

 高硬度を誇るタングステン製の弾丸が、スサノヲの黒い霧によって、分解され、黒い霧が再びスサノヲの胸へと吸収される。

「ツクヨミモード起動!荷電粒子狙撃砲用意!」

「ツクヨミモード起動しました。スサノヲ暗黒粒子と連動させますか?」

「スサノヲ暗黒粒子と連動、アマテラスモード高速機動、予測ルート設定、ルート上高速移動にあってはイデアに任せる。」

「了解いたしました。ルート設定完了、高速機動を開始します。」

 ランダムなジグザグ移動。

 魔獣に照準を絞らせないための高速機動だ。

 肘関節を起点に、前腕が、人体工学上ありえない方向へと回転する。

 肘の外側へと回転した前腕の代わりに出現したのは、荷電粒子砲だ。

 両腕の荷電粒子砲をGナンバーズの魔獣へと向け、黒い分解粒子を収束させる。

 光学照準のマーキングが、俺の瞳に連動して、上下左右に揺れる。

「トライモード起動限界時間十秒前。カウント開始します。」

 三つのモードを同時起動させ続けるには、幽子の供給が、霊子の消費に追い付かない。

 六つの霊子ジェネレーターが、全力で高速フル回転しているのだ。見る間に霊子の保有量が減っていく。

 高速機動中のスサノヲから、正確な射撃は難しい。

 常人にとってはだ。

「五、四、三…」

 カウントが遅く感じる。

 俺は高速ゾーンに入る。スサノヲの高速機動の中にあっても、高速ゾーンに突入した俺にとっては緩やかな世界だ。

 魔獣の首元に狙いを着ける。

「発射。」

 荷電された黒いマイクロマシン、黒い荷電粒子ビームが高速で射出される。

 魔獣の前面で黒いマイクロマシンが拡散減衰させられる。

 わかってるよ。

 お前もマイクロマシンが生み出した化け物だ。マイクロマシンへの対抗策ぐらいあるよな。予想通りだよ。

 加速されたマイクロマシンがマイクロマシンによって拡散されていく。刹那の瞬間の中、俺はタングステン製の質量弾丸を黒いマイクロマシンの霧の中から再構築する。

 互いのマイクロマシンで相殺し、防御の無くなった首元へと、荷電粒子と同じスピードで撃ち出された質量弾が吸い込まれていく。

 巨大な穴を構築して、タングステン製の質量弾が貫き、海上を飛翔する。

 魔獣は首元から背骨に至る部分を吹き飛ばし、口から絶叫ともとれる咆哮を上げながら、(くずお)れる。

 倒れそうになる前脚に力を込めて、体勢を保とうとするが、根元を撃ち抜かれた長大な首は、支えられることなく、うねりながら、海面へと叩きつけられる。

 大きな波飛沫を上げながら、首が根元から着水する。

 もう一度、物理的作用を有するような巨大な咆哮を上げ、魔獣の顔が海水へと沈んだ。

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