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トガリ  作者: 吉四六
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破壊

『私の管理者権限が剥奪されました。』

「なに?」

 過る不安は、セクションで手に入れた、治療用に用意している各カプセルが使えなくなったのではないかということだ。

「あのカプセルが使えなくなるのか?」

『Aナンバーズ複製用のカプセルは使えませんが、Bナンバーズ培養用のカプセルはシステムから切り離すことが出来ましたので、使用可能です。』

「他に発生する問題は?」

『私の管理下にあったB、D、G、I、各ナンバーズの管理権限を失ったことになりますので、コントロールできません。』

「待て!Gナンバーズだと?何だ、そのGナンバーズってのは?」

 思わず声が大きくなる。

『ジェノサイドのGです。』

「大量虐殺か!」

 俺は、思わず、大声で怒鳴りながら、立ち上がっていた。

『違います。人だけを目的としていません。国家の生活基盤そのものを破壊する行為です。』

 余計に性質が悪いじゃねえか!

「どうされました?」

 俺の慌てた様子に、ヘルザースが、何事かと、声を掛けてくる。

「ヘルザース!竜騎士を召喚しろ!オルラ!帰還準備!この国のことはもういい!ほっとけ!」

 ヘルザースが、すぐに自分の竜騎士を呼び寄せる。

 俺は各員に連絡するため、俺、オリジナルの連なる星々の印を取り出す。一斉通信機能を解除して、全員に呼び掛ける。

「各員!戦闘準備!機関全開!即時行動可能状態で三百六十度警戒態勢!警戒レベル最高まで引き上げろ!」

 俺が竜騎士のコクピットに瞬間移動で戻ったのと、ほぼ、同時にそれは起こった。

 極端な空気密度の差がモニターに映る風景を歪ませる。

 歪みが波のように襲いかかり、強烈な振動と衝撃波に機体が振り回される。

 一瞬にして巨大な城が消失して、城があった場所を中心に、地面が盛り上がり、うねりながら津波のように周囲へと広がる。

 城で発生した地津波は容赦なく王都へと広がり、建物の悉くを呑み込み破壊する。

 一定音量を超えているため、スピーカーから音は響いてこないが、機体その物が音の振動で震えている。俺自身の鼓膜も馬鹿になったほどの轟音だ。

 閃光も爆発も起きていない。

 突然の消失と地津波の発生。

 竜騎士の機体でさえも立っていることが出来ない。

 建物の瓦礫が、周囲から降り注ぎ、三百六十度モニターに映し出される風景が、様々な方向で回転している。

 何だ?何が起こった?!

『大質量兵器だ!宇宙空間からタングステンか劣化ウラン弾を落としただけの簡単な兵器だが、核弾頭と同等以上の威力がある!』

 地津波が治まり、俺は巨大な瓦礫を押しのけ、空の下に竜騎士の顔を出す。

「オルラ!ヘルザース無事か!?」

『何とかね。』

『はい、こちらも何事もございません!』

「よし!飛行モードにて帰還する!敵は大質量兵器を使用しているものと推測!高高度からの飛来物体に警戒せよ!」

 俺達は霊子ジェットを吹かして、空中へと舞い上がる。

 高度を上げて、臨んだ王都は悲惨な状態だった。

 城は完全に消失し、その城があった地点を中心に約十キロメートルに渡って建物が全壊している。

 地盤そのものが破壊され、王都の大部分の建物が何らかの損害を受けている筈だ。

 イズモリ、分かれて行動しよう。

『そうだな。手が足りなくなるだろう。』

「イデア!ナンバーズの現在位置及び数はわかるか?!」

「東のヤンドーレン湾にGナンバーズが一頭、ヘルザース様のローエル都にて、高空から二百四頭のBナンバーズが接近中、ホノルダ群統括中央府にて二十八頭のDナンバーズが出現中、ディラン・フォン・コーデル伯爵領のコーデル都に二十四頭のBナンバーズ、同じくディラン・フォン・コーデル伯爵領デリノス都に二十二頭のBナンバーズが出現中、ディラン・フォン・コーデル伯爵領内テノダリ・デロ・コロン男爵領にも二十二頭のBナンバーズが出現中、ゴロイア・デロ・サスカッチ男爵領においても二十五頭のBナンバーズが出現中、ハルディレン王都においても、五十四頭のBナンバーズが出現中です。」

 頭の中の地図にマークする。

 ヘルザース領に二百四頭のBナンバーズ。高空から接近中ということは、これは龍だ。

 ホノルダ群統括中央府を始めとしたコーデル都、デリノス都、そして、二つの男爵領はいずれも、ディラン・フォン・コーデル伯爵領だ。

 ここ王都にもBナンバーズが出現中だから、全部で七か所、ヤンドーレン湾のGナンバーズを入れれば八か所だ。

 現状急務なのは、王都の被災者救助、救護だ。

 俺は、国体母艦のブリッジ、ブリッジでも一段高くなった総指揮所に俺の分体を作り出す。

「トガリ!」

 トンナを始めとした獣人三人娘が泣きそうな顔で俺を見る。

「トンナ、大丈夫だよ。今から役割分担と隊を編成する。トンナにも働いてもらうからな。」

「うん!!」

 トンナが元気よく返事する。

「アヌヤ、お前の暴れっぷりに期待してるぞ。」

「任せるんよ!!」

「ヒャクヤ、お前は…ちびるんじゃないぞ。」

「なんで?!なんでウチだけ、そうなの!?」

 ブリッジから見える王都は酷い惨状を呈していた。火災も起こり、黒煙が幾筋も上空へと伸びている。巨大なクレーターを生んだ大質量兵器の悲惨な光景にトンナ達も息を呑んだことだろう。

 ブリッジ総指揮所には獣人三人娘の他にズヌーク、ローデルの貴族二人とセディナラ、カナデ、カノン、ルブブシュ、クノイダの五人がいる。

 イズモリはここで、俺達と別れて、救出救護に当たってくれ。

『了解した。』

「王都担当部隊を編成する。救出担当セディナラ、救護担当カノン、魔獣掃討担当ズヌーク、総指揮者は俺だ。アラネ級強襲揚陸艦、一番艦から十番艦までに酒呑童子二十機づつを積載の上、投下、一番艦から七番艦までは被災者の救出、救護活動を実施、八番艦から十番艦までは五十四頭の魔獣掃討に当たれ。ズヌークにあっては、オンザ級航空母艦三番艦にて後方支援及び魔獣掃討戦に当たれ。」

 俺の指示にズヌーク、セディナラ、カノンが「御意!」と声を揃え、一斉に走り出す。

「ロデムス!」

 ロデムスが俺の前に立ち「うむ。」と返事する。

「セディナラとカノンを護ってやってくれ。」

 ロデムスが一つ頷く。

「うむ。承知したのじゃ。任されよ。」

 ロデムスが、軽い足取りでズヌーク達を追う。

 既に体長が二メートルまで大きくなっている。自分で空気中の幽子を取り込む(わざ)を覚えている証拠だ。

「カナデ、ホノルダを頼む。」

「あいよ。」

 蓮っ葉な言葉遣いだが、目がやる気で満ちている。

 俺はもう一人の分体を俺の横に作り出す。

「な!?」

 カナデが驚きの声を漏らすが、今はスルーだ。

「お前には、こっちの俺と一緒に、オンザ級航空母艦四番艦とトネリ級駆逐艦三番艦、アラネ級強襲揚陸艦十一番艦を率いてもらう。二十八頭の魔獣だ。殲滅してこい。」

「行って来るよ!!」

 カナデが走り出す。

 イチイハラ、分離して、カナデを頼む。

『わかってるよ!任せて!』

 俺の分体が、俺から切り離されて、イチイハラとして走り出す。

「ローデル!」

「はっ、ここに!」

 ローデルが俺の前に立つ。

 俺は、三人目と四人目の分体を作り出す。

「お前には、こっちの俺二人と共にコーデル都、デリノス都、そして、二つの男爵領の魔獣掃討総指揮に当たってもらう。ドラゴンスレイヤーだ、出来るな?」

 ローデルが息を大きく吸い込み、胸に右拳を当てる。

「光栄でございます!」

「よし。オンザ級航空母艦の一番艦、二番艦、五番艦、六番艦。トネリ級駆逐艦、四番艦と五番艦。アラネ級強襲揚陸艦十二番から十六番を率いて行け。」

「御意!」

 ローデルが頭を下げて、出て行こうとするが、それを止める。

「クノイダ!ルブブシュ!」

「はっ。」

「はいです。」

 二人が俺の(もと)へと走って来る。

「お前達には、それぞれオンザ級航空母艦五番艦と六番艦を与える。ローデルの指揮下に入れ。」

 二人が声を揃えて「はい。」と応える。

「アヌヤ!ヒャクヤ!」

「あいなんよ!」

「ハイなの!」

「お前達はトネリ級駆逐艦の四番艦と五番艦だ。竜騎士で暴れてこい!!」

 二人が目をキラキラさせて、喜び勇んで走り出す。

 アヌヤとヒャクヤを待っていたローデル達を追い抜き「行くんよ!」「遅れたら、メッ!なの!」と張りきっている。その言葉を受けて、ローデル達も遅れまいと走り出す。

 タナハラ、頼んだぞ。

『おう!任せろ!!』

 クシナハラ、頼むぞ。

『勿論。可愛い女の子を一人でも多く救ってみせるよ。』

 タナハラとクシナハラが、トガリの姿で走り出す。

「ヘルザース!」

 ヘルザースには通信機越しで指示を与える。

『はっ!』

「お前は、トネリ級駆逐艦一番艦と二番艦を率いて、自領に向かえ。」

 ヘルザース領の龍はどのように拡散するかわからない。だからこそ、機動性に富んだ竜騎士を使う。

「トネリ級駆逐艦にはオルラ、トンナの竜騎士、魔狩り二名をつける。二百四頭の龍を殲滅してこい!」

『御意!』

 俺はトンナを振り返る。

「トンナ、頼んだぞ。」

 トンナが潤んだ目で俺を見る。

「トガリ、頼むんじゃなくて、命令して。」

 トンナが俺の目線にまで屈む。

「あたしは、トガリに命令された方が、力が出るの。」

 その言葉を聞いて、俺は何故か優しい気持ちになる。

「よし。じゃあ、命令だ。トンナ、二百四頭の龍を残らず殲滅してこい!」

「うんっ!!」

 トンナが俺にキスをする。そして、トンナが立ち上がった時、その顔は戦士のものに変わっていた。

 俺は五人目の分体を作り出し、カナデラとトーヤに頼む。

 カナデラ、トーヤ、トンナを守ってくれ。

『任されて~。』

『トーヤ、守る、トーヤ、守る。』

 戦力が広範囲から集結してくる地域だ。不測の事態に備える必要がある。したがって、咄嗟に戦力を増強できるようにカナデラとトーヤに頼んだ。

 トンナが俺の分体と走り出す。

 俺はその後姿を見送りながら、覚悟を決める。

 イズモリ、あとは頼んだぞ。

 国体母艦のブリッジに作成した俺の分体をイズモリに明け渡す。

『ああ、任された。』

 イズモリには、ここで、王都の総指揮に当たってもらう。

 数万人規模の負傷者がいるはずだ。医者としての知識も豊富なイズモリは、ここ、王都に必要な人間だ。

 そして、俺は、竜騎士のコクピットにいる俺は、ヤンドーレン湾へと向かう。

 Gナンバーズの魔獣がいる海へ。

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