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トガリ  作者: 吉四六
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なんかとんでもない物を造ったような気がする

 ブックマークへのご登録、評価をしていただき、ありがとうございます。

 113話「でっきるっかな?さて、さて、ほほう~ん!」では大幅な修正を行っております。

 各貴族は、兵員召集の勅命を受けて、王都に集結しているが、王国の辺境に在を構えるヘルザース達は、まだ王都には到着していない。徒歩(かち)による進軍ではないので、かなりのハイペースとなっている筈だが、それでも、王都は遠い。

 王都手前の宿場町テオリザンに宿営している。

 所謂(いわゆる)、本陣宿と呼ばれる、貴族が常泊とする宿にヘルザース、ローデル、ズヌークはいる。

 家臣団も同じ本陣宿に宿泊しているが、兵士達は、一部の護衛を除いて、宿場町郊外で野営中だ。

 俺達はヘルザースの下へ瞬間移動で現れる。

「おお!光を齎す者よ!」

 大げさな態度で、俺を出迎えた後、俺の目の前に跪く。そのヘルザースへ手を伸ばし、立ち上がらせる。

「して、こちらは、影武者の分体の方でございますかな?」

 俺が、空中城塞都市造営のために分体を引き揚げたので、再び、影武者を立てるつもりで、ヘルザース達の所にやって来たと察しを付けているのだろうが、そうじゃない。

「ヘルザース、俺達の国を創った。どうだ、お前達も俺の国の人間になるか?」

 立ち上がったヘルザースに俺は問い掛けるが、ヘルザースは何のことかわからずにキョトンとした顔で、俺の後ろに立つトンナ達の顔を見回す。

 当然だ。分体を引き揚げる時もヘルザース達には事情を説明していない。俺は「ちょっと、分体を引き揚げるな。」と声を掛けただけだ。

 ヘルザースの視線を受けたトンナが口を開く。

「あたし達の国よ。」

 トンナがヘルザースに答えにならならない答えを告げる。

「まあ、度肝を抜かれることは間違いないだろうね。」

 オルラがヒントを与える。

「もう、ホントにぶったまげるんよ。」

「そうなの。異常なの。」

 アヌヤとヒャクヤは、いまだに驚きから抜け切れていない。

「はあ、それは勿論、光を齎す者が建国なさると言うのなら、その国の礎としてこの身を捧げる所存ですが…」

 俺はニコリと笑って頷く。

「よし、ローデルとズヌークも呼んで来てくれ。お前達は俺の国の官僚として働いてもらうからな。頼むぞ!」

「ぎ、御意。」

 力のない返事だったが、そりゃそうだろう。国を創ったから、そこで働け、と、いきなり言われて、ハイそうですかと言えるわけがない。ヘルザースは、よく御意と言えたもんだと逆に感心するよ。


 そして、その日、ハルディレン王国の王都はパニックに陥った。

 強い東風と共に巨大な影が、王都全域を覆い、昼を夜へと変えたからだ。

 この季節に吹かない筈の東風が吹き、巨大な物体が王都を覆う。

 全長五十四.六三キロメートル、全高三.七三キロメートル、舳先から船体中央部までの全副は一.四キロメートル、船体中央部から船尾までの全幅は八.一七キロメートルの巨大な浮遊物体。

 舳先部分はマッコウクジラの形状を模した巨大な浮遊物体だ。

 俺達は国体母艦と呼ぶ。

 それが俺の国だ。

 国には国境があるが、それは地図上の話だ。

 俺は領土を持たずに超巨大な浮遊物体を国と定めた。

 体その物を持った国。

 だから、国体だ。

 その最上面の甲板中央から後方、船尾にかけての広さは、単純計算で約二百二十三平方キロメートルで、この広さは現代日本の大阪市に匹敵する。

 その広大な甲板に、某アニメよろしく、都市を創ってある。

 天空の城塞都市だ。

 甲板後方、船尾付近には、艦橋のように突出した真白な建築物、国のシンボルとして築城した俺の城が(そび)えている。

 うん。吃驚してます。

 イデアの演算能力が、桁違いに高かったので、こんなに大きな物が出来ました。

 イデアのお陰で、スッゴイ、余裕で出来ました。

 やろうと思えば、もっと大きな物が出来たと思います。

 いや~、どうなんだろう?ここまで大きな物って必要なんだろうか?

 こんなに大きな物を創った上に、まだ、余裕があったもんだから、もう、カナデラが狂ったように色んな物を造りたがった。

『イヤイヤイヤイヤ、龍対策、龍対策だよ?』

 両舷には五百メートル級の駆逐艦が五隻づつと八百メートル級の航空母艦が三隻づつ係留してある。

 航空母艦に艦載されている戦闘機は、イデアの言うところのFナンバーだ。

 そのFナンバーを八咫烏と名付け、複製しまくった。その結果、航空母艦一隻の艦載機数は百六十機と桁違いだ。

 俺はカナデラに聞きたい。龍対策にこんなに必要か?

 大体、魔獣を管理しているイデアがいるんだから、滅多なことは起きんだろうに。

『それは、どうかな?』

 イズモリ?

『龍は常に高山に居る。セクションに戻っていないことを考えるとイデアの指揮下にいるとは、ちょっと考えにくいな。』

 龍は自動で人間を襲うように設定されてるってことか?

『恐らくな。定期的に人口を減らしてるんだろう。』

『ほら~。』

 要るな。龍対策。しっかりしろよ、イデアの奴。

 で、そのイデアが、供出したマイクロマシンは、ドラゴニウムと同じ組成で結合する専用のマイクロマシンだ。つまり、ドラゴンを狩ることなくドラゴニウムが手に入ったことになる。

 ドラゴニウム生成マイクロマシンは十分な強度と靭性、そして耐久性能を有していたが、マイクロマシン自体の数が足りなかったので、俺のマイクロマシン。大陸の北半分を埋め尽くしていたマイクロマシンの八割以上をドラゴニウム生成用マイクロマシンへと改良し、国体母艦建造のために費やした。

 ドラゴニウムを国体母艦の装甲として使用するにあたって重要だったのは、浮かすということだった。

 金属としてのドラゴニウムはマイクロマシンで結合しているため、ドラゴニウム生成時に霊子を通すように調整する。そして、質量方向を調節する回路、質量方向返還回路と霊子回路を組み合わせて、上昇する命令を与えた霊子を通す。

 すると、驚くほど簡単にドラゴニウムという金属その物が浮かんだ。

 莫大な量の霊子回路とドラゴニウムを使って、この国体母艦は完成したが、その代わりに俺の使用してきたマイクロマシンのほとんどを失ったことになる。

 しかしイデアという管理者を配下に加えたことで、敵対勢力はいなくなったと考えられるので、通常の索敵用のレーダーで対処出来るだろう。

 まあ、こんな化け物が、突如、王都の上空に現れたんだから、そりゃあパニックにもなるわな。

『でっかくなっちゃったねぇ。』

 いや~、まさかこれ程とは、俺も思っていなかったよ。

 カナデラから空中城塞都市を建造するって聞いた時は、もっと小さいのを考えてたからな。

『でも、俺が本当に作りたかったのは、こんな大雑把なもんじゃないんだよね!』

『ああ。あれな…』

『あれも凄いよね。』

『いや、あれは良い物だと思うぞ!』

『良い物だとは思う。でも、女の子成分が足りないんだけど、何とかならない?』

 まあ、俺も好きな方だから良いんだけどさ。あれで王都に乗り込むのか?マジで。

『当たり前でしょう?俺にとっちゃ、あれが真打なんだから、あれのお披露目をしなくちゃあ、何のためにこの超巨大国体母艦を建造したのかわからないじゃないの!』

 たしかに、高空を飛ぶのに龍対策は必須だからな。

 さて、それじゃあ、いっちょう、かましますか。

 右舷から駆逐艦が離岸する。

 気密を保つためのエアロックが閉じられ、国体母艦の船体と駆逐艦の船体を接続していた通路が、圧縮空気の抜ける音と共に、国体母艦側に収納されていく。

 通路が収納されると、国体母艦船体外板が閉じられ、駆逐艦を支持していた巨大なフック状のアームが、複雑な工程を経て、国体母艦へと収納される。

 最後に駆逐艦左舷のアームが伸展して、国体母艦から離岸距離を取り、霊子エンジンが始動する。

 徐々に国体母艦から距離を取りながら、離岸用アームを収縮させる。

 国体母艦の意匠がマッコウクジラなら、駆逐艦は、さながらシャチだ。

 四十五センチ実弾砲、三連装主砲塔と三連装副砲塔が船体の上下に備えられており、その計十二門が主兵装だ。

 その前方、舳先の左右には量子誘導式ミサイルの射出口が四門備えられている。

 更に船体中央の両舷には、霊子式連射レールガンが三十四門、荷電粒子砲が二門、船尾の上下甲板には高出力レーザー砲が二門づつと、この世界ではありえない武装で覆われている。

 恐らく、この艦一隻で世界征服出来るんじゃないだろうか?と、いう兵装だ。

 この兵装を聞いて、俺は、この艦をトネリだな。と、思わずも呟いてしまった。それを耳聡く聞いていたズヌークが「わかりました。この一連の駆逐艦はトネリ級駆逐艦としましょう。」と(のたま)ったものだから、(たま)らない。結局、トネリ級で、なし崩し的に正式決定し、今では皆がこの駆逐艦のことをトネリ級と呼んでいる。

 姉さんに会うのが怖い今日この頃です。

 オルラがボソリと「怒るだろうね…」と呟いていたが、俺の所為(せい)じゃないからね?その辺のことをシッカリと伝えてよ?頼むよオルラ。

 ちなみに八百メートルの航空母艦の方はオンザ級で、航空母艦に積載されている強襲揚陸艦はアラネ級だ。

 いずれもオルラが「駆逐艦がトネリなら航空母艦は旦那だったオンザ、強襲揚陸艦は、その娘のアラネで良いじゃないか?」と言ったのが、命名の要因だ。

 頭が痛いよ。

 とにかく、このトネリ級駆逐艦が王都中心に聳える白亜の城、その前庭の広場上空に到着する。

 城壁に備えられた砲門は、全て此方を向いている。そりゃそうだわな。

 俺は音声拡散機能を備えたマイクロマシンを使って、城へと呼び掛ける。

「ハルディレン王国に告ぐ、我々は、戦闘を目的としていない。兵装を備えた艦で来訪した非礼は詫びる。現在、我々の国には、外交目的の艦が存在しないため、致し方ない処置だと理解していただきたい。」

 ハルディレン王国側の反応を窺うが、見事に動きがない。

「我々の目的はハルディレン王国との友好的な外交交渉である。出来れば交渉に応じて頂きたい。繰り返す。我々は戦闘行為を目的としてはいない。」

 城の最も高い塔、日本の城で言うところの天守閣に当たる塔だろう。その天守塔から数人の人影が現れる。

 俺達が留まる空中からは、二百メートルほどの距離がある。

 白いスーツのような衣服に襟の大きなコートのような羽織を着ている。武装どころか鎧も着ていない。恐らく、これだけの距離があれば、安全だろうと考えて、武装することもなく出て来たのだろう。木端微塵に出来るけど。

「私はハルディレン王国筆頭騎士!近衛第一軍団副団長のボードレス・セイク・エンジュ!こちらにおわすは、ハルディレン王国行政院第一席!行政大臣セルデラ・セイク・ホールト公爵!そのお隣が、ハルディレン王国行政院第四席!外政大臣クルセード・セリック・ドローズ侯爵!そちらが、あくまでも友好的交渉を望むのであれば、以上!三名の者が歓待いたす!!」

 良かった。取敢えず、話の通じる奴がいた。

 それにしても、流石は筆頭騎士。その声も肩書に恥じることのない大声だ。

「丁重なる名乗り、痛み入る。それでは、当方からも三名の者をそちらに使わす。故にこの艦が只今より稼働するが、決して、そなたらを害するものではない。しばし待たれよ。」

 俺は天守の三人に告げて、直ぐに連なる星々の印に指示を飛ばす。

「船首ハッチオープン。ヘルザース機、オルラ機、トガリ機、出動準備。」

 トネリ級駆逐艦の船首が縦に割れて、左右にハッチが開く。

 俺の座るコックピットに火が入る。

 メーターに青や緑の光が灯り、霊子エンジンの重い音が響き渡る。ジャイロの回転する、涼やかな音がハーモニーを奏で、アクチュエーターが金属の擦過音を立てる。

「ハンガーアウト。」

 俺の声に合わせて、ダンパーが大きく沈み、アクチュエーターからの音が止まる。

「バランサー正常、カメラチェック、正常、フィードバックシステム正常値、各可動部霊子モーター正常、連動正常、トガリ機オールグリーンを確認、出るぞ。」

『トガリ!大丈夫だと思うけど、気を付けてね!初めての試乗なんだから!』

 駆逐艦ブリッジのトンナだ。

「心配しなくても大丈夫だよ。危ない乗物にオルラ義母さんやヘルザースを乗せる訳ないだろ?」

『でも気を付けてね!』

「ああ、心配ない。」

 俺は、トンナにそう告げて、一歩目を踏み出す。

「モード、飛行形態、幽子収集ベント、霊子ジェット正常起動を確認。じゃあ、行って来るよ。」

 トネリ級駆逐艦の船首ハッチから、俺は軽い足取りで飛び下りる。

 脇の下と腰に内蔵されている霊子ジェットが機体を安定させながら、下降していく。

 俺に続いて、オルラとヘルザースが同じ様に下降する。

 ハルディレン城の前庭広場までの高さは三百四メートル、その高さをゆっくりと、立ったままの姿勢で降り立つ。

 それでも、俺の視線は高い。

 俺の眼前に広がる景色は十八メートル上から望む光景だ。

 三百六十度マルチスクリーンは繋目などの違和感なく、周りの風景を映し出してくれている。

 俺の体には、イデアと設計した、外骨格のようなマスタースレイブ基幹システムが装着されている。

 股間には自転車のサドルのようなシート、俺はそのシートに立った状態で座っているのだ。

「飛行モード解除。」

 俺の霊子回路に連動した、機器制御用の仮想パネルが空中に展開され、機体が安定して立っていることを教えてくれる。

『どうだい!成功だろ!俺はこいつを造りたかったんだよ!!』

 カナデラが興奮してる。

 かくいう俺だって興奮してる。

 俺は、今、全高十八メートルのロボットを操縦しているのだから。

『まったく、こんな非効率な物を作りたいだなんて、俺の理解の範疇を超えてるよ。』

 知ってるぞ、イズモリ。お前だって、結構、楽しみにしてただろ?

『…ま、男だからな。』

『そうだ!男なら誰だって巨大ロボには乗りたいぞ!!』

『そうだよ。俺だってワクワクしてたもん。』

『可愛い女の子以外で、こんなに興奮したのは初めてさ。』

『確かにね。僕だって、ちょっと楽しみだったよ。』

 お?珍しい、キミマロも会話に参加して来たな。

『まあね。シリアルキラーだって、こんなのには乗ってみたいさ。』

 それじゃあ、全員の期待に応えて、いっちょ、王国の度肝を抜いてやるか!

 全員が『応!』と応える。

 俺は二歩、三歩と足を踏み出す。

 それに応えて、機体が歩く。

 この機体は二本脚の直立歩行だ。

 その動きは人間の動きを正確に再現するが、機体内構造は人間とは大きく異なる。

 まず、骨と呼べる物が存在しない。

 機体を稼働させるアクチュエーターその物が骨格として機能するからだ。また、重い上半身を支えるために骨盤などの骨格が邪魔になった。

 足を接続する骨盤には、かなりの荷重がかかる。その骨盤中央に背骨を配置したのでは骨盤が上半身を支えきることが出来ないのだ。

 当然、荷重を抑えるために幽子除去用のマイクロマシンで質量を出来る限り減らしているが、それでも運動機能を維持するためには、ある程度の質量を必要とする。でなければ、走ること、踏ん張ることが出来なくなるからだ。幽子除去用のマイクロマシンは、主に、人間の重心バランスと同じになるように使用している。

 足から伸びるアクチュエーターはそのまま脇腹のアクチュエーターと接続、連動させて、スムーズな体幹運動機能を保持させながら、上半身を支える。

 つまり、人間の身体構造に例えると、足の筋肉が腰で一つに纏まりながら、腹筋と背筋となって胸部分を支える構造だ。霊子ジェネレーターを内蔵した胸部から、直接、足が生えていると言えば、わかりやすいかもしれない。

 胸部から太股までの間に、複数の関節とスライド機構を盛り込み、それらが、独立稼働することで、腹部の複雑な、捻る、傾ける、反らせる、といった動きを可能にさせた。

 胸も肩の位置を変えるために可動する。

 この胸の可動が重要だと、カナデラは力説していた。

 なんでも、現代日本でのコンピューターグラフィックスで見られる不自然なCGアニメの動きは、この肩の動きが不自然だからなんだそうだ。

 人間は、胸その物を動かして、肩を上下左右前後に動かすのに、現代社会のロボットには、そのような機構が取り入れられていないのが不自然なのだと言っていた。

 確かに言われてみれば、そうかも知れないが、言われたのが、こっちの世界に来てからなので、確認する術がない。

 でも、この機体の動きは確かに人間と同じ動きをしている。

 その構造は、人間からはかけ離れているにも関わらず、正確に俺の動きをトレースしていた。

 後ろを振り返ると、乗物嫌いのオルラもスムーズに歩いているのが確認できた。

 また、上手く出来ているのは、その操作性だ。今も、俺は後ろを振り返って、三百六十度モニターを見ていた訳だが、俺は、足を止めて振り返っているが、機体は振り返っていない。普通に歩き続けている。

 これは、顔の前に差し出されたように設置されているマウスピースを噛んでいないからだ。このマウスピースを噛んで顔を動かすと、機体が、俺の動きに連動して、機体も立ち止まって振り返る。

 でも、俺は移動し続けたいので、マウスピースを離した。

 マウスピースを噛まない限り、直前の行動を継続するシステムが組み込まれているのだ。

 つまり、連続する行動、歩くという、ルーチンワーク状態で行動する場合は、マウスピースを離せば、機体が勝手に進んでくれるのだ。

 ロボットの動きそのものは、人間の動きをトレースさせ、それ以外の内蔵された霊子機銃の発射や、他機、母艦との通信は、頭の中の霊子回路に連動した仮想操作パネルがやってくれる。

 でも、そうなると、霊子回路を持っている魔法使いにしか操作できないので、大量生産しても意味がない。

 霊子回路がない、もしくは、霊子回路を扱えないのない人間が搭乗する場合は、霊子の指向性を読み解く霊子感応ヘルメットを被ってもらって対応している。

『まあ、ここまで、霊子回路で制御できるんなら、わざわざ、機体に乗り込む必要はないと思うんだがな。』

 また、イズモリがぶち壊す。

 乗ってこその巨大ロボットだろ?

『乗り込んだらロボットとは言わないだろ?』

 いいんだよ。そんな細かい定義付けは!

『そうそう。乗り込んでこその巨大ロボットだよ。』

『そうだぞ!自分は安全なところで戦うなんて絶対にダメだ!』

『乗りたいから、乗る。それで良いじゃない。』

『良いねぇ。今度は女の子に乗ってみない?』

『僕もイズモリの意見はどうかと思うな。夢がないよ。』

 シリアルキラーにまで夢がないとか言われてやがる。冷酷人間イズモリだな。

『お前が言うな。』

『ちょっと、それって、僕に対して酷くない?』

 ああ、煩い。

 七人は、いや、六人か。六人は流石に煩い。

 頭の中で騒がしい六人をスルーして、俺はオルラとヘルザースの動きに注意を向ける。

 オルラとヘルザースには最低限の操作方法しかレクチャーしていない。と、いうのも、イデアから複製したAIプログラムが移植されているからだ。

 機体の操作自体は難しくないが、補助的機能として付加した。

 現代日本の車も自動ブレーキとか付いてたしね。

「オルラ義母さん、どうだい?問題なく動かせるかい?」

『ああ、何とか大丈夫そうだ。』

「ヘルザース、そっちはどうだ?」

『は、(それがし)の方も大丈夫でございます。』

「よし。じゃあ、城壁に飛び移るから、着地に注意して。イデアの言うとおりにすれば、大丈夫だから。」

 脇と腰部分に内蔵された霊子ジェットが唸りを上げる。

 オルラとヘルザースにチェック項目を確認させるためにも、俺は、ワザと口にする。

「飛行モードに移行、着地点強度確認スキャン、強度よし。着地点設定、背面関節固定を確認。」

 俺は膝を曲げて、大きく沈み込む。

「機体沈下位置設定完了、動作予測確認、移動予測線確認。ジャンプ。」

 機体が、伸び上がり、フワリと浮き上がりながら加速する。霊子ジェットが断続的に噴き上がり、機体を安定させたまま、目前の城壁の上へと到達する。

 着地予定地点が上昇モーメントの最高到達点となり、折り曲げていた膝を伸ばすと、そのまま城壁に着地する。四十五トンの重さを感じさせない動きだ。

 俺の右にオルラ、ヘルザースの順で着地する。

「おお、二人とも上手いじゃないか。」

「イデアのお陰だね。」

「は、お褒め頂き恐縮です。」

 三機の巨影が城壁に並び、同時に跪く。

 俺の機体は白と金を基調とし、オルラは黒と赤に銀のエングレービングが施されている。そしてヘルザースはベージュの一色だ。

 当初、機体のカラーリングは、全てベージュに統一していたのだが、ヒャクヤが「ピンクが良いの!ピンクじゃなきゃ嫌なの!」と駄々をこねたので、仕方なくピンクにしたら、トンナが「ピンクはあたしの色だよ。ヒャクヤは別の色にしな。」とマジでブチギレたので「うう。わかったの…」と陰で泣いていた。仕方がないので、ヒャクヤの機体は白と赤を基調にして、ピンク色のリボンを付けてやった。その結果、俺、オルラ、トンナ、アヌヤ、ヒャクヤの機体のカラーリングは特別仕様だ。

 俺は別にベージュでも良かったのだが「それは、なりませぬ。王たるもの、それに相応しい威厳と風格をお持ちのもの、それが周囲に伝わるようにせねばなりませぬ。」とローデルに叱られたので、白と金の成金趣味的なカラーリングに落ち着いた。俺としては、機体の色よりも王に祀り上げるのは勘弁して欲しい気持ちで一杯だ。

 基本設計としては、全て同じだが、ヒャクヤの機体だけが、やはり特別仕様だ。

「厳つくって嫌なの。」

 一応兵器なんだから、厳つくなるのはしょうがないと思うんだが、なんでコイツはこんなに我儘なんだろう?

 ヒャクヤの専用機は、出力と可動域の低下を犠牲にして、小型化、ゆるキャラ化を目指して造った。結果、出来上がった機体は、四頭身の縫いぐるみ的な機体となった。

 まあ、バランスの点で運動性に問題が残るが、小型化のお陰で出力低下は問題ない。で、色々犠牲にしたので、その点をカバーするためにチビヒャクヤの搭乗機も造ってやる。

 某アニメの某ニュータイプと同じように、機体の周りで小っちゃい武器が飛び回る奴だ。

 全長三メートルの単分子ブレードに翼を付けた戦闘機。その戦闘機、三十機が、重力に関係なく飛び回る風景は、まさしく某アニメの某ニュータイプ同士の最終決戦を彷彿とさせる。

 こうなってくると、アヌヤとトンナも黙ってはいない。

 アヌヤの機体には、固定兵装として両肩に二十センチ実弾砲、腹部に霊子ガトリングガン、頭部には荷電粒子砲。両手に霊子レールガンを持つというガン、ガン、ガンだ。

 トンナは格闘戦特化型で、全長二十三メートルの斧槍を装備、このトンナの要求が一番難しかった。

 格闘戦特化型は、出力をパワーとスピードのどちらに振り分けるかという問題と出力増大にかかる自重増加の問題があった。

 特にトンナのトップスピードは、アヌヤ達、獣人でも捉えきれない。つまり、トンナが本気で機体を操作した場合、トンナの動きと機体の動きにズレが生じるのだ。

 結果、コントロール系の量子テレポーテーションに遊びを作っていた制御プログラム、そのプログラムを外し、各アクチュエーターに霊子モーターを内蔵、アクチュエーターその物にも霊子金属を多用して、アクチュエーターの各部品その物が、トンナの筋肉一本、一本の動きに合わせて稼働する仕様となった。

 出力が二百十パーセント増加しながらも、自重は十四パーセントの増加に抑えられたので、成功と言えるだろう。

 しかし、かなりピーキーな機体に仕上がったので、トンナの操作能力が問われるところだ。

 そういったことがあって、俺の機体もトンナの機体と同様にカスタマイズ。かなりピーキーな機体になっている。

 俺は三百六十度マルチモニターの電源を落とし、コックピット前部のハッチを開ける。

 下腹部分から股間部にかけての位置がコックピットで、機体の胸部からぶら下がる形で設置してある。

 腹部の複雑な動きに干渉しないように、コックピットをぶら下げるユニットには、クレーン機構を盛り込んである。

 両脇腹の各関節が複雑な、捻りなどの動きをした場合、腹部中央の間隔を狭めたり、広げたりする。だから、コックピットをぶら下げているユニットには、両脇腹の動きに連動して、背面、もしくは、前面に逃げる機構が必要だった。そのためのクレーン機構だ。

 そのクレーン機構はコックピットに対する衝撃緩和の役にも立ってくれるが、それは上下の動きに対してだけだ。

 コックピット自体はジャイロ機能を持っているので、ある一定以上の衝撃を受けると、機体がどのようになっても水平を保つように設計してある。

 軽い衝撃を受けても水平を保つように設計しては、転倒時に受け身を取ることが出来ないからだ。

 それでも、衝撃緩和には、かなり気を使った。歩くだけで、乗り物酔いってのは勘弁して貰いたいからね。

 量子テレポーテーションはこの衝撃緩和でも大活躍だった。量子テレポーテーションは配線を必要としないため、機体本体とコクピットを完全に分離させることが出来るのだ。

 イズモリが、乗る必要性を感じないと言ったのは、このためだ。

 駆逐艦内にコックピットを設けて、そこで、機体を操作することも出来るのだから、確かにその通りなのだが、やっぱりロボットは乗ってこその物でしょう。

 五重の開閉機構を持ったコックピットハッチが開き、太陽の光を直接浴びる。

 股間部にコックピットがあるため、地面はすぐそこだ。

 俺達の前に、迎えの衛兵達が現れる。衛兵達が距離を取って、俺達を囲み、その兵達を割って、俺達の前に文官が一人現れる。

 俺達に向かって一礼した後「こちらでございます。」と案内をしてくれる。

 さて、本番だ。どう転ぶかは天のみぞ知るってことで。

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