でっきるっかな?
初めてイデアと出会った空間よりも、更に大きな空間だった。
イデアが、一歩、踏み入ると幾何学的な文様が、光を発しながら床を奔る。
明かりが灯る。
その空間には、想像もしていなかった物が存在した。
「こ、これは…」
『ほう。』
『ええ?』
『いいよ、いいじゃない。』
『おお!強そうじゃねえか!』
『へええ。』
俺達、全員が驚く。
光り輝く金属光沢、硬質ガラスに守られたキャノピー、空気抵抗を減らした流線型のボディには、可変式と思われる主翼が、四枚、取り付けられている。
「スゲエな…」
言葉が零れる。
『生体兵器しか見てなかったからな、この展開は予想外だ。』
この空間には霊子ジェットを備えた戦闘機が、数十機、格納されていた。
「Fナンバー二十二型対空兵器です。」
イデアが、顔を横に振る。
「あちらの壁に掛けられているのが、Cナンバー四〇三型対人兵器です。」
イデアの視線の先、その壁には、ハンガーに固定された金属鎧がズラリと並んでいた。
「ただの鎧…じゃねえな。」
「はい。パワーアシスト機能を備えた個人兵装です。」
スゲエ、着てみたい。
「俺の着られるサイズは?」
「ございません。国際条約で、十八歳未満の少年兵は禁止されております。」
それは昔の話でしょ!戦争したい訳じゃないけど、着てみたいのっ!男なんだから!
「何故だ!何故!俺の着られるパワードスーツがないんだ!!」
イデアに、八つ当たりだとわかっちゃいるが、わかっちゃいるが!!
「設計変更をなさいますか?既存のCナンバーにマスタースレイブユニットを組み込めば、マスターにも着用可能となりますが?」
何その夢設定!マスタースレイブユニット!スゲエよ!欲しいよ!
それから、小一時間ほど、イデアとのやり取りが続き、空中城塞都市の造営が決まった。
俺は再び、本屋に戻る。
「トガリ!どこに行ってたの?探したよ?」
『声を掛けられたけど、ちょっと、て、行き先は濁したんだよ。』
そうか、別にいいだろ?素直に答えても。
「ああ、ごめん。イデアの所に行ってた。」
俺の答えに、トンナが眉を顰めて、声を大きくする。
「ええ?一人で行かないって言ってたのにっ!」
「ああ、ちょっと、どうしても聞かなきゃいけないことができたから。それより、しばらく屋上に上がるから、屋上には、誰も上げないでくれるかな?」
トンナが眉を下げたまま「うん。それは良いけど…」と、歯切れが悪い。
俺は、本屋で待っていたセディナラ達に向向かって「悪いな、今日のところは、これで解散にしてくれ。」と言い残し、俺は屋上へと瞬間移動する。
屋上に出てからイチイハラが俺に声を掛けてくる。
『さっきのは、あんまり良くないんじゃない?』
何が?
『トンナちゃんに冷たかったよ?』
そうかな?
『そうだよ。トンナちゃん心配してたよ?』
じゃあ、お前がフォローしておいてくれよ。今は、空中城塞を、都市を創らないと。
『へえ。俺がフォローしといて良いの?』
良いだろ?
『良くないよ。トンナちゃんが好きなのはトガリなんだよ?俺がフォローしたら、トガリに嫌われたって思っちゃうよ。』
…そうか…それは拙いな。わかった。
俺は、再び、トンナ達の居る、二階の事務所に戻る。
トンナが泣いていた。
『ほら~。』
あちゃ~。
セディナラとカナデに慰められているトンナを見て、胸が痛む。
女の子座で、俯きながら、肩を震わせているトンナは、初心な女子中学生みたいだ。
俺は頭を掻きながらトンナに近付く。
「兄弟…」
困り顔のセディナラが俺の方を見る。
「ボス…」
少しばかり怒った顔のカナデが俺を見る。
「…トガリ…」
涙を流したトンナが俺を見る。
「ごめんよ。ちょっと、冷たかったな。急いで、国を創らないと子供奴隷がドンドン殺されちゃうと思って、焦ってたんだよ。」
俺の言葉にトンナが横に首を振る。
「ほらね。トンナ姐さん、兄弟がトンナ姐さんのことを嫌いになったりする筈がないでしょう?」
セディナラの優しい声と言葉に、トンナが小刻みに首を縦に振る。
「ボス、姐さんは、まだ、十八歳なんだ。優しくしてやっておくれよ。」
カナデの言葉に「ああ、悪かったよ。」と応えるが、ん?待てよ。俺は一〇歳だぞ?
『実質は四十五歳だろ?』
いや、カナデから見たら俺は一〇歳だろ?おかしいだろ、カナデの理屈は。
『男だから仕方がないな!』
タナハラの意見もわかるが、それにしたって、いや、そうだな。まあ、いいや。とにかく、トンナも屋上に連れて行こう。
「トンナ、一緒に屋上に来てくれ。」
俺はトンナに右手を差し出す。
「うん!」
相変わらず、良い顔で笑うなぁ。やっぱり、悪いことしちゃったな。反省だ。
トンナが俺の右手を握って、俺は二人で屋上へと瞬間移動する。
屋上にて、俺は結跏趺坐で座る。
「トンナ、俺は今から、イチイハラ達と話をしてくる。その間、無防備になるから、しっかりと守ってくれよ。」
「うん!!わかった!!」
命令じゃないけど、俺に頼みごとをされるとトンナの気分が高揚する。
やっぱ、トンナの下僕根性って半端ねえな。
俺は、目を閉じ、首を回して、力を抜く。
深い所から息を吐き出し、徐々に空気を吸い込んでいく、その間にも、俺は闇の中へと落ち込み、白い空間へと浮上する。
「ね?トンナちゃんのフォローは、俺がしなくて良かったろ?」
ああ、助かったよ。まさか、あれぐらいのことで泣いてるとは思わなかった。
「お前が、そっち方面でミスるとは、珍しいな。」
トンナにも言ったけど、焦ってるんだ。多分。
「ふーん、子供が犠牲になってるから?」
キミマロ。
「偽善だよ。人は自分の命のためなら、生きてる動物を殺すんだ。自分よりも弱い者を食い物にするのは当たり前だよ。」
違うぞ。キミマロ。
「何が違うのさ。」
お前は優しいから混同するんだ。
他の動物と人間を同一線上で考えちゃだめだ。俺が、自分の手が届く範囲の人間しか救えないのと同じで、俺は自分の手が届かない人間を救うことは出来ない。
俺は明らかに差別してるんだ。
自分の二人の子供、その一方しか救うことができないなら、俺は、三人諸共に死ぬことを選ぶ。でも、子供の一人が他人の子供なら躊躇はしない。
「生き残った子供が可哀想だ。」
そうだ。心に傷を負う。
でも、傷つかない生き方なんてない。生きていれば傷つくのは、当たり前なんだ。
その傷が、その子にとって深いか浅いかの違いなんだ。だから、生きることは辛いんだ。
助けられなかった傷を背負って、生きるんだ。でも、その辛さから、逃げるために死ぬのは間違ってる。
「…」
助けるんだ。
「…」
自分が救えなかった命に代えられるものはないけど、一人でもいい、救うんだ。
「そんなの…」
理屈さ。
自分の心の傷を覆うためのな。でも、それで良いんだ。それだけで、生きていけるんだ。
「でも、だからって、国中の子供達を救える訳がないじゃないか。」
今は、お前達が居る。俺一人なら、トンナも救えなかったし、アヌヤとヒャクヤも救えなかった。
でも、今はお前達が居る。何人救えるかは、わからない。でも、何人救えるか決まってもいない。だから、出来るだけ多くの子供を救いたい。
キミマロがソッポを向いて、黙り込む。
『さて、それじゃあ、始めよう。』
イズモリの言葉で、俺の国創りが始まった。
Aナンバーは、AI兵器。Bナンバーは、バイオロジカル兵器。Cナンバーは、コンバットスーツ。Dナンバーは、ディフェンシブ・バイオロジカル兵器。Eナンバーは、EMP兵器。Fナンバーは、ファイター(戦闘機)。Gナンバーは、ジェノサイド・バイオロジカル兵器として、開発されています。




