表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
トガリ  作者: 吉四六
107/147

アヌヤとヒャクヤはやっぱり斜め上を行っていた

 ガヤガヤと大勢の声がする。

 屋上の方からだ。

「何だ?」

 俺のマイクロマシンは、大勢の子供を捉えている。

「何だろうね?」

 オルラも訝しんでいる。子供の気配を捉えている筈だから、オルラも俺と同じで、何故、大勢の子供がこの建物の屋上にいるのかが、わからないのだ。

「ただいまなんよ!」

「ただいまなの!」

 アヌヤとヒャクヤが帰って来る。

 二人の姿と大勢の子供達、それだけで、俺は血の気が引いた。

「おかえり。どうしたの?外が随分騒がしいけど?」

 トンナが、二人に聞いてはいけないことを聞いた。俺は聞きたくない。何だか凄く悪い予感がする。

「うん。街で売られてた奴隷の子を買って来たんよ!」

「そうなの。善いことした後って、気持ち良いの!」

 あい。

 来ました。

 日用品を買いに行って、奴隷の子供達を買って来るって、どういうことよ?しかも何人いるんだ?二十三人もいるじゃねえか!

 子供の奴隷の相場は約四十万ダラネだぞ!九百二十万ダラネじゃねえか!何で、そんな金を持ってるんだよ!おかしいじゃねえか?!


 リビングが一気に小学校、いや、保育園と化した。

 しかも年小クラスだ。

 子供達がはしゃぎ回る真中、テーブルを囲んでいるのは、俺達魔狩りと筋者だ。学校の先生はどこにもいない。つまり、子供達の面倒を見る大人は一人もいないということだ。

 わかってるよ。整理したかったんだよ。頭の中を!

 オルラに言われて、アヌヤとヒャクヤは俺達の前で正座中だ。

「…可哀想だったんよ。」

「そうなの…檻に閉じ込められて、可哀想だったの…」

 二人とも口を窄めて、俯きながら、弁解してる。

「でもねえ。これだけの子供、どうやって面倒を見るんだい?ご飯だって食べさせてやらなきゃいけないし。」

 オルラの言葉を聞いて、アヌヤとヒャクヤがチラリと俺を見る。

「チビジャリなら何とか出来ると思って…」

「…そうなの。ロリコンマスターなら、いつも、ご飯をパ~と出してくれるから、大丈夫だと思ったの。」

 俺は二人の話を聞いて、思わず項垂れる。

「お前達、自分が育ててもらった時のことを思い出してみな?」

 トンナが、呆れたように話し出す。

「住む家があって、ご飯を食べさせてもらってただけかい?違うだろう?色々と面倒を掛けてきたろう?特に、お前達二人は、村全体で世話になったんだろう?だったら、子供を育てるってことが、どれだけ大変かぐらいわかるだろう?」

 珍しくトンナの言ってることがまともだ。どっちかと言うとそっちの方が吃驚だよ。

 トンナの説教に、二人はグウの音も出ないようで、俯いたまま、黙り込んでしまった。

 俺は顔を上げて、二人に問い掛ける。

「まさかとは思うが、この子供達、勝手に連れ出して来たんじゃないだろうな?」

 二人は顔を上げ、高速で横に首を振る。

「そんなことはしてないんよ!」

「そうなの!ちゃんと買って来たの!」

 俺は二人を睨みつけ「買って来た~?」と、脅すように話す。

「お前ら、子供奴隷の相場は一人四十万ぐらいだろ?全部で九百二十万はいるぞ?どこにそんな金があった?」

 俺の言葉に、アヌヤとヒャクヤの目が泳ぐ。

「正直に言いな。でないと、酷いよ?」

 トンナの半魔獣モードに、二人は若干チビリ気味だ。

「エダケエのツケにしてもらったんよ。」

「そうなの。この間、銭ゲバチビがエダケエのお金の話をしてたから、エダケエのツケにしてもらったの。」

「ハア?」

 カナデが素っ頓狂な声を上げる。てか、声が裏返ってる。

「う、ウチのツケ?ちょ、ちょっと待ちなよ!どうして、ウチのツケなんだい?おかしいじゃないか?!どうして、そういう話になるんだい?」

 二人が再び俯く。

「だって、あたしら、お金ないし…」

「ハア?」

 アヌヤの答えに、再び、カナデが素っ頓狂な声を上げる。

「それに、エダケエは悪いことばっかりしてたから、善いこともしないといけないと思ったの。」

「ハア?」

 ヒャクヤの言葉に三度目のカナデの‘ハア?’が炸裂する。

 子供達の姦しい声のせいで、自然と俺達の声のボリュームも上がる。

「ちょっと、ボス!そんなことってありなんですか?そんな理屈を通してもらっちゃ、あたしらは病院じゃなくて保育園を開設しなきゃならなくなりますよ?どうするんですか?このガキどもを?」

 必殺。無我の境地。

 …

 …

 無理だ。子供達の声が、俺の無我の境地に割り込んでくる。現実逃避できない。なんてこった。仕方がない。第二の必殺技を繰り出そう。

「よし。じゃあ保育園も、て、いうか、孤児院も開設しよう。」

 必殺。開き直り。

「なっ!」

 カナデが、今日何度目になるかわからない驚きの表情を浮かべる。

「えええ?」

 トンナも吃驚だ。俺も吃驚。

「やったんよ!チビジャリならわかってくれると思ったんよ!」

 いや、理解はしていない。

「そうなの!流石はロリータ好きマスターなの!」

 お前は、ちょっと、しっかり反省しろ。

「やれやれ。」

 オルラは肩を竦めて溜息を吐いている。

「ホントかよ?」

 セディナラも呆れ顔だ。

「…」

 カノンは言葉も出ないようだ。

「参ったな…」

 クノイダは何やら諦めている。

「さてさて、これは大変ですな。」

 ルブブシュはわかっているようなことを言いやがる。

 ハノダは我関せずを貫いてるようだし。

 ロデムスは…子供達に追い掛け回されてら…

 そうだよ。

 ここには、子供を扱うプロがいるじゃないか!

「ルブブシュ、お前、孤児院の院長をやれ。」

「…」

 突然の命令に、脳が反応し切れていないようだ。

「は?」

 ようやく、脳に到達したか。

「お前が孤児院の院長をやるんだよ!」

 もう一度、同じことを言ってやる。

「わ、私がですか?!」

「そうだよ!誘拐のプロフェッショナル!奴隷担当!お前以外に適任者はいない!!」

 俺の言葉に、その場にいる全員が、ルブブシュの方を見る。そして、全員が、同時に頷いた。

「そ、そんな、こんなに大勢の子供の面倒なんて…」

「大丈夫!お前には一番多くの部下をつけてやる!だから大丈夫!!」

「いや、でも、子供の面倒は見させてきましたけど、教育的なことは、あまりよく…」

「大丈夫!教育については、誰かが何とかする!」

「え?いや、ボス、もっと具体的なというか、建設的なことを…」

「大丈夫!何とかなる!」

 最後は睨みつけてた。すまん。何ともならない。

「はあ…」

 ルブブシュは諦めたのか、下を向いて黙り込んでしまった。

 可哀想だが、俺では何ともできない。頑張ってくれ。そうだな。ボーナスを付けよう!

「ルブブシュ、一人を一人前にしたら、その子供の稼ぎの三パーセントをお前に与えよう。どうだ?生涯、お前の懐には金が入って来るぞ?働かなくても入って来るぞ?ここに居る子供達が、将来、高級官僚にでもなってみろ、一生働かなくてもウハウハだぞ?それなら頑張れるだろう?」

 ルブブシュは、まだ顔を上げない。しかし、小さな声で、何かを呟いている。

「五パーセント…」

「うん?」

 ルブブシュの言葉に俺は耳をそばだてて、聞き返す。

「ボス、五パーセントなら喜んでやります!今の高級官僚の手取りは年収一千二百万ほど、五パーセントなら二十三人分の総額で一千三百八十万となって、こいつらの年収を上回ります!それなら、やり甲斐があります!」

 うん。全員が高級官僚になれるわけがないんだけどね。そうか。やってくれるか。

「よし!じゃあ頼んだ!」

 こうなってくると、極端に忙しくなる。

「セディナラ、起業関係はお前に任せる。すぐに動いてくれ。それと人材の選別だ。適材適所で頼む。」

 セディナラが頷く。

「製薬会社と病院、それに孤児院だな?」

「そうだ。」

 クノイダに視線を向ける。

「クノイダ、お前は原材料の仕入れだが、警察の幹部貴族とパイプがあるな。敵対組織の情報のリークと俺達が把握していないジャンキーのリストを手に入れろ。敵対組織が潰れたら、そこのジャンキーを俺達の顧客にするんだ。それと、こいつ。」

 俺は薬の入った小瓶をクノイダに押し出す。

「お前らが使った後で、残りを警察の幹部貴族に売り込め。」

「わかりました。」

 クノイダの視線に力が漲っている。

「カノン。」

「は、はい。」

「お前は病院の院長をやれ。臓器密売には、お前は関わるな。下の者を責任者にしろ。病院の人材選別はお前に任せる。不足する人材については、セディナラとカナデ、そして、ハノダに相談して埋めろ。最終的な決定は俺がする。」

 カノンが恭しく頭を下げる。

「わかりました。」

「カナデ。」

 俺の呼びかけにカナデが溜息交じりで返事する。

「あいよ。」

「お前は今日中に物件を見つけてこい。孤児院と病院を併設できる建物だ。それと、お前には、営業をやってもらう。」

「営業だって?」

 カナデが訝し気に俺の顔を見詰める。

「ああ。お前は傷が消えて、美人になった。真っ当な仕事の出来る風貌になったんだ。それを活かして、貴族に対する薬の営業をやってもらう。」

「そ、そうかい?まあ、ボスがそんなにあたしのことを買ってくれるんなら、やらないでもないよ。」

 ちょっと嬉しそうなカナデは素直に可愛い。

 俺がチラリとセディナラの方を見ると、セディナラが薄く笑って、眉毛を持ち上げる。

「ルブブシュ、お前は子供の世話する人間を揃えろ、仮設孤児院の場所は、ここの五階を使う。すぐに揃えろ。早急に揃えろ。今すぐに揃えろ。必要な人材は、教師、料理人、子供の世話をする人間だ。子供に対する虐待は腕一本、足一本を覚悟させろ。教育に対しては金に糸目をつけるな、将来の大事な人材だ。全員を高級官僚に仕立て上げるつもりでやれ。」

「わかりました。早速動きますです。はい。」

 ルブブシュは即座に立ち上がり、走り出そうとする。

「待て。」

 ルブブシュが腰を上げた状態で止まる。

「最後にお前達に言っておく、開設準備金は三十億を予定してる。販売する薬品は二種類。麻薬中毒治療薬と古傷修復薬だ。古傷修復薬の副次効果である、若返りについては公表しない。あくまで、噂として、貴族の間で流せ。病院の医者は数人でいい、極端な話、一人でも構わん、その代わりに出来そうな奴を構成員の中から十人は選出しろ。その中から俺が病院で働けるように教育を施す。カナデ、お前はカノンとセディナラとトリオで動け、トリオのトップはセディナラだ。」

 俺の言葉にカナデが立ち上がる。

「セディナラの風下に立てって?」

「そうだ、表立って動くんだ、犯罪とも少なからず関わる組織になる。責任を取って処罰される人間には、セディナラになってもらう。お前には残ってもらわないと困るんでな。それに、俺とセディナラは義兄弟の契りを結んだ。何かあった時はセディナラに全部引被ってもらうつもりだ。」

 俺がセディナラの方を見やると、セディナラが目を閉じたまま、しっかりと頷いた。それを確認して、カナデの方を見る。

 俺の真剣な眼差しを受けて、カナデがソファーに座り直す。

「ま、まあ、ボスがそう言うなら、セディナラの風下に立つのも悪くないけどね。」

 なんだ、オバサンが微妙に可愛くなってるじゃないか。

 オルラの目が、若干、怖いが、ここはスルーしておこう。

「よし、あと、質問のある奴はいるか?」

 全員が熱い視線を俺に向けるが、口を開く者はいない。

「よし。最後にこれを全員に渡しておく。」

 俺は、連なる星々と同じ、通信機能を持ったイヤリングを再構築する。使っている宝石はトパーズだ。

「必要なことはこれで通信しろ。使い方はハノダが知ってる。では、行け!キリキリ働け!」

 全員が声を揃えて、返事する。

 即座に立ち上がり、玄関へと足早に歩き出す。

 カナデとカノンはセディナラを中心に、既に相談しながら歩いている。

 ハノダがルブブシュとクノイダに通信の仕方を教えながら、歩いてる。

 全員、足の運びが軽い。

「アヌヤ!ヒャクヤ!子供達を、とにかく風呂に入れて、面倒を見とけ!トンナ!子供達の奴隷契約書があるだろう?それに目を通して、必要な手続きを確認してくれ!」

 俺は、子供達を避けながら五階へと移動する。五階を取敢えずの仮設孤児院にしなければならない。

 子供達を管理監督するための職員用の事務室、二十三人分の椅子と机、それにベッド。トイレも複数が必要だ。風呂は六階の風呂を使わせて、食事も六階だ。

 問題は園庭だが、塔屋の上を霊子バイクの駐車スペースにして、屋上を園庭にする必要があるな。

 俺は五階の一角に子供用の三段ベッドを作製する。三段ベッドでも八列だ。かなりのスペースを必要とした。

 職員用の事務所と寝泊まりできるベッドも場所を取る。

 ええい!仕方ない!四階も明け渡せ。

 俺は、三階部分に俺達、魔狩りメンバーが眠れる部屋を用意する。意匠もくそもない。ホテルと同じ様な部屋だ。応接セットと俺を除いた人数分のベッド、クローゼットにトイレと風呂を再構築して終わりだ。

 四階に上がって、全ての間取りを取っ払う。五階部分に作った子供達のベッドを此方に分解移動、職員の就寝スペースを間仕切り壁で区切って、大人用のベッドを作る。六階の風呂だけでは小さいだろうと、四階部分にも風呂とトイレを作る。

 再び五階に上がって、教室として使えるように壁面に黒板を構築、二十三人分の机と椅子を作製する。

 事務室は間仕切り壁で区画し、その部屋にも机と椅子を作製し、本棚を作る。

 こうなってくると、敵対勢力からの防衛云々は、もうどうでもイイ。五階から六階に通じる階段を造り、その階段を使って、六階を通って屋上に上がろうとしたが、六階は修羅場と化していた。

「ダメなの!石鹸を落とさないとダメなの!」

「こら!走るんじゃないんよ!ちゃんと服を脱ぐんよ!」

 アヌヤとヒャクヤが、全裸で子供達を追い掛け回し、トンナは子供の実がなったツリー状態だ。ロデムスは相変わらず、追い掛け回されている。唯一オルラだけが女の子達を惹きつけ、綾取りのような物で遊んでいた。

 人数が足りない…

 五人ほどが六階にいない。

 ゾッとして、俺は屋上に続く階段を駆け上がろうとして、振り返る。

 五階に通じる階段前に扉を構築、即座に鍵をかける。

 危なかった。

 三人ぐらいが脱走するところだった。

 急いで階段を上がって屋上に出る。

 思った通り、五人の内、三人は霊子バイクに夢中になって跨っている。それは良い。残りの二人は屋上の縁を覗き込んだり、歩いたりしてやがる!

 音速を超えないように、全力のダッシュ。

 体中のマイクロマシンが駆け巡り、俺は急速にゾーンに入る。瞬間移動で子供二人を同時に引っ掴み、一人を脇に抱えて、一人は襟首を掴んでぶら提げる。

 勘弁してくれ。魔獣を狩るより疲れるわ。

 俺は屋上の縁を高く再構築し直し、屋上を覆う天蓋のようにフェンスを構築した。

 霊子バイクに跨る子供達をすったもんだで、引き摺り下ろし、霊子バイクを分解保存、二つある塔屋の内、霊子バッテリーを設置している塔屋の方に鍵を設けて、その内部に階段を再構築、その塔屋の上を霊子バイクの駐車スペースにして、霊子バイクを再構築した。

 疲れる。

 抱えていた二人を放り出し、しっかりと叱っておく。

 今度、危ないことをしたら奴隷商人に引き渡すと脅したら、効果てきめんで、泣き出した。

 ヤバイ。トラウマを弄ったかもしれない。今後は別の叱り方をしようと心に誓う。

「嘘だよ~。そんなことしないよ~。」

 一応フォローをするが、どこまで慰めになったのやら…

「よ~し、これから皆で、おやつを食べよう!甘くて美味しいお菓子を作ってあげるから、下で、みんなで食べようか?」

 子供達の目が一気に輝き出す。

 大きな声で返事をして、俺の手を握ってくる。

 こういう時は良いんだよ。ホント子供って可愛いなぁ。

 一人を肩車にして、片手に二人ずつと手をつなぐ。非常に歩き難いが、仕方がない。

 六階に下りると、未だ惨状は続いていた。

 トンナは、両腕を広げて、足を前に突き出し、片足立ちになっている。

 両腕と突き出した片足に子供が鈴なりだ。背中にとりついた子供は、トンナをクライミング中で、トンナの頭の上にまで登った豪の者までいる。

「トガリ~臭い子がいる~。」

 トンナが、情けない声で、俺に呼び掛ける。きっと、何人かは、絶賛お漏らし中なんだろう。

 俺は子供の排泄物を分解消去して、周りを見回す。

 いた。

 部屋の隅でおしっこをしている奴がいた!ズボンもパンツも脱ぎ捨てて、下半身丸出しで、おしっこしてやがる。終わると、そのまま走り出す。

 風呂の途中で逃げ出した泡だらけの子供に、半裸の子供、全裸の奴まで走り回っていやがる。

 ついでにアヌヤとヒャクヤも全裸で走り回ってる。

「静かにしろ!!!」

 俺の怒鳴り声で、一斉に静かになる。全員が動きを止めて、俺の方を見る。

 注目を浴びた所で、俺は、右手に最終兵器を再構築する。

 右掌を上に向けて、お盆を掲げるようにした掌の上に、真っ白の皿を再構築し、その皿の上に、見た目だけでも甘そうなケーキを再構築する。

 全員の目が、そのケーキに釘付けだ。

 ついでに女性陣の目も釘付けだ。

 ケーキののった皿を左手に持ち替え、右手に小さなフォークを再構築する。そのフォークで、ケーキを小さく切り分け、そのまま大きく開いた口に放り込む。

 至福の表情で「ウマアアアア~。」と大声で言ってやる。

「ず、ズルいんよ!」

「そうなの!一人だけケーキを食べるなんてズルいの!ズルいん大魔王なの!!」

 お前らが引っかかってどうするんだよ。

 おバカ二人をスルーして、俺は子供達に話し掛ける。

「今から言うことを、ちゃんと守った子には、ケーキを上げよう。」

 わっ!と歓声が上がる。

「まずは、あそこのお姉ちゃんの言うことを聞いて、ちゃんとお風呂に入ること!」

 子供達が声を揃えて「はああい!」と返事する。

「お風呂から上がったら、一人ずつ、お兄ちゃんの所に来ること、そしたら、ケーキを一つずつ上げます!」

 大きな声で返事をした後、一斉にお風呂に殺到する。

 アヌヤとヒャクヤが「順番なんよ!」「さっきの泡をつけっぱなしの子からなの!」と叫んでる。

 俺は浴室に設置していたサウナと水風呂を分解し、新たな湯船とシャワーを設置してやる。

「ほら!お姉ちゃんの言うことを聞かないと、ケーキはもらえないよ!」

 トンナも解放されて、子供達をさばいている。

「トンナ!子供達が風呂から上がったら、その子の服を持たせて、裸のまま、こっちに来るように言ってくれ!」

 俺は大きめのテーブルを再構築して、風呂から上がって来る子供達を待ち受ける。

 一人目が「いちば~ん!」と言いながら、服を引き摺り、走って来る。

「よし。じゃあ、ジッとして。」

 俺は子供の両肩を押さえて、子供の体の中にマイクロマシンを侵入させる。子供の健康状態を調べるためだ。

 いた。

 腸内に寄生虫がいる。髪の毛の中にはシラミが多数、ダニもいる。

 体に付いた水分と腸内の寄生虫、シラミ、ダニを分解する。血中、臓器内の有害物質も同様に分解してやる。

「服を見せて。」

 服の汚れを全て分解し、ほつれや破れを全て修復してやる。

「よし。服を着ようか。」

 服は、自分で着させる。服を着ている間にケーキとフォークを再構築し、テーブルに用意してやる。

「オルラ義母さん、子供の食事の面倒を頼むよ。」

「わかったよ。」

 オルラが微笑みながら、ケーキをテーブルの奥へと持って行く。服を着終わった子供がケーキにつられて、テーブルの奥へと走って行く。

 次の子が、既にスタンバっているので、同じ手順で診察、治療をしてやる。

 これを二十三人か。大変だぞ。魔獣討伐より厄介だ。

 クソ!何だってこんなことになっちまったんだ!クソ!

「トンナ!こっちに来てくれ!オルラ義母さん一人じゃ無理だ!」

 トンナが返事しながら、こちらに向かって来る。そして、俺の前で立ち止まる。

「トガリって子供が好きなんだね?」

「え?」

「だって、凄くいい顔で笑ってるよ?」

 そう言って、トンナは俺の横をすり抜けて行った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ