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君に見せたいものがある  作者: 香坂皐月
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3

鰆は海魚です、念のため。

「…あれ、小田さん一人?」

 急に声をかけられて、椿は読んでいた本から慌てて顔を離した。

 カウンターの正前に男子生徒が不思議そうに立っている。去年は同じクラスだが、今年は同じ委員会だから顔馴染みの図書委員長、宮澤(とも)()だ。


「やだ、宮澤君忘れたの?人数の関係でカウンター当番一人でやる人がでるからって、くじ引いたでしょう?それに当たったのがあたしなんだよ」

 あ、そうだったと片手で頭を掻きながら苦笑する友哉に、つられるようにして椿は片手を口に軽く当て小さく笑った。


(あ…やっぱり、良いなぁ…)

 椿が浮かべた笑みに友哉は目を細め、ちょっと見とれてしまった自分を誤魔化すように軽く咳をした。

 椿は美人とか可愛いとか言われるタイプではないし、クラスで目立つ子ではない。けれども椿のいる場所の雰囲気を良くすると言うか、近くにいると周りの気持ちを和らげてしまうような、そういう空気感を持っていた。友哉は去年クラスメイトだったためか気付き、つい椿を気にしてしまっていた。


「何か委員会関係?お昼休憩に来るって珍しいよね」

「いや、違うよ。小田さんに用があったんだ。借りたがっていた本があったよね、今借りている奴が、うちの部にいたんだ」

「そうなんだ」

 頷く椿に頷き返しながら、友哉はカウンター内に入り、椿の隣に座った。

「知っているかな、2ー1の川野」

「えーと…分からない、かな」

 ふと椿の後ろにあった当番表を目にして、友哉は笑った。

「名前は覚えやすいかも。小田さんの名前、椿でしょ。それに似ているから」

「そうなんだ」

 椿は頷きながら思った。あれ、何だか似たようなやり取りを、つい最近した気がする、と。その時、荒々しく扉を明け閉める音がした。


「友哉ー、本返しに来てやったぞー」

 苦笑しながら友哉が立ち上がる。

「何を偉そうに、期限とっくに切れてんだよ、全く。小田さん、噂をすれば。本、返ってきたよ」

「あ…」

 本を返しに来たのは、数日前に美術室で会った鰆だった。

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