猫との休日
プニッ…プニッ…
『なぁーご…なぁーご…』
「んぅ。あと少し。寝かせてくれよ。」
カリカリカリッ…
『あぅーーーっ!!なぁーご…』
「…。」
枕元にある時計に目をやると、朝の9時…
「うぉぉっ!!」
大きなあくびをしながら、ベッドから出て、窓を開けると飼い猫のマックスは颯爽と飛び出していった。
「いいよな。猫は…。寝よ、寝よ…」
ベッドに潜り込んで数分後…
クゥーーーッ…クワァーーーーッ…
男・椎名圭介(28)彼女なし!は、眠りに堕ちていった…
「まった?」
いつもの紅白の梅が咲く木の下に行くと、女は居眠りでもしていたのか、トロンとした表情で男を見た…
「今日は、お天気がいいから少し早めにきたら、寝ちゃった…」
「でも、ほんといい天気だな…。もうすぐ桜も咲くから…」
女が、男に寄りかかる…
「お花見いけるといいな。」
「うん…。あの匂いや煩さは苦手だけどね。」
「俺も…。あんな糞不味いのよく飲めるよなぁ。」
風が運ぶ春の匂いに誘われて、男と女は歩く事にした…
休みだから、家族連れが目立つ…
噴水前の花壇には、春らしい花が咲いている。
「ねっ、あそこに座ろ」
男と女は、仲良くそのベンチに座って、のんびりと噴水を眺めたり、遠くから聞こえる子供の笑い声に耳を傾けてつつ、語り合っていた…
「ん?何時だ?」
枕元に手を伸ばすと…
「ん?時計…時計は?あれっ?」
なぜか、ベッドから落ちてる…
「俺か?もう…昼か…そろそろ、起きんと兄貴がくるな…」
「来てるがな…」
「…。」
眠い目を擦りつつ、ドアを見ると、いつものようなしかめっ面で俺を見てる…
「どうやって…」
チャリンッ…
「お袋が渡した…。にしても、なんもねー部屋だな。」
「…。」
ベッドに起き上がり、煙草に手を伸ばす…
ぷはぁ…
「煙草か。んなもん、よせよせ。」
「で、なに?」
窓から空を見上げながら、聞く。
「いや、なに。お袋が、お前なかなか帰ってこないから、心配しててな…」
「…。」
ガサツ…
「ん?猫か?飼ってんのか?」
「あぁ。」
「んなもん飼ってっから、いつまでも独身なんだよ…。早く、女作って、お袋に孫の顔でも見せてやれ。」
「…。」
ギッ…
隆俊が、テーブルに手をつき、立ち上がる。
「話は、それだけだ。荷物、持ってきたから。じゃ、な。」
バタンッ…
玄関の鍵の締まる音が聞こえた。
『んなぁー…』
外からマックスの鳴き声が聞こえた。
「はいはい。今日は、お早いお帰りで…」
マックスを部屋に入れ、朝昼兼用の食事を取る…
『んなぁご…んなぁご…』
「お前は、いいな。呑気で…」
カリカリを美味しそうに食べるマックスの背中を擦る…
マックスは、腹が満たされると、俺のベッドに軽やかに飛び乗り、丸くなって眠り始める。
「彼女なぁ。好きな女の子なんていないなぁ。」
『うにぁ…』
椎名圭介(28)寂しい男である…