第1話 さよならポンコッティン
大悪党誕生から20年。世の中は悪で溢れていた。
これはそんな世の中に生まれてしまった一人のヒーローの物語である。
時間設定を間違え焦げてしまったパンを賞味期限が過ぎた牛乳と共に美味しそうに食している。そう、彼は味覚がでたらめなのだ。
「にっっが!」
どうやら苦味は感じてるらしい。
……プルルルル
彼の携帯が鳴っている。これは政府から悪党の出現を知らせる通知である。世の中に悪党が多すぎるため、政府は50年ほど前からヒーローという職をもうけたのである。もちろん公務員だ。ヒーローは実力に応じて階級があり、下級、中級、上級、超級ヒーローに分けられ、功績をあげると階級が上がる。悪党は危険度に応じてFクラス~Sクラスに分けられ、階級、現場との距離ともに適切なヒーローに出動命令がくだされる。
彼はヒーローの一人であり、何を隠そう下級ヒーローだ。
【ゴミをポイ捨てするFクラスの悪党があなたの近所で現れました。すぐに注意せよ。】
またこのての通知だ。だが彼は嫌な顔ひとつしない。それどころか目が輝いている。そう、彼はいいやつなのだ。
さっそく自前のジャージに着替え始める。
…ドンッ!!
「いってー!」
どうやら小指をドアにぶつけてしまったらしい。
彼は外に出て、ポイ捨ての悪党を探した。目の前に「ポイポイ」と言いながらごみを捨て歩く男を見つけた。
「待て悪党。お前の悪もこれまでだ。ん?私が誰かって?私はみんなの笑顔を守るヒーロー。ポンコッティンだ!」
これは彼が悪党に言う決まり文句だ。
「なんだよっ、お前下級ヒーローじゃねーかよ!ぎゃははは。」
悪党が笑っている。それも当然、下級ヒーローはなろうと思えば誰でもなれるからだ。そんな下級ヒーローの身で恥ずかしげもなくこんなことを言うやつはあほだ。
「ふん、笑ってられるのも今のうちだ。喰らえ我が必殺、愛の鉄槌!」
説明しよう、愛の鉄槌とは主人公の愛を乗せたただのパンチである。
彼いわくこのパンチは1日に3回しか打てず、打つと3分間動けなくなるらしい。
彼の渾身の一撃は悪党の顔面をとらえた。そしてなんと、悪党の首が吹っ飛んだ。
「……え??」
彼は目が飛び出るほど驚いた。
「やべー、おれ…やっちゃった。」