王
死んでしまったエメラルドから以前のぬくもりを今は感じない
俺はエメラルドの亡骸をそっと置いた
目の前ではキュアがゴルドンと戦っていた
ゴルドン?
そうあいつはエメラルドを殺した
俺が弱かったから、みんなを守ると誓ったのに
あいつが憎い!!
(そうだよ、憎しみにかられながらあいつを殺せ)
誰かの声が心のなかで聞こえた気がした
「きゃあ!」
キュアがゴルドンの攻撃で飛ばされていた
「小娘、なかなか楽しめたがもうお前に飽きた、死ね」
ゴルドンは倒れたキュアにとどめの一撃を加えようとしていた
助けてりゅうのすけ
キュアは心の中で叫んで目を閉じた
「こいつ、いつの間に?」
キュアが目を開けるとそこにはゴルドンの渾身の一撃を片手で受け止めていたりゅうのすけが立っていた
「お前だけは許さない!」
その腕を持ったまま、りゅうのすけは剣でゴルドンの腕を切り落とした
「ぐぁーーー、よくも」
ゴルドンは得意のスピードで俺を翻弄しようとした、今までにないぐらいのすごい速さだった
「これじゃ、お前も分かるまい、死ねーー!」
ゴルドンは飛びかかってきた
「えっ?」
ゴルドンは驚いた、攻撃を仕掛けたはずのゴルドンの胸には剣が刺さっていた
「ぐはっ!」
ゴルドンは倒れた
倒れたゴルドンにりゅうのすけは静かに近寄ってきた
「た、助けてくれ…」
「お前だけは許さないと言っただろ?」
りゅうのすけは冷静そうに見えたがその剣には怒りを秘めていた
そのままゴルドンの首を切り落とした
ドラブレイドは俺の中にあるドラゴンの血に共鳴しているかの如く赤く光輝いて脈うっていた
この戦いは終わった
かけがえのない存在を失ったが…
しばらくしてレキが気が付いた
この悲惨な状況を見て全てを悟った
俺はエメラルドの亡骸を抱えて歩き出した
「りゅうのすけ!何処へ行くの?」
「エメラルドの好きだった、外の世界で供養してやろう」
「りゅうのすけ…」
そう言って、俺たちはゴルドンシティを後にした
ゴルドンシティから離れてしばらく歩くと綺麗な湖が見えた
そこへエメラルドを土葬した
俺たちは手を合わせた
ごめん、エメラルド
俺が弱かったばっかりに守ろうと誓ったのに守れなくて
こんな俺なんかの為に
エメラルドの墓の前で俺は謝った
キュアは泣いていた、感情を表に出さないレキも仲間の死に一筋の涙を絶えず流していた
そして、俺たちは無言のままドラゴン王国に帰った
「よくぞ戻ったぞ、で?ゴルドンは倒したのか?」
ドラゴン王が聞いた
「はい、倒しました」
俺は淡々と答えた
「そう言えばエメラルドの姿が見えんがどこじゃ?」
「死にました」
「な、なんじゃと?」
「エメラルドは死にました、俺なんかを庇ったばっかりに」
「き、貴様よくも、我が最愛の娘をー!!!」
ドラゴン王は俺目がけて襲ってきた
「マスター危ない!」「りゅうのすけ逃げて!」
二人は言った
俺は抵抗しなかった
罪の意識から俺はエメラルドの父に殺されることを望んだ
「貴様まさか、エメラルドの力を持ってるな?だからエメラルドが居なくても迷わずここにこれたんじゃな?」
「貴様なんかの為にエメラルドを失い、力を奪われた、わしの怒りをどこにぶつければいいんじゃー!!!」
怒り狂ったドラゴン王は俺に怒りをぶつけ続けた
キュアとレキの攻撃ではドラゴン王はびくともしていなかった
それでも俺は動かなかった
するとまたあの声が聞こえた
(何故抵抗しない?今のお前なら簡単に倒せるだろ?)
俺はエメラルドの父を倒すことなんて出来ない、このまま死を選ぶよ
(お前がやらないなら俺が殺るよ)
え?
「抵抗しないとはいい心がけじゃ、今からお前を殺す!あの世でエメラルドに詫びろ!」
ドラゴンが最後にりゅうのすけを噛み砕こうとした
ブシュ、血が吹き出た
そばで見ていたキュアとレキが叫んだ
「マスター!」「りゅうのすけー!」
落ちてきたのはりゅうのすけの砕けた体ではなくドラゴン王の頭であった
そして、りゅうのすけが降りてきた
手には血に染まったドラブレイドを持っていた
「りゅうのすけ?」「マスター?」
そこには黒い霧を纏ったりゅうのすけが立っていた
雰囲気から二人はいつものりゅうのすけと違った様に感じた
そして、言った
「ドラゴン王国の王は死んだ、次の王は俺がなる!文句のあるものは前に出よ!前の王と同じ目にあってもらおう!」
「うぉー!」
周りにいたドラゴン達は最初は戸惑ったが歓喜の声を上げ敬意を評していた
どうやら、ドラゴンの世界は弱肉強食
先代より強かったりゅうのすけを崇めた
ドラゴン王国の王と認めた様だった
(くっ、楽しみの時間が終わりかいつかお前を完璧に乗っ取って俺の体にしてやる)
そう誰かに言われた気がした
俺は目が覚めると自分に敬意を評しているドラゴン達がいてドラゴン王は首を切られ死んでいた
一体なにがあったんだ?
そして心の中で聞こえあの声は?
いつの間にか俺はドラゴン王国の王となっていた




