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俺が勇者?あいつが勇者?  作者: タツヤ
10/13

エメラルド

次の日

昨日のドリームランドでの出来事が嘘のようにゴルドンシティまでの道中、ゴルドンの手下達に何度か襲われていた

「この敵の量、もうゴルドンシティまで近いのか?」

「もうすぐです、りゅうのすけ様!」

「一気に駆け抜けろー」キュアが張り切って戦いの先陣をきっていた

「飛ばし過ぎてばてないで下さいね」レキがクールに言った

「あ、あれを見て!」キュアが言った

目の前には昔町だった面影だけがのこる荒れ果てた廃墟だらけの場所に着いた

「ここがゴルドンシティです」

俺たちは何とか敵をくぐり抜けゴルドンシティに着いたみたいだった

「うわぁ、汚ない場所だね、異臭もする」

「そうだな、さっさとゴルドンを倒してこんなところから出よう」

「エメラルド、ゴルドンの居場所は分かるかい?」

「すいません、りゅうのすけ様居場所までは分かりませんわ」


ガチャ


後ろから物音がした

「じゃあ、ゴルドンの手下達に聞くしかないな!」

次の瞬間、飛びかかってきた手下達を一蹴して息のある手下にゴルドンの居場所を聞いた

なんともろい結束力だろうか

剣をちらつかせるとすんなり教えてくれた


手下に聞いた場所に来ると廃墟と化した西洋風の建物にたどり着いた

俺たちは中に入った

すると、今まで見たことのない光景が目の前に広がった

そこには無残にもゴルドンにでもやられたのであろう人間の骨の山が積まれていた

「ひ、ひどい」キュアは唖然とした表情で言った

「まさに残虐そのものですわ」

俺たちは呆然とみていると奥から声がした

「客人達よ、玄関で立ち止まらず奥へお越しください」


「どうやら、もう向こう側には気づかれているみたいだな」

「どうします?りゅうのすけ様?」

「気づかれているのなら仕方ない、正面から行こう」

「りゅうのすけ、私怖い…」

キュアは震えていた

「大丈夫か?キュア?外で待ってるか?」

「ううん、大丈夫、私も戦うって誓ったもん、だから弱気な事言ってごめんね、行こうりゅうのすけ」

「キュア…」

まだキュアの震えはあったが大きく開いた瞳にはキュアの決心が見えた気がした


俺たちは奥へ進んだ、以外と長い廊下を歩いていた

一歩一歩歩いているうちに分かった

今回の相手は今までの敵とは違う

何か禍々しい気を感じた、足取りがいつの間にか重くなっていた

そして俺の体も気づかないうちに震えていた


長い廊下を歩いていると扉が見えてきた

きっとゴルドンがいる部屋だろう

「みんな、心の準備は大丈夫かい?」

振り向くとみんなの顔に曇りはなく頷いていた

きっと、彼女達の方が俺より強い覚悟を持ってここにいるんだろう

「じゃあ行こうか!」

俺の心は恐怖でいっぱいだった

だけど彼女達には負けていられないと精一杯の元気をみせて中に入った


「ようこそ、諸君、一応聞こう、何をしに来た?」

そこにはゴルドンと思われる、人型の野獣のような男が立っていた

「お前を倒す!!」

そう言うなり俺はゴルドンに飛びかかった

「う、ぐは」

次の瞬間、ゴルドンの攻撃で俺は吹っ飛ばされた

奴の攻撃が見えなかった

「その程度の実力で私に刃向かうとは面白い、一撃で楽にしてあげましょう」

ヒュン、ゴルドンの動きは速すぎて目にも止まらなかった

そして吹っ飛ばされた俺との距離を一瞬で詰めてきた

「りゅうのすけ、危ない!」

キュアがフォローをいれてゴルドンに蹴りをいれた

「ふふ、面白い、こうでなければ面白くありません」

キュアがゴルドンを追撃していた

「りゅうのすけ様大丈夫ですか?」

「おう、大丈夫だがゴルドンがここまで強いと思わなかった」

「パワーも速さもゴルド以上ですが、私のマスターを傷つけられて黙ってられない」

そうレキが静かにそして怒りを秘めたような声で言った後キュアに加勢しに行った

「一体どうすれば奴を倒せるんだ?」

「私に名案があります、りゅうのすけ様」

「どんな?」

「どんなに速い敵でも攻撃するときは分かります、先ほどもキュアの攻撃が当たったのもそうです。だから私が囮になるのでりゅうのすけ様がその瞬間にゴルドンに攻撃を与えてください」

「なるほど、分かった、でも囮は俺がやるよ、女の子に危ないことは任せられないからね」

「りゅうのすけ様…」

「それじゃ行くよ!」

俺はレキとキュアが戦っているところに加勢してゴルドンに攻撃を加えようとした

だが、奴は速く攻撃は容易くかわされていた

ヒュン、またゴルドンが一瞬で俺の間合いを詰めた

そして俺に拳を突き上げようとした時

「行きます!」

エメラルドの手刀でゴルドンを後ろから刺していた

つかさず攻撃を受けて止まっているゴルドンに俺はドラブレイドで切りつけた

「がはっ」

やっと攻撃が当たりゴルドンは怯んでいた

「これでとどめだ!」

俺は渾身の一撃でゴルドンを仕留めようとした、キュアもレキも追撃を加えた

「調子に乗るなよー!!!」

ゴルドンは怒った、その声だけで俺たちは飛ばされた

ゴルドンの体は人の姿からさらに怪物へと変わり一回り大きくそしてまた速くなった

「とどめを刺すのは私だー」

ゴルドンの速さは最早音が遅れて来るぐらいの速さだった

連撃をくらい、俺の意識は朦朧としていた

「そろそろ、終わりにしようかな」

「りゅうのすけ、逃げてー!」

キュアが叫んだ


ゴルドンがとどめの一撃を繰り出そうとしていた

もう終わった、俺は死を覚悟した


「りゅうのすけ様大丈夫ですか?」

あれ?エメラルドの声が聞こえた

俺は目を開けると目の前に笑顔のエメラルドが立っていた

さっきまでゴルドンが前にいたはず、なんでエメラルドが?

すると、エメラルドの口の端から一筋の血が流れた


え?エメラルド?


朦朧とした意識の中、俺の頭は疑問でいっぱいだった

しかし、目線を下に向けるとぼんやりした頭は一瞬で覚め、俺の表情は青ざめた

エメラルドの腹部からゴルドンの手が突き抜けていた

そのまま、ゴルドンは手を抜き取るとエメラルドは倒れた

「ちっ、仕留め損なったか」

「よくもエメラルドを!」

奮起したキュアがゴルドンに攻撃を加えていた

レキは気絶していた

俺は腹部から大量の血を流しているエメラルドを抱き抱えた

「エメラルド…なんで俺なんかを…」

「私はかごの中の鳥でした、王国の外の世界を知らず、知ろうともしませんでした…」

「しかし、前にも言いました通り私の人生はりゅうのすけ様と出会い変わりました」

「今まで王国の内側しかなかった私の世界を広げて下さいました」


「そして、命をかけて守りたい人、愛している人に巡り逢えました…」


「りゅうのすけ様、私の血を飲んで下さい」

「え?」

「キュアから聞いて知ってます、りゅうのすけ様はキュアのバンパイアの能力を得ていることを、だからドラゴンである私の血を飲めばりゅうのすけ様は最強の種族の力が手に入ります」

「エメラルド、いいのか?」

俺は涙が流れそうだが必死にこらえていた

「はい、りゅうのすけ様はいつか魔王を倒される方です。だから私の力を使って下さい」

そう、エメラルドが信じている俺が弱い訳にはいかない、涙も見せない

「分かった、じゃあ飲むぞ」

「はい、私の最後の奉公です」

かぷっ、俺の牙がエメラルドの綺麗な柔肌な首筋に噛みついた

「あっ、りゅうのすけ様…//」

俺の全身にエメラルドの熱い血が行き渡っているのを感じた

同時に今までにない力が溢れ、先ほど傷も回復していた

そして、血を飲んでいると今までにエメラルドと過ごした日々が脳裏に駆け巡っていた

「りゅうのすけ様、私なんかのために泣いているのですね、ありがとうございます」

気づけば俺は涙を流していた


「本当にありがとうございました、りゅうのすけ様」

「最後に最愛の人に見守られ、腕に抱かれていて幸せでした、本当にりゅうのすけを心の底からお慕いし愛しております…」


そう言うと抱き抱えていたエメラルドの体が冷たくなっていた

俺は顔を上げてエメラルドの顔を見た

エメラルドの顔は幸せそうに微笑んでいた

もうエメラルドに息はない


「あーーー」

俺は叫び、そして泣いた

俺だけの叫びがずっと屋敷中に木霊していた

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