青春の思い出
私は竹林 莉那。どこにでもいるような大学2年生。今は夏休みで、1週間前から実家に帰省している。テレビでは実家の近くで見つかった白骨死体のニュースばかりでつまらない。近くに遊びに行く場所もなく同じ話題を繰り返すニュースを眺めるのが実家での日課になっていた。なので、先ほどふと居間でテレビを見ているときに思い出した昔のことをお話ししようと思う。実家は田舎なのでやることがなく暇なのだ。他人の思い出話なんて面白くないと思うが、暇つぶし程度に聞いてもらいたい。
私には幼いころから高校2年の夏までをともに過ごした幼馴染がいた。高校2年の夏に引っ越ししてしまったため、今は一緒にいない。幼馴染の名前は瑠璃 という。黒い髪がサラサラで顔の整った可愛い女の子だった。瑠璃との出会いは覚えていないが、小学校に通っている頃には遊んでいた記憶があるので10年近い付き合いだったのだろう。外で遊ぶのが嫌いだった私はよく、瑠璃と家で人形を使って遊んでいた気がする。お互いのお気に入りの人形を持ち寄って、おままごとをしていた気がする。高学年になるにつれて人形遊びはやめて、近所の神社でコソコソうわさ話や恋の話をしていた思い出もある。
義務教育なので当たり前なのだが、小学校を卒業すると、そのまま流れるように中学校に通うようになった。中学時代から思い出も不確かなものではなく鮮明になってくる。私は毎日、瑠璃と学校に通って過ごしていた。奇跡的に学年が上がるたびに行われたクラス分けで別のクラスになることはなく、3年間同じクラスだった。同じクラスだったため、体育祭や修学旅行などの大きなイベントも瑠璃と一緒に楽しむことができた。瑠璃とずっと一緒にいたせいで他の人とあまり仲良くはしなかったけれど、楽しい3年間だったと思う。思えば、クラスの人が瑠璃のことをコソコソ話していたのでもしかしたら瑠璃は私と居なかったらモテていたのかもしれない。この頃の瑠璃はよく笑っていた。
高校受験を終えて、私と瑠璃は高校生になった。私より賢い瑠璃は推薦のような難しい制度を使って受験を早々に終えていたのだが、受験当日まで黙っていた。受験当日まで一緒に受験勉強をしてくれていた。瑠璃は難しい制度を使っていただけで同じ高校だった。隠さなくてもよかったのに。
高校でもクラスは別れることなく、一緒に楽しい学生生活を楽しんだ。友達は相変わらず瑠璃しかできなかったけど修学旅行など楽しかった思い出が残っている。ただ、高校に入ってから瑠璃はあまり笑わなくなった。
高校2年生の夏、今日と同じような暑い夏日だったのを覚えている。瑠璃とお別れの日。私は瑠璃を見送った。瑠璃とはもう一緒に居られないらしい。泣いて別れた。瑠璃と別れたのがショックで半年ほど入院した。大学受験に復帰が間にあったのは自分でも驚いている。
1週間前、実家に帰ると瑠璃に出会った。お別れした時より少しやつれている気がした。懐かしい友達との再会。瑠璃は泣いていた。私も泣いた。すぐにお別れの日がやってきた。私は瑠璃を笑顔で見送った。
これが私の聞いてもらいたかった昔の思い出話。
そろそろテレビにも飽きたので自分の部屋に戻ろうと思う。
私は部屋のドアを開けた。
夕日が差し込む部屋の中、私の机の上に満面の笑みを浮かべた瑠璃が座っていた。
今まで見た中で一番の笑顔かもしれない。
私は不気味に思いながら笑顔の瑠璃をゴミ袋に詰め込み出かける準備をした。
明日は燃えるゴミの日。
私のお気に入りの人形との別れの日。
読んでいただきありがとうございます。
莉那と瑠璃の輝かしく歪んだ青春の物語でした。