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第九話「ソルディアの様子」

 日が暮れるまでまだ時間がある。その間、俺とリーンはソルディアを回ることにした。

 まず薬屋に行った。マジックポーションを買うためだ。しかし俺達はすぐに店から出てきた。


「まさかまだ最大でも10ポイントしか回復するものが作れないとはな・・・。」


 フロンティアオンラインではゲームみたいにワンボタンで回復とはいかない。きちんとポーションを飲みきらなければいけないのだ。

 それが一本飲んで10しか回復しないんじゃ、役に立たない。自然回復に頼るのとほとんど変わらないからな。


「でも一生懸命作ってたの。」

「ああ、だからそのうちそれなりのポーションを作ってくれるだろサミーも。買ってやるのはそれからだな。」


 サミーとは薬屋の女主人だ。様子じゃ大学生くらいの眼鏡をかけた女だ。ポーションを作っても失敗続きでいい物がなかなかできないんだと。だがコツさえ掴めばすぐに上達するだろう。まあ勝手な期待だけどさ。

 クズポーションでも買い取ってやれればいいんだが、俺達は生産職じゃないから金に余裕があるわけじゃない。贅沢には使っていられないのだ。


 その後も武器屋、防具屋も回ったが、まだ皆新米でろくな物が作れないとのこと。仕方ないよな。まだ5日目だ。色々慣れてくるのにはやはり時間がかかるのだろう。しかし、ここに来て思う。この村は肝心の食糧を賄う人間にジードのような男がいるからいいものの、他の村は大丈夫なんだろうか、と。武器や防具はまだ魔物が弱いからそれほど必要ではないものの、食べ物の分野がこの調子では大変なことになるのではないか。もしかすると、7日分の食糧が切れた後、殆どの村が最初に飢饉に苦しむことになるのかもしれないな。今朝までの自分のことを考えれば全然人事じゃない。他の村を探すときは食糧を持てるだけ持っていきたいところだ。最初の村がジードの村でよかった。

 しかしこの村にも、不安がないわけじゃない。この村は全体的に緩んでいる。ジードとセラ、ひたすら森と村を行き来する木こり、建築物を忙しく建てている数人の大工達は自分の仕事に張り切っているようだが、それ以外の連中はどこか気が抜けている。先ほどの店の連中もそうだが、特に戦闘職でありながらレベル上げもせずに突っ立って二人でくっちゃべってる門番の二人のような連中が、村中に散見される。なんでこいつらこんなに呑気なんだろう。危機感ってもんがないのか。

 いや、それがゲームなのかもしれないとも思う。ゲームは所詮遊びだ。遊びだから、どういう方法で遊んでもよいのだ。効率プレイ、結構。楽しくパーティープレイ、結構。ダラダラとチャット、結構。しかし、今はログアウト不能、デスゲームかもしれないという緊急時だ。そんな中にあって、このような余裕はどこから来るのだろう。やはり、何もかも手に入ってしまったからなのか。ジードとセラが食を提供し、木こりや大工達が住居を提供する。何もしなくても何もかもが揃ってしまうのだ。これでは、やる気が、生まれないのも仕方が無いのか。

 7日目以降敵が強くなるとジードは言った。おそらく彼は、そのことを俺以外には話していないのだろう。だが、このまま俺とリーンがこの村を去ってしまうと、この村はそうしたモンスターに襲われた時、一たまりもないのではないだろうか。武器も防具も満足に作れない。戦える奴もいないではどうしようもない。

 まあ、所詮他人だ。だが、彼らにしっかりして貰わねば、ジード達も危ない。どうにかできないものか。

 

 村を回ってもまだ時間が余った。俺達は一度村の外へ出てリーンと狩りでもすることにした。

 門番にそう伝えた後、日が沈み始めるまで俺達は狩りを続けた。門番は来る時はいなかったリーンのことをしつこく聞いてきたが、適当にごまかした。あいつらは基本やる気がないので、リーンが美少女だから絡んできただけだったみたいだが。

 カードのLv上げも同時進行だ。短い時間だったが、効率よく狩れたおかげで俺とリーンはレベルが1ずつあがり、12と10になった。ファイアーボールはLv25、アーススキンはLv10、グロウアップを2枚Lv5まで上がった。そろそろ新しいスキルを取ってもいいかもしれないな。

 村に戻ると門番はいなかった。代わりにひょろりと背の伸びた男が一人、鶏を大量に連れて来ていた。


「らんまる、あれなに?」

「テイマーだろ」


近づくと俺達に気付いたようで、


「すまん。鶏が邪魔だろ?」

「いや、構わない」

「ねえそれ、どうするの?」


リーンが尋ねる。


「ああ、これは今日のみんなの晩飯さ、これからここで解体するんだ。あんまり見て気持ちのいいもんじゃないからあっちいってな」

「晩飯は期待していいのかな?」

「それはセラに訊いてくれ。俺は毎日鶏を解体して彼女達に納品するだけだからな。料理自体は彼女がやるんだ。」


それもそうか。だが活きの良い鶏肉が食えると思うと胸がはずむな。鶏肉は酒のつまみにもなるしな。楽しみだ。


「卵もあるのか?」

「もちろんさ。養鶏場があるんだ。ジードの畑の奥にな」

「なるほど。しかしテイマーなのに一人で大変だな」

「お前テイマーを舐めんなよ?この村のへっぽこどもに比べたら俺は万倍つえーからな。まあ比較対象がアレなだけなんだがよ。森はともかく平原のモンスター程度余裕よ。」

「いやすまん、テイマーは生産職のイメージだったんだ。」

「まあテイマー自体は戦闘と生産のハイブリットってとこだな。だがまあサブクラスもあるしな」


 そういうことか、てかこの村にもちゃんと戦える人物がちゃんといたんだな。


「なるほど。邪魔したな。そうだ、名前を名乗ってなかったな。俺はらんまる。こっちはリーン」

「俺はマシューだ。よろしくな」


 さすがにこれ以上会話を続けるのも邪魔になるので挨拶して、宿屋に向かう。あの調子じゃ、飯は1時間後くらいになるかな。しばらく部屋でフォーラム漁りでもしていよう。



らんまる

カード使い

ヒューマン

レベル12

MP370

ATK44

DEF82

SPD96

スキル:ブランクカード作成、カードコンボLv1

パッシブ:カード熟練度Lv9、封印(スキル&魔法)Lv10、封印モンスターLv1;上限3、鑑定Lv1、火耐性2

所持カード:ファイアボールLv25、ヘイストLv10、ヒールLv5、アイスアローLv5×3、アーススキンLv10、グロウアップLv5×2、グロウアップLv1×3


リーン

アーマードナイト

ゴブリン

レベル10

MP450

ATK100

DEF126

SPD75

スキル:バッシュLv2、アーススキンLv1

パッシブ:片手剣熟練度Lv7、シールドブロックLv5、指揮Lv8、カリスマLv5、毒耐性4

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