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第四話「ユニークモンスター」

 ダンジョンと違い、周囲の平原にはノンアクティブで温厚なモンスターしかいない。具体的には鶏、スライム、レッドスライム、アイスライム、スライムヒーラー、スタコラットだ。

 鶏とスライムは魔法もスキルを持っていないが、レッドスライムはファイアボール、アイスライムはアイスアロー、スライムヒーラーからはヒール、スタコラットからはヘイストのカードを作成ことができるのは昨日のうちに確認済みだ。今日はまず、ヘイストカードを使って平野を疾走しながらアイスライムを探し、アイスアローを11枚ほど封印する。それをアイスアロー1枚に食わせた所、Lv5まで一気に上がった。それを三度繰り返し、3枚のアイスアローLv5を手に入れる。よし、これでいいだろう。レベル差もあるファイアボールに比べて威力は大分低いが、先端が鋭利な氷の矢というものは、使い方次第で効果を発揮するはずだ。


 ところで、カードの使用にはMPを使用しない。カードの仕様のデメリットは、それぞれのカードにリチャージタイムがあることだけだ。しかし一度に大量のカードを使用するコンボには多量のMPを使用する。その代わりに強力な連続攻撃を叩きこめるというわけだ。まだ連続攻撃としての単純なコンボしか使えないが、「コンボ」のスキルツリーを勧めていけば、いずれパワーコンボやスピードコンボといったカードを強化してのコンボもできるらしい。楽しみだ。とにかく、MPには余裕出てきたのでここらでコンボを使えるようになっておけば、色々捗る。そう思って今回アイスアローを三枚も用意したわけだ。


 ダンジョンに戻る。ファイアーボールLv1を松明代わりに使う。少々不便だが、片手がふさがることもないので一長一短と言ったところだ。さて、次はモンスター封印だ。何を封印するか、目星は付けてあった。それはアーマードナイトゴブリン。こいつは発売前からダンジョンに時折出現すると発表されていたユニークモンスターって奴の一体らしい。昨日会った時、ブレイドに表示されるこいつのネームタグが他のゴブリン達と違ったことからユニークモンスターだとわかった。FOではモンスターも冒険者や他のモンスターを倒すとレベルアップする。そしてそのシステムの恩恵を強く受けるのがユニークモンスターって奴らしい。レベルが上がれば上がるほど、プレイヤーと同じようにユニークモンスターは強化されていくみたいだ。そんなユニークモンスターを従えればかなりの戦力として期待ができるだろう。


 アーマードナイトゴブリンはどうやらゴブリン達の指揮官のようなことをしているようで、周りに大量のゴブリンをひきつれている。そして奴は醜く崩れた顔を恥ずかしげもなく晒すゴブリンの中にあって、美しい少年のような容姿をしていた。残念ながらヘルム越しにしかその容姿は見れないから、はっきりとはわからないんだがな。しかしそれだけでなく、身なりもゴブリンにありながら高貴さを感じさせる銀色の甲冑を纏っていた、とても不思議なゴブリンだ。

 昨日戦ってる最中に奴の周りのゴブリンを処理していたらレベルが10になったので、いったん引き返してしまったのだが、結果的にはちょうどよかったな。こうして捕まえに行くことができる。ダンジョン自体はその先にも続いているようだったが、とにかくまずは奴だ。奴を封印し、配下に加える。


 ダンジョンの中でもサクサク敵を倒していく。低レベルのゴブリンは魔法もスキルも使えない奴ばかりなので、カードに封印するものがない。代わりにモンスター封印を試してみようかと思ったが、スキルや魔法のように簡単に封印できるわけではなく、弱らせた所にブランクカードを投げる必要があるので、めんどくさくて5体ほど試してやめた。モンスター封印のスキルレベル上げはかなりしんどそうだな。とにかく、モンスターの封印数は3体が上限みたいだが、封印した後カードからモンスターを解放してやればまた新たに捕獲できることがわかった。モンスターカードの合成はできなかったが、名前や装備や戦闘スタイル、スキルツリーなどをカスタマイズすることができることもわかった。レベルは一緒に戦うことで上がるらしい。また、レベルを上げることで進化やランクアップすることもできるとか。ただ死ぬとカードも消滅してしまうみたいだ。死ぬ前にカードに帰還させるか回復してやらないとな。


 5層に辿りつくと、アーマードナイトゴブリンと、取り巻きのゴブリンが待ち構えていた。奴のレベルは9、取り巻きは4層と同じ6だった。うーん、こいつら、鎧を着た美少年とそれにたかるちんぴらにしか見えないんだよなあ。実際の立場は逆なんだろうけどさ。とか思いつつ、4層への階段を背にして周りのゴブリンにファイアーボールをぶつけていく。脱出路だけは確保しとかないとな。

 ゴブリンどもめ、数だけ多くて邪魔だ。ファイアーボールは、そんな奴ら対策のためのような魔法だ。複数の火球が出てくれる強力な範囲魔法だからな。ま、それだけじゃなくて対象が一人なら一人に向かって飛んでいく優秀っぷりなんだが。そんなカードを最序盤からくれたファイアスライムには頭があがらない。

 ゴブリンどもは道中のそれと同じように丸焦げになってく。そういや肉が食いたいなあと思うんだけど、鶏にファイアーボールぶつければ食べれるんだろうか。それともちゃんと料理スキルとって調理しなきゃだめか。まあゴブリンの肉はおいしくなさそうだな。なんて色々考えながら、次から次へと現れるゴブリンをヘイストで距離を取りつつ炎で蹴散らしていく。だけど奴らは全然減らない。もしかして無限沸きなんだろうか。いつの間にかにレベルが上がって11になっていた。しかしアーマードナイトゴブリンは全然前に出てこない。後ろでそのヘルムの奥の美少年面を晒してアホゴブリンどもに指示を出し続けている。


 頭が良いんだな。こいつ、俺が突っ込んでくるのを待っていやがる。おびき寄せて袋叩きにするために。

 くふふ、ならば御望み通りに突っ込んでやるぜ。アーマードナイトゴブリンの手前に群がるゴブリンにファイアボールをぶつけて焼き殺し、俺もヘイストを掛け直して突っ込む。

 待ってましたとばかりに奴は剣を抜こうとする。させるか、勝負は一瞬だ。アイスアローを三枚、ブレイドに読み込ませ、コンボを発動させる。殺さないように顔は避けて両足と剣を持つ右腕を狙ってアイスアロー3発をぶち当てる。決まった。近距離から放たれる魔法の矢三本はそれぞれが鎧を貫通し、かなりのダメージを与えたようだ。ブレイドで確認すると奴の体力ゲージを一気に8割も削っていた。 痛みで奴はうずくまろうとしたようだが、氷の矢が刺さっていてそれはできない。

 俺はブランクカードを投げる。そして


「モンスター封印!」


と叫ぶと奴はカードに吸い込まれた。それはあっさりと。とにかく、これにて封印完了だ。

 ひたすら沸いてきたゴブリンは、指導者であるアーマードナイトゴブリンがいなくなると一目散に逃げ出した。やっぱり奴を倒さない限り無限沸きする仕様だったのかもなー。とにかく、俺はアーマードナイトゴブリンの捕獲に成功した。やったぜ。


 辺りにゴブリン達がいないことを確認して召喚してみる。ヘルムを外してみるとアーマードナイトゴブリンは中学生くらいの美少年だった。背は160cm程で俺のキャラより少し小さいくらい。肌は白くすらりとした鼻、柔らかそうな口元、そしてマリンブルー色の瞳がキラキラとしていて美しい。こいつ、本当にゴブリンなのだろうか。耳は尖ってるしエルフか何かにしか見えない。ゴブリンはもっと緑色で血色も悪いはずなのだ。しかしブレイドに表示された種族名がゴブリンである以上、ゴブリンなのだろう。

 気になったのはリーンもブレイドを付けていたこと。この世界でブレイドは一体どんな扱いなんだろう。

 

 って、あれ。よく見るとブレイドのステータスに表示される性別が女になってる。マジかよ、嘘だろ。こいつ、美少女だったのか。アーマープレートに隠れて胸も見えないもんだから、すっかり男だと思ってた。美少年じゃなくて美少女ゲットしてたのかー。やったぜ。

 おっと、そんなことに動揺してる場合じゃなかった。そうだこいつの右腕と両足の氷の矢は消えているが怪我は直っていない。血が流れていて痛々しい。ヒールを掛けてやる。

 何度かヒールを掛けてやると、傷は完治したようで、元気も出てきたみたいだ。


「わたしはあなたに負けたの?」


 見た目よりも少し幼く、カワイイ声だ。少女は俺に尋ねる。


「そうだ。お前は俺に負けて、カードに一度封印された。だからこれからは俺に従ってもらうことになる。それより、なぜブレイドを持っているんだ。」

「わかったの。それでこのブレイドは、母さんの形見なの」

「母親というのは、ゴブリンか」

「当たり前でしょ、わたしもゴブリン族だもの。このブレイドで、私はアーマードナイトのクラスを得たのよ。あなたはゴブリン族ではないみたいだけど、なんなの。」


 ふむ、どうにもそうには見えないが、そうなのだろう。クラスを得ることができるのはブレイドの力だったのか。なるほどな。このブレイド、他にも色々な力が隠されていそうだ。一度調べてみる必要があるかもな、これは。


「俺はヒューマンだ。なるほどな、しかし、このダンジョンで見かけたゴブリン族はもっとアホ面で醜い連中ばかりだった。お前とは全く正反対だ。」

「みんながああなのは呪いのせいなの。私は呪いに打ち勝ったから、呪いの影響を受けてないだけ。」

「なに、呪いだと」

「そう、呪いなの。詳しくは知らないけど、神様がゴブリン族を愚かで醜くする呪いをかけたんだって。だから私達は地下でしか暮らせないの」

「ふむ・・・地上を追われて地下に住んだというわけか。まあいい、とりあえずこれからよろしく頼む」

「うん、よろしくね」


 先ほどまでは部下たちと俺の命を狙っていた奴が、今は従うつもりでいる。なんだか滑稽だな。まあいいや、とりあえず名前が必要だな。こいつはこれから一緒に戦っていく仲間になるわけで。


「そうだ、お前名前はあったのか」

「母は私をリーンと呼んでたの」

「そうか、じゃあ俺もリーンと呼ばせてもらおう」

「わかった。」


 ゴブ「リーン」か。安直だが、まあいいじゃないか。本人も呼ばれ慣れているみたいだしさ。さっきからなぜだかずっとニコニコしてる。

 理由を尋ねると、


「ここにはお話できる子いなかったから、嬉しいなって」


とのこと。ゴブリン族の呪いは個体によって強弱があるらしく、多くのゴブリンは会話もできないほどにおつむが悪いとか。リーンとリーンの母親は、呪いの影響が少なかったため、会話もできて毎日楽しかったのだと話した。ちなみに俺達はブレイドの自動翻訳の力によって互いの言葉がわからなくても互いの言葉を理解することができる。


「母親は、どこにいるんだ。」

「去年、死んでしまったの」

「・・・すまん」

「いいの。この神に呪われた一族にとって、死はやすらぎなんだって。ゴブリン族はみんな、死の救いを求めて生きているのよ。みんなこのつらく過酷な世界から、解放されたがっているの。」


 わたしはそんなことないんだけどね、と彼女は付け加える。彼女は美しく、賢い。俺が連れ出そうとしなくても、いずれ一人で外の世界に出たのかもしれない。彼女はそうしたことをしても十分に生きていけることを自分でも既にわかっているのだろうと思う。しかし仲間はそうではないのだ。暗闇でいつまでもこそこそと生きていかなければならない。ゆえに死にたがっている。だから奴らは死に物狂いで戦いを挑んできたのか。ここに来るまで、ゴブリン達は皆、アクティブモンスターだったのだ。

 ふいに俺は彼らの悲しみを、背負った感じた気がした。俺は、躊躇なく彼らをバ火力のファイアボールで火あぶりにし、殺してきた。それはゲームだからだ。しかし今一度、それが正しかったのかを考えてみると、わからない。彼女の話を聞いていると、彼らは確かにここで、生きていたんだという感じがするのだ。そして俺は、そうした命を奪った。


「別に気にしなくていいんだよ?わたしは、あなたが私の仲間を殺したことを責めるつもりもなんてない。それどころか仲間たちと戦えと言われたら進んで戦うわ。」


 彼女は本当にそう思っているのか、俺を気遣ってくれたのか。それはわからないが、俺よりもはるかに幼いだろうに、強いな、と俺は思った。おセンチな俺はこの世界でもやっぱりアマちゃん気分が抜けない。これからは二人旅になるんだ。もっとしっかりしないとな。

 しかし固定の場所にいるようなNPCはいないという触れ込みだったが、代わりにベラベラ喋るユニークモンスターなんてものがいることに俺は正直驚いている。高性能AIって奴なのだろうか。わからないが。それにリーンはモンスターというよりは、もう普通に人と変わらない、ってか、人だ。見た目的には殆どエルフと一緒だし。ゴブリン族の呪いを受けていないリーンの姿がエルフのようであるならば、元のゴブリン族はエルフに近い種族だったのかもしれないな。


 気を取り直してリーンのスキルツリーを確認する。先ほど試しに捕まえたゴブリンはどいつも「ゴブリン」というスキルツリー一つしかなかったが、リーンには「アーマードナイト」「片手剣」「カリスマ」「ゴブリン」「土魔法」「闇魔法」「愛」の7つのスキルツリーが確認できた。さすがユニークモンスター。何これ、もしかして成長するとめっちゃ強くなるんじゃね?てか魔法のスキルツリー持ってるのになんで魔法使って来なかったんだろ。リーンもレベルが低かったからかな。てか愛ってなんだよ、愛って。

 しかしとりあえず、リーンを仲間に加えようと思った俺の目利きは正しかったようだ。スキルポイントは俺の好きなように振ることができるので「片手剣」からバッシュ、「土魔法」からアーススキンを習得させた。

 バッシュは強力な一撃を相手に与えるスキル、アーススキンは防御力を上げるスキンだ。俺も後でカードにしておこう。スキルレベル、魔法レベルもあるんだな。カードは合成によって強化されるが、他の職業は基本使いこむことによってスキルと魔法も強化されるのだ。まあカードに比べると物凄くめんどくさい。

 ただ、そのうちいつかメンテとかもあるんだろうし、その時までにこのアホ調整を利用させてもらわなきゃな。せっかく楽しんでるのにいきなり弱体化されたら怖いし。


らんまる

カード使い

ヒューマン

レベル11

MP300

ATK40

DEF48

SPD88

スキル:ブランクカード作成、カードコンボLv1

パッシブ:カード熟練度Lv9、封印(スキル&魔法)Lv10、封印モンスターLv1;上限3、鑑定Lv1

所持カード:ファイアボールLv20、ファイアボールLv1(松明代わり)、ヘイストLv10、ヒールLv5、アイスアローLv5×3、アーススキンLv3


リーン

アーマードナイト

ゴブリン

レベル9

MP420

ATK75

DEF110

SPD70

スキル:バッシュ、アーススキン

パッシブ:片手剣熟練度Lv6、シールドブロックLv5、指揮Lv8、カリスマLv5

リーンよりレベルの高いらんまるの能力が低いのは初期装備であることとカード使いであることが影響していますが、それ以外にも理由があります。

らんまるは基本的にはカード依存なので能力は参考程度だと思ってもらえれば。

指揮とカリスマは自分と味方に常にバフを与えます。ステータスや隠しステ諸々に影響します。

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