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第三話「二日目」

 目が覚めると、辺りはまだ暗かった。寝る前はまだ明るかったから、当然と言えば当然なのかもしれない。

 ゲームが現実の生活と同じリズムで進行することは、昨日のうちにヘルプに目を通してわかっていた。今日はフロンティア歴1年4月3日で、今は朝の4時らしい。ブレイドのカレンダーアプリと時計アプリがそう表示しているのだ。ゲーム開始日が4月2日だったので、それに合わせているみたいだ。


「腹減ったな」


 睡眠欲が満たされると今度は食欲が暴れだす。現実の世界で人間を振り回すわがままな欲望さん達は、どうやらゲームでも同じ調子のようだ。果たしてゲーム内での食事が実際には現実で腹が減ってる俺に影響があるのかないのかはわからないが、少なくとも今ゲームをしている俺の腹が満たされるのは昨日のうちに実証済みだ。

 初期アイテムとして持っていたパンと水、リンゴがまだ残っていたはずだ。どうやら餓死しないように7日分ほど初期アイテムとして持たせてくれているらしい。あ、FOでは何も飲まず食わずだと餓死するらしいよ。こわーい。

 とりあえず、パンと水を腰のポーチから取り出して食べる。

 当たり前のことかもしれないが、ブレイドにはアイテムボックスのような便利機能はなかった。アイテムは、どうやらこの腰に付けられたポーチにしまうしかないらしい。ウエストポーチのような小さいバックながら、中はゲームらしく少し広いふしぎ空間が広がっている。しかし重さという概念があるので筋力系のスキルを上げないキャラを使う場合は、そこそこにしか持てないだろう。

 今のところ筋力系スキルを上げるつもりはない。俺はカード使いだからな。装備を揃えてスキルカードや強化魔法を集めれば前衛もできるのかもしれないが、それができるのはまだまだ先になるだろう。


 リンゴはともかく、パンは硬くてお世辞にも美味しくないパンだったが、腹は膨れた。どうやらゲームでも味覚や嗅覚も再現してくれるらしいな。まあ超大作ゲームだし、これぐらいは当然なのかもな。だが、そんな約束された神ゲーであったはずのフロンティアオンラインで、初日からまさかこんなことになるとはな・・・。


 食事も睡眠もして落ち着いた。さて、これからどうするか。ログアウト方法を探すため人を探すか、それとも・・・。俺は原っぱに横になりながらスマホを弄るようにブレイドを操作してみる。何かあるかと期待して。


 そこで俺はゲーム内フォーラム、いわゆる掲示板ってやつを発見した。


 掲示板は雑談、攻略、実況、仲間募集などいくつかのトピックが存在した。フロンティアオンラインはいわゆる国際サーバーであり、様々な言葉を使うプレイヤーがこのゲームにはいる。よって掲示板内では公用語として英語の使用を推奨するとの注意書きが書いてある。ゲーム内の会話は円滑に会話が進むよう自動翻訳もしてくれるみたいだが、掲示板内ではミームのようなものに対応するために活字の自動翻訳はやめたらしい。そういった開発者インタビューを読んだ記憶がある。


 もちろん英語が使えない人用に、言語別にスレッドも建っている。ただ、これでは取得できる情報量に差は付くだろうな。そのうち掲示板で有用な情報を見つけてはそれを売る情報屋なんかも出てくるかもしれないな。まあ俺はたまに出てくるわからない単語やスラングもあるが、手動で翻訳するツールもあるので大体なんとかなりそうだ。ただとにかく人が多いから流れが速い。さすが総人口三億人と言われたゲームのVR版リメイクといったところか。


 雑談板を覗くと、多くのスレッドがログアウト不可能の話題でもちきりだった。どうやらログアウトできないのは俺だけじゃなかったらしい。やはりシステム的な欠陥があるのだろうか。そして中にはこれはゲーム内で死んだら現実でも死ぬことになるデスゲームだと喚く奴らもいる。何やらモンスターに殺された奴が、そのまま音信不通になってしまったのだとか。


 デスゲームなんてのは趣味の悪い冗談だと思うが、ログアウト不可能のこともあるし死ぬのはごめんだな。俺は結構迷信深い男だ。気を付けよう。てか死んだらどこにリスポーンするんだろ。それが分からないことの方がデスゲームとかいう現実味のない言葉より怖い。


 さて、とりあえずログアウト不可能なのは俺だけじゃないことがわかった。ということは、しばらく俺はゲームの世界で過ごさなけれはならないらしいな。まあそれ自体は嬉しいことでもあるんだよな。バイトはクビになるかもしれないけど、俺は既にこのゲームにかなり夢中になっている。少なくとも、この世界で生きてくれと言われたら二つ返事でOKしてしまいそうなくらいには。


「とりあえず昨日籠ってたダンジョンをクリアしたいな。それから村を探すか」


 ログアウトできない心配もあるけれど、それ以上にゲームで遊びたいというゲーマー心が疼いてしまっているのだ。昨日もログアウトできないなんて知るまではひたすら遊んでたしな。とにかく遊びが第一で、村探しは二番。それが俺の今の優先順位だった。


 さて、今俺はヘイストLv10、ヒールLv5、それとファイアボールLv20というカードを持っている。カードのレベルが異常だって?そりゃそうさ、他にも手に入れたカードを全て合成で餌してこいつらだけを強化したんだ。

 カード合成に強化コストが無かったのはおそらく調整ミスだろうな。サクサクレベルが上がるし、レベルが上がるとアホみたいに威力や効果がインフレしてしまった。半日も経たずにソロでダンジョンに乗りこんでレベリングできたのはこいつが理由だ。


 今のところデッキのように大量のカードを組むよりも手札に持ったほうが戦いやすいのでカードを3枚しか持っていないが、さすがにファイアボール1枚だけでは心もとない。ファイアーボールは、使用の度に5秒のリチャージタイムを必要とする。昨日はヘイストLv10を使うと移動速度が10%上がるので、それを利用してゴブリンどもとの距離を稼いだ。それでもダンジョンに巣食うゴブリンどもは弓を使ってくる奴が居て、避けそびれることがある。今のところそういう時はヒールで何とかなったんだが、念のためもう少しカードが欲しい所だな。ブランクカード自体はカード使いの基本能力「ブランクカード作成」でいくらでも手に入るので、今日もカード集めをしながらレベル上げと新カード確保だな。


 そうだ、Lv10になったんで、モンスターカード封印のスキルも取得したんだ。モンスターカードを手に入れれば、テイマーやサモナーのようにモンスターを使役することができる。同時に使役できるモンスターの数には制限があるらしいので、大物を狙っていきたいところだ。あと、ユーティリティのスキルツリーにある鑑定のスキルを取っておいた。このスキルが無いと敵のレベルもHPも分からないからな。

 とりあえず今は死にたくないし、俺も結構必死だ。

 

 そうそうこのゲームにHPはない。魔力によるオーラによって敵の攻撃を防ぎきれなくなったら、死が待っている。つまり、MPがHPの代わりもしてるってこと。だから良くある回復呪文のヒールも、肉体的な傷しか直してはくれない。

 能力値もMP、ATK、DEF、SPDと非常にすっきりした感じの能力しかない。シンプルイズベストって奴さ。まあスキルとそれを取り巻くスキルツリーがその分ごちゃごちゃしてるんだけど。



らんまる

レベル10

MP250


スキル:ブランクカード作成

パッシブ:カード熟練度Lv8、封印(スキル&魔法)Lv10、封印モンスターLv1;上限3、鑑定Lv1

所持カード:ファイアボールLv20、ヘイストLv10、ヒールLv5

開始した日付にそこまでの意味はありません。

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