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第二話「フロンティアオンライン」

 フロンティアオンライン(FrontierOnline)は「Frontier -welcome to the new world-」というMMORPGのVRMMO版として作られた作品で、天空に位置する人類未踏の大地「アークティア」を冒険するゲームだ。地球よりも広いと言われているアークティア、その全土を舞台に開拓民でもあるプレイヤーたちが町や都市、国なんかを作り上げていく。そうした自由度の高さがこのゲームの醍醐味であるが、なんでもできるということは、同時に戦争、強盗、恐喝、たかり、PK、売春、レイプ。そういった負の要素も取り込んでいるということだ。しかしそういう異常なまでの自由度の追求が「Frontier -welcome to the new world-」を世界的人気ゲームたらしめた。

 VRMMO版であるフロンティアオンラインでは、その自由度の高さを引き継ぎながら、VRであることを活かしたアクション要素やら、更にプレイヤーの興奮を呼び起こす楽しく魅力的なゲームライフを提供するためにいろいろ変化が加えられているらしい。世界中のFOファンボーイ、ファンガールはゲーム発売前から熱狂し、発売前予約だけで8000万本を記録する化け物ゲームっぷりを見せて世界中を震撼させた。最終的には一億どころか二億を越えるセールスになるとアナリストは予想しているとかいないとか。


 そんなフロンティアオンラインの世界では、最初のキャラメイキングの際に、種族とクラス(職業)を決める。種族もクラスも膨大な数があり、この二つを開始時に選ぶことでゲームのプレイスタイルが大きく左右されることになる。

 種族によって能力差は無いが、それぞれ得意なこと、不得意なことが設定されており、先に選ぶ種族によって選択できるクラスが変わる。またFOはそれぞれのプレイヤーがランダムな位置からのスタートだが、種族によってスタート地域自体が変わる。他種族とは序盤ではなかなか会うことができない。

 そしてクラスだ。クラスは戦闘職を選ぶか、生産職を選ぶか、両方中途半端になるかもしれないが欲張りに両立を目指すか。その選択次第でゲーム性自体が大きく変わってくる。

 前作「Frontier -welcome to the new world-」では、種族もクラスもおまけのようなもので、自由度の追及という名目の下、言葉通り一人のキャラクターで何でもと言っていいほどのことができた。しかしその結果、広すぎる自由度のために一体何をしていいかわからないというプレイヤーが続出した。ヘビーゲーマーには異常な程の興奮を掻き立ててくれる自由度が、ライトゲーマーにとっては結果として茨の道の様に見えてしまったのだ。よってFOでは「Frontier -welcome to the new world-」以上の自由度の追及をするとは言っても、どういうスタイルでアークティアの開拓に関わっていくかは、最初にプレイヤーに種族とクラスの選択をさせることによってある程度の方向付けさせてしまうことになった。開発側はこういった取捨選択を行わせることが、プレイヤーがフロンティアオンラインという世界の中に溶け込んでいくことには適したやり方だと考えたのだろう。確かにやることが多すぎると、逆に何もやりたくなくなるってことは多い。だから最初にある程度指標を作ってやるのは、悪くない考えのように思う。それに方向付けはされるけれども、クラスの選択によって与えられたスキルツリーを利用しての成長のさせ方次第では同じ種族、同じ職業でも全く違ったキャラクターになる。それがFOの魅力になっているのだろう。


 そんななかで、俺のキャラクター「らんまる」の種族はヒューマン、クラスにはカード使いを選んだ。ヒューマンは言わずもがな人間に一番近い種族だ。容姿も現実の自分を少し弄った程度にしておく。ゲーム内で鏡を見る度誰だコイツ、ってなるのは正直心臓に悪いという理由だ。ヒューマンは器用さと素早さにメリットがある種族で、選べるクラスの数は全種族一とも言われている。

 カード使いはカードに人やモンスターの使うスキルをブランクカードに封印し、そうして手に入れたスキルカードを強化し、ブレイドを通して使用することで戦う職業だ。カード使いが使用するカードはリチャージして何度も使うことができる。また、他の職業でも使える消費型のカードを生産することもできるらしい。ちなみに、単にカードを投げて戦うこともできるが、スキルを強化していない状態ではめちゃくちゃ弱かった。試したのはブランクカードなので、消費型のカードを生産して投げつければダメージも変わるのかもしれないが。


 カード使いには「カード」、「魔法カード」、「スキルカード」、「モンスターカード」、「コンボ」、「カード生産」、「ユーティリティ」の7つのスキルツリーが与えられている。剣士や魔法使いのような一般職「コモンクラス」ではなく、特殊職「ユニーククラス」であるからか、かなり細かく別れている。スキルポイントはレベルアップ毎にもらえる以外にもいくつかの方法があるみたいだが、有限であることには変わらないだろう。どれを上げていくかは、きちんと考えていかないといけない。一度取ったスキルは使いこんでいけばレベルが上がっていくらしいから、幅広くとっていくのもアリなのかもしれないな。

 ざっとスキルツリーを見ただけでもカード使いにはかなり強力なスキルが揃っている感じだが、その強さに反して人気はそんなにないだろうと俺は考えている。それは、カード使いがコモンクラスではなくユニーククラスであるからだ。


 フロンティアオンラインでコモンクラスを選ぶことには強力なメリットがある。メインクラスに加えて、サブクラスをコモンクラスの中から選ぶことができるからだ。それによって、かなり自由度の高いキャラを作ることを可能にしている。

 対してユニーククラスは一つしか選ぶことができない。カード使いを選べばそれだけだ。その分スキルの数はコモンクラスよりも多めになってはいるが、サブクラスが選べないというのは結構なデメリットだろう。特に発売日からスタートダッシュを決めたい人間には、地雷の可能性も強いユニーククラスは悪手だろう。それがさらにそれが保険としてのサブクラスも選べないともなれば敬遠する人間も多いだろうことは想像に難くない。

 また、ユニーククラスを選ぶにしても、かなりの種類がある中からカード使いを選ぶ人間がどれだけいるかな、ということもある。

 俺は博打気分でこのカード使いを選んだ。そしてどうやら賭けには勝ったらしい。


 だが、これからフロンティアオンラインで楽しい冒険が始まる。そう思っていた矢先に起きたのが、ログアウト不能事件だとはな。

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