酒盛り
「「「かんぱーいッ!!」」」
木製のジョッキがぶつかり合う小気味良い音がする。
周囲を見れば皆同じように武装した男女が盃を酌み交わしていた。
ここはギルド内に設けられた冒険者御用達の酒場、そこでユート達は酒盛りをしていた。
「一時はどうなるかと思ったが皆無事で何よりだな」
「本当ですよ。ユートさんの剣がいきなりポッキリ折れたのにはビックリしましたよ」
「今日ほど邪魔だ邪魔だと思ってたスペアの剣を持ってきてよかったぜ」
三人は先程の事を振り返りながら、ぐいぐいとエールを煽っていく。
あのときユートが元々使っていた剣がポッキリと折れ焦った三人だったが、何とかユートがスペアとして持ってきていた小剣を取り出すとこであの場は切り抜けたのだった。
「しかし今日はゴブリン45頭だったか?大分稼いだな」
「銀貨9枚ですからね、なかなかの稼ぎでした」
ニヤリと笑うマリアンににっこりと笑い返すレイ。
彼らは笑いが止まらないだろう。基本的に命懸けとなる冒険者への報酬は高めに設定されているが、駆け出し冒険者が相手にできるゴブリン等のような弱い魔物は報酬が低い。
一頭あたり銅貨20枚という報酬は数ある魔物の中で最も低い額だ。
それでも塵も積もれば山となる。今回三人が討伐した45頭という数字がかなり多い部類であり、報酬も銀貨9枚と町民の平均の月収銀貨20枚と大分高額だ。
「新しい魔術書をそろそろ買えそうだな」
「僕は新しい罠解除道具が欲しいですね。そろそろボロくなってましたし」
報酬の使い道をニコニコしながら考える二人、しかし一人だけ肩を落としている者がいた。ユートである。彼は今日の戦いでメインウェポンである長剣が折れてしまったため、剣を新調しなければならないのだ。
「いーよなーお前ら。俺なんか武器壊れたから新しく買わなきゃなー。完全に赤字だわ」
ユートの使っていた鋼鉄の剣は銀貨5枚、鍛造ではなく量産品のため価格は抑えられているが銀貨5枚は決して安くない。
サブである小剣を使えばいいじゃないかと思うかもしれないが、そんなものが通用するほど迷宮は甘くはないのだ。
ユートも駆け出しではあるものの冒険者だ。そのぐらいは理解している。だからこそ涙を呑んで武器買うのだが、諦められないものは仕方ないのだ。