第8話 契り
「ここは……」
目が覚めるといつもの宿のベッドではなく、薬草の匂いがする部屋にいた。
どうやら冒険者ギルドの医務室のベッドの上にいるようだ。
「気がついたかい?」
「あなたは?」
「あぁ、申し遅れたね。私はルーネというんだよろしく。何があったか思い出せるかい?」
「確かオーガと戦ってもう少しで殺されたようとした時にオーガが燃え尽きて……もしかしてあなたが?」
ルーネはにっこりと微笑んだ。
「記憶は大丈夫そうだね。大怪我だったからね。回復魔法をかけたんだけどなかなか効かなくて焦ったよ。」
「回復魔法をかけていただいたんですか。ありがとうございます。ところで仲間がいたんですがご存知でしょうか?」
「フランツくんとエミリアちゃんなら無事だよ。さっきまでここに居たんだけど討伐隊に参加すると言って私に任せて出て行ったよ。」
あれだけ派手に吹っ飛んだのにエミリアは怪我もなく無事だったのか、と驚いた。
「討伐隊?なぜそんなものを?」
「魔物があまりにも多くなっているので冒険者をかき集めて討伐していこうという話になったのさ。どうやらフランツくんはリュカくんを見捨てたなければならなかったのが相当悔しかったらしいね。経験を積んでくると意気込んで行ったよ。エミリアちゃんはフランツくんが無理をしなようにお目付役として着いていくように私が勧めたんだよ。」
「そうですか。ありがとうございます。あいつ無茶しやすい傾向にあるんで。」
「だろうね。そんな雰囲気をしているよ。」
ルーネは優しく微笑んだ。
一つ一つの所作が気品に溢れており、まるで貴族のような振る舞いだ。
「ところでルーネさんは討伐に参加しないのですか?」
「私まで参加すると町が手薄になるからね。防衛のためにこっちに残ったんだよ。それに君のことが気になったからね。」
「ありがとうございます。」
「気にしなくていいよ。それより気になったんだがどうやってオーガと渡り合ったんだい?Cランクの調査隊4人でも殺されたのにフランツくんたちに話を聞いたところ半日くらいは戦っていたよね?」
「時間に関してはよく覚えていないというか切羽詰まっていたのでよく分からないんですが、バインドとフラッシュを駆使して立ち回りました。」
「バインドとフラッシュだけで!?すごいね君。オーガが相手の場合下手な小細工より火力で圧さないと一撃をくらってしまうからね。私はフレアで燃やし尽くしたよ。」
「強力な魔法はまだ使えないんで……」
「それにしても大したものだよ。君のことが気に入った。どうだい?私の弟子にならないかい?」
「弟子ですか?見たところルーネ様は高名な冒険者に見えます。この町に長期滞在するとは思えませんし、僕はパーティを組んでいるので勝手なことは……」
「大丈夫だよ。しばらくこの町にいることになったから。どうだろう?」
「それならばこっちからお願いしたいくらいです。正直死ぬのが怖かったので強くなりたいです。」
「大丈夫。私が君を強力な魔法使いに育てて見せるさ。」
「よろしくお願いします。」
師弟の契りを交わしルーネは部屋を後にした。
リュカは疲労が溜まっていたため宿に帰って休養をとることにした。
後にフランツが帰って来た時にリュカはルーネがSランクだということを知らされ大いに驚かされるのであった。
この出会いによってリュカは飛躍的に実力をつけていくことになる。
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