第56話 迫り来る魔物達
視界を全て覆うような圧倒的な数の魔物が迫って来ていた。
対するこちらは三十人前後であり勝敗は見るからに明らかであった。
「厳しいな……うーん。よし」
「弓兵フランツとアルツさん、カイルを気にせずに矢を放て!」
「何を言ってるんですか!」
次々と敵を斬り捨てているフランツとアルツ、カイルではあったが次第に数の差に押され始めていた。
始めこそフランツ達の介入によって動揺していた魔物達は徐々に落ち着きを取り戻し勢いを取り戻していたのである。
リュカと騎士達はフランツとアルツの攻撃を掻い潜ってきた魔物を確実に処理していた。
しかし問題はフランツかアルツのどちらか一人が倒れただけでも一気に全滅してしまうのである。
そして次第に魔物に押し込まれて来ているのに皆が焦り始めた頃にリュカが驚くべき一言を発したのである。
「リュカ様気を確かに持ってください!そんな事をすれば三人に攻撃が当たってしまいます!確かに状況は絶望的ですがあと少し時間を稼げば本隊が撤退出来ます!」
「失礼な!ユーリ僕は正気だよ!フランツ達の動きをよく見てみなよ」
ユーリはあまりの危機的状況にリュカの気が触れてしまったのではないかと考えたのだがそうでもないようだった。
そして三人の動きを目を凝らして見ることにした。
「見ろって何を……え?」
アルツとフランツとカイルこの三人の動きは常軌を逸していた。
魔物とは言え全てが近接で攻撃してくる訳ではない。
中には矢や魔法を使って遠距離攻撃をしかけてくる魔物もいる。
そして三人は四方八方から飛んでくるその遠距離からの攻撃を剣で弾き返していた。
さらに驚くべきことに魔法にいたっては斬り裂いていた。
「あの三人は人間ですか?」
「それは僕も聞きたいよ。カイルがあんなに強くなっていたのも知らなかったし、矢はともかく魔法を剣で斬るってどうなっているんだよ」
二人は驚きを通り越してなかば呆れていた。
彼らは最早人外の域に達しているのである。
「まぁ、だから多分なんとかなるよ。あいつらなら、うん」
「私もそんな気がしてきました」
それは希望的観測に過ぎないかもしれないが全滅を間逃れるために少しでも敵の勢いを殺すためには、一斉に敵を殲滅する必要があった。
「よし、異論はないな!弓を構えろ!」
弓兵が弓を構えた。
「放て!」
フランツとアルツ、カイルの周りにいた魔物達は矢によって次々と倒れていった。
案の定三人は後ろから飛んでくる矢を躱し、躱しきれないものは剣ではたき落としていた。
「お前らバカか!俺たちを殺す気か!」
「大丈夫だっただろ!弓で一掃したから前に進め!まだ時間稼ぎには心もとないぞ!」
「分かったよ!やりゃあ良いんだろ!やりゃあ!」
三人が前に進み、なんとか踏ん張れたがここからが問題であった。
「リュカ様!矢が尽きそうです!」
「分かった!剣に持ち替えて乱戦に切り替えてくれあの三人より前には出なくて良い!」
「分かりました!」
騎士達は剣に持ち替えて三人の近くで戦闘を始めた。
「リュカ様。魔法を使いますか?温存している場合ではないと思いますが」
「いや、無理だ。威力が大きすぎる。皆を巻き込んでしまう」
リュカも魔法による攻撃を考えなかったワケではなかったが、比較的弱い魔法を打ったところでこの場にいる魔物にダメージを与えられるとは考えられなかった。
かといって大規模な魔法を使えば味方を巻き込んでしまうのである。
「とりあえずユーリ。君は騎士達が押し込まれそうになっている所で戦ってくれ。基本的には遊撃だ」
「ですがそれだとリュカ様の安全が確保できません!」
「大丈夫さ。僕もそれなりの死線を越えてきたんだ。近接もそれなりにサマになってきたし、魔法もあるから問題ないさ」
「それでも!」
「味方がやられちゃった方が危険さ」
「……分かりました」
ユーリは完全には納得していないようだったがリュカに促されて敵に向かって行った。
「問題はいつ撤退するかか……ここを抜けられれば後は広い道ばかりで一気になだれ込まれてしまう。本隊はもうたどり着けているのか?……おっと!」
前線を突き抜けて来たウルフを短槍で刺し殺した。
難なく倒したと思ったリュカであったが敵を倒したことで安堵してしまったため、後ろに回り込んでいたワーウルフに気づくのが一瞬遅れてしまった。
「あ、しまっ……」
ワーウルフ。
ウルフが人型に変異した魔物であり、ウルフ特有の素早さと変異したことにより圧倒的なパワーを手に入れた厄介な魔物である。
ワーウルフが繰り出す鋭い爪で切り裂かれて死亡する冒険者は後を絶たない。
そしてその鋭い爪がリュカに迫って来た。
「グガァァァアアア!!」
ガードも魔法も確実に間に合わない。
リュカは一瞬死を覚悟したが次の瞬間ワーウルフが断末魔をあげて燃え尽きた。
「やれやれ前々からずっと油断するなとあれほど言ってるのに……これだからリュカ君は心配になるんだ」
「お、お師匠様!」
燃え尽きて灰と化したワーウルフの後ろに呆れた顔をしてリュカの師ルーネ・ジークスが立っていた。
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