第53話 ご乱心
今回は相当更新が遅れました。申し訳ありません。色々あったんですけど言い訳になるので説明はしないでおきます。エタるとかはないのでどれだけ時間がかかっても完成させます。ですのでこれからもよろしくお願いします。
戦い始めてからどのくらいの時間が経ったのか最早誰にも分からなくなっていた。
リュカは迫り来る魔物達をフランツ隊の騎士達と次々に倒してはいたが、一向に数も減らずまた攻撃が止む気配もないため疲弊していた。
一騎当千に当たるシグルスも町の防衛に配置しているためこの場におらず
「フランツはまだか!そろそろ魔法無しじゃ厳しいな……シグルスを連れて来るべきだったか。フランツを見捨てて撤退するべきか……」
これ以上この場に留まるのは限界だと理解は出来るのだがフランツを見捨てて撤退するというのに抵抗を感じていた。
しかしリュカだけではなく騎士達の動きにもキレがなくり疲労が溜まってきているのをリュカは感じ取っていた。
リュカはすぐにでも決断しなければいけない焦りからパニックにおちいっていたのである。
そしてその焦りからか背後に魔物が迫って来ているのに気づけなかった。
「リュカ殿!危ない!」
騎士の一人がリュカに向かって大声を張り上げた。
「え?」
オークらしき魔物が棍棒を振り上げていた。
魔法を発動してシールドを展開するには時間が足りず武器を振るったところで間に合わないのが目に見えていたためリュカは諦めて目を閉じた。
しかし何故か痛みが一向にこないため恐る恐る目を開けるとオークの腹に剣が突き刺さっていた。
「危ねえところだった。待たせたな!」
「来るのが遅いよ!」
フランツの安全も確認でき、少し安堵したリュカは涙目になりながら怒った。
「悪い悪い。オーガの大群に囲まれてな。少し苦戦しちまったんだわ」
「色々言いたいこともあるけど文句は後で言わせてもらうとするよ。これ以上この場に留まるのは危険だからね。今は一刻も早く撤退しよう」
「よっしゃ分かった。お前ら引き上げるぞ!道は俺が切り開く!ついて来い!」
了解と騎士達も返事をし、先頭で次々と敵をなぎ払っていくフランツに続き本陣を目指した。
道中の様子は悲惨としか言い表す言葉がなかった。
魔物と騎士やクレンディアの兵士達の死体が大量に残されていた。
この様子から見るとどうやら右翼の部隊はフランツの部隊以外全滅したようであった。
生存者も見当たらなかった。
「もしかして本隊も……」
全軍が壊滅していてもおかしくない状況なだけに一人の騎士がぽつりとつぶやいた。
「大丈夫だ。ソウケンさんや化け物みてえな強さを誇る各部隊の隊長達がそう簡単にくたばるわけがねえ」
「そうだね。隊長達が全力で戦って死んだとしたら地面に穴の一つや二つ空いてるよ。隊長クラスの強さは僕たちより君達の方がよく分かっているだろう?」
「まあ俺ほどじゃないけどな!」
「そうですね。少し安心しました」
「隊長!副隊長!前方に人が居ます!」
前方を見ると人が一人立っていた。
その周りには魔物の死体が大量に転がっていた。
「ん?あれはアルツさんだ!おーい!」
フランツはアルツに向かって手を振り、それに気づいたアルツもこちらに向かって振り返してきた。
「おお!坊主達も無事じゃったか。道中はどんなものだったか分かるか?」
「残念ながら僕たち以外は……」
「そうか。どうやらこの辺が引きどきじゃの。とりあえず本隊に向かうぞ。フランツ坊は後方の警戒を頼む」
「了解した!」
アルツは本隊がいるであろう方向に向かって歩き始めた。
フランツ隊もアルツについて歩いた。
「本隊や他の隊の様子はどんな感じですか?」
「幸い本隊は被害を被っていない。右翼はお前さん達が居たからよく分かるじゃろう。左翼も右翼と似たようなもんじゃな。隊長達も戦死こそしていないが左翼を指揮していた二人はオーガ数十体に囲まれなんとか倒すも身体中の骨が折れ重症。右翼を指揮していたマルタに至っては大量の弓を全身に浴び意識不明の重体だ。」
「思っていた以上にまずい状況ですね。早く町まで引き上げないと全滅しそうですね」
「そうじゃの。……おっと危ない」
アルツは上から飛び降りてきたキメラを素早く魔剣を抜き斬りつけるとその傷口が燃え上がった。
キメラは地面に倒れこみしばらく暴れまわっていたが、やがて動かなくなった。
アルツが所持している魔剣は炎の魔力を帯びており斬りつけた対象を燃やすという効果があった。
「恐ろしい能力があるんですね魔剣って……」
「他にも魔力を込めると飛ばすことが出来るんじゃよ。使い勝手はいいのう。さてもうすぐ着くぞ」
それから少しして無事に死闘を繰り広げた森から脱出した。
そして本隊が陣を構えている場所に到着した。
どうやら森の入り口から少しした所で陣を構えていたようであった。
「放せ!私は森に向かわねばならないんだ!」
陣の奥から叫び声が聞こえてきた。
どうやら何かもめているようであった。
「今の声はソウケンじゃな。ちょっと様子を見に行こうか。お前達今までよく耐えた。しばらくすると撤退を始めるじゃろうから今のうちに休憩をしておいてくれ。フランツ坊とリュカ坊は悪いがわしについてきてくれ」
「分かりました」
「分かった」
陣の奥にあるテントに行くとクレスがソウケンを羽交い絞めにしているのが見えた。
「何事じゃ」
「アルツ!生きてたのか!それにフランツ君にリュカ君も!」
「ソウケンさん勝手に人を殺さないでもらいたいぜ。で?この騒ぎは一体なんなんだよ」
「そのことについてだが丁度良い私はフランツ君にこの騎士団の全権を渡す!」
ソウケンが突然言い出した事についてフランツはとっさに理解できなかったため少し固まった。
「はあ?何血迷ったこと言っているんだよ。ソウケンさんちょっと落ち着こうぜ」
ソウケンが言ったことの意味を理解すると、普段楽天家で出世欲が強いフランツであってもさすがにいきなり全権を渡すと言われたことで困惑していた。
「私が苛立ちから冷静さを失ったがために起きた事態だ。戦死した部下達のためにも今から森に戻って魔物共に一矢報いて散ってやる!ここが私の死に場所だ!」
「いやちょっと……」
リュカが少し落ち着かせようと口を挟もうとした瞬間ドンッ!という音ともにソウケンが吹っ飛んだ。
ソウケンを見ると白目を向いて気絶していた。
「少し黙っておけ」
アルツがソウケンを殴り飛ばしたのである。
「何が戦死した部下のためだ……己の失敗から逃げ出したいだけじゃろう。本当に死んだ部下のためを思うならたとえ無様でも生き残って仇をとるのが指揮官の義務だろうに」
「あの……」
リュカがおそるおそる声をかけた。
「クレス殿、フランツ、リュカみっともないところを見せてしまったな。このバカはしっかり躾けておくからとりあえず休養を取っておいてくれ」
普段あまり怒らないアルツが怒っているのを見て何も言えなかった三人はソウケンとアルツを残してそっとテントから出た。
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