誤解
停戦後、一通りの説明がなされ、団員達が再開を喜び合う声が聞こえる中でそこだけは異様な空気に包まれていた。
「で?なんでユミルがここにいる?」
ロキは平静を装っているが口調は怒ってる。
「ロキが捕まったって聞いたから・・」
気押されてユミルは小さくなっている。
「しばらく身を隠せって言っただろうが!」
ロキが怒鳴りつけるとユミルも黙ってはいない。せっかく助けに来たのに叱られてはたまらない。
「何よ!人の事を無理矢理縛って置いて行ったクセに!」
「お前ら、ちょっと落ち着けよ」
いつもの言い争いになる前にデュークが仲裁に入る。
「まぁ、たいした怪我人も出なかったし、良かったじゃないか」
タケルがそう言うとタケルを疑っていたデュークはバツの悪そうな顔をする。ユミルはギリッと歯を噛み締めてタケルの方を睨む。
「私達をどうするつもり?」
この同じような質問をされるのは何度目になるだろうか。
「どうするもなにも俺達にどうこう出来る数じゃない」
苦笑いしながらもタケルが答えた。
「私達を見逃してくれるってわけ?」
「まぁ、そういう事になるな」
「なら、さっさと出て行きましょう」
ユミルはロキとデュークの方を向き直した。
「俺もそう思うのだが・・」
デュークが喉にものが引っ掛かった言い方をしてロキの顔を見る。
「俺はこいつとカスライ領に向かう」
「はぁ?アリシアの犬に成り下がるつもり?闇夜の銀狼の名が泣いてるわよ!」
「俺も反対だ」
ユミルに続き、デュークも反対の立場をとる。
「考えてみろ。逃げたところで俺達は王女暗殺の大犯罪者だ。次に捕まれば確実に死刑台に直行だぜ?」
「ヘマさえしなければ大丈夫よ」
ユミルは不安を打ち消すような満面の笑みを作りロキを説得しようとする。
「そうだな、それに最悪はアリシアから抜け出して一から始めてもいい」
デュークも以前のように自由奔放に暮らしていきたいと思い、ユミルに合わせるように同意する。
「・・闇夜の銀狼は解散した。それぞれが思うように歩め」
それでもロキは自分の意志を曲げない。どことなく淋しそうに拒否する。ユミルとデュークは言葉を詰まらせる。
「本気なの?」
「ああ、そうだ」
ユミルの問い掛けに目をゆっくりと伏せて頷く。
「なら、私もついて行く」
ユミルは決意を固めた顔つきをしている。
「お、おい、お前には夢があるだろう?資金もあるし無理してついてこなくても・・」
ロキが全部言い切る前にデュークが口を挟む。
「ロキ、諦めろ。こうなったらテコでも動かないぜ」
デュークの顔もどこかイタズラっぽく笑ってる。
「お前まさか!」
「もちろん、俺もついていくぜ。俺達はガキの頃から一心同体だぜ」
「ばか野郎が・・・ユミル、デュークありがとうな」ロキはしみじみと礼をいうと頭をボリボリとかきながらタケルに向き合った。
「そういう事でよろしくな」
「事情はわかった。手伝ってくれる人数が多いのはとても助かる。それにしても・・いい仲間を持っているな」
「石頭のバカばかりだ」
照れ隠しとばかりに悪態をつく。
それを聞いたユミルがムキになって怒っているがデュークが苦笑いを浮かべながらなだめてる。
「明日は早い。寝坊したらおいて行くぞ」
タケルはそういって寝床についた。