眠り姫 プロローグ
数々の星が煌めく宇宙に一つの人影があった。
金色の瞳に水色のワンピースを来た10代後半に見える女性で、どこか楽しそうに金髪のポニーテールを揺らしながら星々を眺めている。
「そろそろ時間ね。今回もサンドバッグになりますか」
女性が言うと同時に、周辺に無数の人影が現れた。全員が金色の瞳をしている。
半透明の実体の無い映像で、それはほとんどの世界に存在していた。
「今回の『世界管理報告』を開始する。まずは私から。現在私の世界は安定し、ゆっくりとだが技術の進行が見られる。ただし、種の進化はまだ見えない」
中年の男性の声が宇宙に響いた。
それを皮切りに、男女様々な年齢の声がそれぞれの世界を報告する。
「私の所は大きな戦争があり、全人口は著しく減少。それを皮切りに平和への道のりを模索し始めたわ。戦争により新たな技術が多く開発された」
「俺の世界は眠っていた遺跡の解析に成功。一気に科学技術が跳ね上がるだろう。だが、扱い方を間違えば自滅。そこは介入する予定だ」
「僕の世界は、一度リセットする事にした。全人口の三割と、ある程度の文明を残してやり直すよ。もっとも原住民が勝手に自滅するんだけどね」
それ以降も口々に自分の世界の現状と予定を言っていく。
そしてある程度落ち着いてから、金髪ポニーテールの女性が口を開いた。
「じゃあ、次は私ね。私の世界はね……」
「ニフス、貴女の世界に報告するべき事なんてあるの? あんな世界に」
赤いボブカットの若い女性が、金髪ポニーテールの女性ニフスを見て言う。
「そう言わないでよ。これでも一応管理者なんだからね」
「でも、貴女の世界はあらゆる世界の終着点……いらない存在が行きつく場所。ゴミ箱。進歩も進化も存在しないでしょ?」
どこかあざ笑うような別の女性の声が響いた。
それを皮切りに、ニフスに容赦ない言葉が浴びせられる。
「正直、お前の世界の報告はいつも同じだ。変化なしと。なぜそんな世界に管理者が居るのか不思議だよ」
「確かに、管理者のいない世界も存在するが、なぜあんなゴミのような世界に管理者が必要なのか」
「そう、我らはあらゆる世界の可能性を収集、模索し、完全な世界を作る事を目的とする。捨てられた存在など不要だというのに」
「住めば都ってね。結構楽しいもんよ。いろんなもんが来るし」
侮辱的な言葉を浴びせられても、ニフスは特に表情は変えず笑顔で答えた。
再び、赤いボブカットの女性がニフスに聞く。
「で、何か進展はあったの?」
「無いよ。いつも通り。あなたたちの世界やそれ以外から、いろんな捨てられたモノや世界を捨てたモノが来てる」
「本当に、貴女の世界はどうしようもなく無駄で無価値ばかり。この会議に必要なのかしら? そもそも……」
「そこまでだ。管理者が居る以上、可能性を否定してはいけない」
会議を進行していた中年男性の声が、赤い髪の女性の発言を止める。
その後もそれぞれが報告し、全て終わると解散となってニフス以外の人影は消えて行った。
最後にニフスに気を掛ける管理者も何人かはいた。
そして誰もいなくなりニフスが輝く星々を眺めていると、そのすぐ側に水色の短髪で白色と赤色が入った服の少女が現れる。
その周囲には無数の本が浮いていた。
「お疲れ様でした。ニフス様」
「ありがと。ほんと、疲れるわぁ。ミーメも情報整理、お疲れさん」
ミーメと呼ばれた少女は、世界を管理するニフスの補佐をしている存在だった。
「他の管理者の方も、毎回ニフス様を嘲笑して良く飽きませんね」
「ま、自分よりも下が居ると安心するからねぇ。これも役目って奴よ。もっとも他の管理者たちは可哀想だけどね」
「と、申されますと?」
ニフスは視線を星々からミーメに移し、にっこりと笑う。
「ゴミの価値すら分からない、ゴミ以下だからよ」
「……なるほど、確かにそうかも知れませんね」
ミーメが頷いた時、周囲にあった一冊の本が勝手に激しく捲られる。
「ニフス様、転移反応です」
「識別は?」
「緑、生命体ですね。大きくは無いので人型くらいでしょう。お会いになられますか?」
「そうねぇ……久しぶりに挨拶にでも行こうかな」
「承知いたしました。私は一足先に戻っています」
ミーメがニフスに深くお辞儀をすると姿を消した。
「さて、今回はどんな存在が我が『ダストワールド』に来るのかな? このもっとも価値のある世界へ」
そしてニフスは満面の笑みを浮かべた。




