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ダストワールド ~全宇宙のゴミ箱と呼ばれる世界の物語~  作者: 灰色
第2話 エロトラップダンジョンの意義
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4 ダンジョン必勝法。それは力技

 意味ありげな笑顔をレウルから向けられたケイとエニは、昨晩の事を思い出していた。


「媚薬の効果があったとはいえ、凄かったですわね……」

「……ええ、まさかあそこまでとは思ってもいませんでした」

「ですがあの媚薬、効果を調整すれば良い商品になりそうです」

「その辺は、ロスパー様と交渉して下さい」


 ケイとエニがしみじみと言った感じで会話をしていた。

 そんな二人にレウルが近づく。


「二人共。昨日はすまなかったな。リトに怒られたよ。心配させるなって」

「いえ、こちらは楽しませて頂きました」

「私たちもレウル様にもっと強く進言すれば良かった。遠慮だけではダメですね」


 三人は頷き合う。


「それで、今日はどうするんですか? またダンジョンに挑戦を?」


 ケイがレウルに聞くと、首を横に振った。


「いや、もう俺キレちゃったもんね。ゴール直前で振り出しとかクソゲーだ。ケイ、前回スタッフルームがあった場所、記録しているか?」


 最初に来た時、レウルはケイに耳打ちでスタッフルームの索敵と位置の記録を指示していた。


「はい、現在地から斜め下方向。位置は前と変わっていません。恐らく周囲の状況だけを変える事ができるのでしょう」

「そうか。なら直接行く」

「直接?」


 エニが聞き返した。

 レウルはニっと笑い、二人に耳打ちをする。

 そして作戦を聞いた二人は納得したように頷いた。


「ま、作戦自体は単純だからな。よし、じゃあ行くぞ。おいロスパー!」

『ようこそ、また遊ばれていかれますか?』


 ロビーの中でレウルが名前を呼ぶと、すぐにロスパーが反応する


「いや、今日こそお前に会いに行く。覚悟しとけよ!」

『それはそれは……では、そちらの扉からお入り下さい』


 余裕の声色でロスパーが言うと、一つの扉が現れた。


「ケイ、やれ」

「承知しました」


 ケイが扉の前まで行って立ち止まると、右手を前に突き出した。

 青い光が集まると、無数の散弾が放たれ扉を破壊する。


『……え?』

「どうせ、扉にも何か細工してただろ? お前の仕事に付き合う気はない」


 と、レウルたちが中へ入ろうとするが、突然壁が作られて道が無くなる。


『お客様、器物損壊は犯罪です。中へ入る事を許可できません』

「言わなかったか? 俺はお前の仕事に付き合う気はないと。スオ、掘れ」


 黄色い球がレウルのすぐ傍に現れる。


「君は人使いならぬ、精霊使いが荒いですね」


 土の精霊であるスオが言うと、その前方に巨大なドリルが作られ、壁の中を削り取っていった。


『ええ!? 何ですかそれ!!』

「待ってろよ。そのツラすぐに拝んでやる」


 計画は至って単純で、スタッフルームの真上までスオで掘って行き、そのまま下へ掘って直接入る。

 それだけだった。


 壁を掘り、前へ突き進んで行くと無数の触手が土の中から生え、スライムが周囲から滲み出る。

 それらはレウルたちを止めようとするが、


「イニス、燃やせ」


 赤い球の火の精霊が現れ、一瞬で全ての燃やし尽くした。


「……触手もスライムも気持ちわりぃな。レウルはお気に入りだったみたいだが」


 イニスが軽口を叩きながら燃やしていく。


「うっさい! そんなわけあるか! ほらやる事やったら戻る」

「へいへい、じゃあまた用事あったら喚んでくれよ」


 イニスが還り、静かなると再びスオで掘り進んでいく。

 途中の妨害はレウルとケイが粉砕し、ガスに関してはエニが魔法で自身の身体に吸収した。


「やはり質の良い媚薬ですね。これはぜひ、今後の話をしないと」


 抵抗力があるエニは余裕の表情を浮かべている。

 突然作られた落とし穴は風の精霊アイレで三人とも浮遊して突破し、やがてケイが足を止めた。


「レウル様、ここが真上です」

「そうか。スオ、下に進むぞ」


 と言った時、レウルたちを入口へ戻そうと、足元に転送魔法陣が地面に浮かび上がった。


「ケイ、壊せ」


 ケイの周囲から六つの手が現れると、地面に向けて青い散弾を一斉に放つ。

 魔法陣は所々が破壊され、機能しなくなった。


「ロスパー。それは発動するまでにタイムラグがあるのと、魔法陣が欠けたら機能しない事は知っている。伊達に振り出しに戻ってねぇからな! バ~カ!!」


 レウルが子供じみた悪態をつきながら、下へ下へと掘り進み、やがて貫通して大きな部屋へと降り立った。


「これがスタッフルーム。ロスパーの居場所か」

「意外な場所ですわね。もっと無機質かと思っていましたが」

「どうやら、あれが媚薬の元なのかもしれません」


 中に入ったレウルたちは、目の前にある機械を見つめた。

 中央に巨大な筒状の機械と複数のモニターがあり、周囲には様々な色をした花畑がある。

 複数の機械のアームが花を育て、摘んでは何かの機械に入れていた。


『ようこそ、皆さん』


 筒状の機械から、機械音声が流れる。


「もう抵抗はしないのか?」

『その必要はありません。何をしても無駄でしょう。私はこの世界に不要。どうぞお好きになさって下さい』


 機械音声だが、どこか諦めような声色だった。

 ロスパーの言葉を聞いたレウルは、何かを考え込むと口を開いた。


「お前、生きてるだろ?」

『……』


 その問いにロスパーは答えなかった。


「昨日、休憩していてお前が自分の世界を話した時、感情的に聞こえた。最後は『死ぬ』と言ったな? 純粋な機械がそう言うとは思えない」


 そして長い沈黙の後、音を立てて筒状の機械が左右に開く。

 そこには大きなポッドに入って立っている、長い金髪で若い男性の姿があった。

 男性の目が開き、レウルたちを見つめる。


「昨日はうっかり話し過ぎましたね。私がロスパーです」


 その声は合成の機械音声ではなく、落ち着いた男性の声だった。


「これは……どういう状況なんですか?」


 エニが驚きながら呟く。


「……もしかして貴方は、その機械の生体パーツなのでは?」


 ケイが機械の中に居るロスパーを解析しながら言った。


「その通りです。私はこの施設を運営、管理する生体コアです」

「何でそんな事になってんだ?」

「昨日お話しましたが、私も世界の人口を増やすための道具だからです」

『……』


 ダストワールドも当初は人口の少なさが問題になった。

 だが人も物も全てが大切な存在であり、ロスパーの世界とは真逆の価値観になる。

 無言のレウルたちを見たロスパーは話を続けた。


「私の世界はオートメイションが特に進んでいました。あらゆる出来事が自動化される世界。必要なのは機械を整備する人間。時にそれすらも機械が担いました」

「しかし、絶対に人の手がいる事もあるでしょう?」


 同じような世界にいたケイが問う。


「はい、機械に絶対的に無いもの。発想、閃き、感情……。この装置も対象者の細かい好みなどに瞬時に対応するには、人の感性が必要でした」

「だからこそ、貴方が生体パーツとして組み込まれているのですね」

「その通りです。しかし、私たちは便利さに酔いしれ、気付けば私たちが機械に世話をされている世界になりました」

「分かりますわ。一度便利な物を手に入れれば、それを手放すのは難しい」


 エニが神妙な顔付きになる。


「人口の減少も、最初は気にもされませんでした。機械があれば補える。しかし、それすらもできないほど人口が減った時、初めて人を増やす事にしたのです」

「その言い方だと、本当に人が物みたいな言い方だな」


 呆れたようにレウルが言った。


「その通りです。人は数字であり、労働力でしかなかった。さて、ここで問題になるのが『労働力にならない人間』です」

「……それってもしかして、身体や精神が不自由な者をさしているのか?」

「はい。障害の度合いは様々ですが、世界に貢献できない、リソースだけを消費する者。それらは全て処分されました」

「……」


 それが何を意味をするのか、レウルたちには即理解できた。


「そして、私もその一人です」

「え? お前、こんなダンジョンを運営してて、メッチャ優秀じゃないか?」

「私は病気で四肢が動かなくなりました。幸い首から上は問題ないのですが」


 ロスパーの姿は、一見何の問題も無いようにレウルたちの目に映る。


「元々科学者だった私は、人口の増加方法を模索していた中でこの装置を考え、口頭で他の科学者たちに作ってもらいました」

「よく作ってもらったな」

「人口を増やす事は最優先でしたからね。藁をもすがる思いという奴です。そして私は、人を多く増やす事に成功しました」

「……? ちょっと待って下さい。それが本当ならなぜ貴方はこの世界に?」


 ケイが疑問を口にする。

 ダストワールドは捨てたモノ、捨てられたモノが来る場所だった。


「なぜ、私の施設に媚薬があると思いますか?」


 ロスパーの問いに、エニが何か気付いたよう口を開いた。


「まさか……無理やり子作りをさせていた?」

「そうです。媚薬があれば強引にその気にさせる事ができる。周囲の形状を変えるのは、一種の雰囲気作りのためです」

「本当に繁殖のみを目的とした場所だったんですね」

「貴女は昨日『愛情がなくて寂しい』と言いましたね。本当にその通りです。ここには愛も喜びも……きっと未来も無かった。だから捨てられたんでしょう」

「ここへ来る前の事は覚えてないのか?」

「私が最後に覚えているのは、ある日から誰も来なくなって、外部から強制的に動力が落とされた事だけです。なぜかここに来てから再起動しましたが」

「そうか……」

「もう、いいでしょう。私の居場所はここには無い。この世界に私は不要です」


 全てを諦めたように、ロスパーが静かに告げた。

 しかしその時、


「本当にそうかな? 私は楽しかったよ」


 レウルの身体からリトが出て来る。


「リト?」

「触手も、スライムも、ガスも、落とし穴にクッション。アトラクションみたいで楽しかった。問題なのって、媚薬じゃないのかな?」

「……!! それですわ! そう、その手がありました!」

「その手って、一体なんですか?」


 ケイがエニの反応を不思議そうに見ていた。

 レウルとリトの視線もエニに集まる。


「ロスパー、貴方はこの世界に必要です。ふっふっふ、貴方の機能を活用して、多くの人を喜ばせてみませんか?」


 そして不敵な笑みを浮かべたエニは、自らの考えを話し始めた……。


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