3 それぞれのワガママ
ロスパーの力で足元の魔法陣が作動し、レウルたちは光に包まれた。
気付くと三人は最初の入口へと戻されている。
「振り出しですね」
「最初の注意を、もっと良く聞くべきでしたわ」
ケイとエニが溜め息を吐きながら言った。
そして二人がレウルに意見を聞こうとした時、何かが地面へ倒れる音が周囲に響く。
そこには大粒の汗を掻き、呼吸を荒くして倒れているレウルの姿があった。
「レウル様!?」
「レウル!!」
ケイとエニが慌てて駆け寄り、二人の声を聞いた他の職員もやって来る。
そこで一旦調査は中止となり、レウルは急遽病院へ運ばれる事になった。
******
その日の夜。とある病院にある個室の病室。
大き目のベッドでは、レウルが息を荒くして苦し気な表情で横になっていた。
その様子をケイとエニ、そして駆けつけたジンが心配そうに見ている。
「検査結果から言うと、大量の媚薬を浴びた影響だ。死にはしないが、発散しない限り、数時間から数日は薬が抜けるまで苦しみ続けるだとさ」
ジンがレウルの状況をケイとエニに伝えた。
左手の人差し指は、刀の柄を軽く叩いている。
それは不機嫌な時のジンの癖だった。
「単刀直入に聞く。あんたら何のために着いて行ったんだ? この媚薬の効果は知っていたはずだ」
『……』
静かなジンの問いかけに、エニとケイは沈黙で答えた。
やがてジンが大きく溜め息を吐く。
「すまない。八つ当たりだった。どうせこのバカがさせなかったんだろう? 変な所で潔癖だからな、コイツは」
ジンの刀の柄を叩く音が止まる。
「正直、今あんたら異性が居るだけでも、コイツの負担になる。同性でもキツイかもな。面会謝絶だ」
そう言うとジンは歩き出し、ドアに手を掛けて口を開いた。
「あんたらが居る間は、部屋の監視カメラを切って人払いもしておく。その気が無いなら部屋から出て行けばいい」
ジンがレウルを見つめているケイとエニを一瞥する。
「……レウル支部長の事を頼む」
最後にそれだけ言うと、ジンは部屋を出て行った。
残されたケイとエニは微動だにせず、レウルを相変わらず見つめている。
その時、レウルの身体からリトが現れてベッドに座った。
「二人共、ジンが言った通り見ているだけなら出て行って。私がするから」
「リト様……」
「リトさん……」
リトが、苦悶の表情を浮かべているレウルの頭を撫でながら言った。
その手を止める事なく、リトはケイとエニをその青い瞳で見つめる。
「二人がどうして何もしないか分かるよ。レウルの意志を尊重しているからだよね?」
リトの問いに、ケイとエニは頷いて答えた。
「ありがとう。それはとても嬉しい。でもね……彼、バカだからね。自分が傷付いても大丈夫っていうバカだから」
リトがレウルを見ながら微笑む。
「無理に彼のわがままに付き合わなくていいんだよ? だって、こっちばかり我慢するのは、なんだか腹が立つからね」
寝ているレウルの頬を、ほんの少しだけ弱くリトはつねった。
「二人がしたい事は何? このまま去る事? それとも今のレウルを助ける事? 好きな事をしていいんだよ」
『……』
ケイとエニはお互いを見て頷くと、立ち上がる。
ケイは自分の上着のボタンを外し、エニはカーディガンを脱いでレウルに近寄った。
「じゃあ、後は任せるね。レウルこと、よろしく」
最後にリトはレウルに軽くキスをすると、レウルの身体の中へと消えた。
そしてレウルが気が付く。
「……なんだお前ら、まだ居たのか。早く部屋から出て行けって。これぐらい大丈夫だ。すぐに良くなる」
力無くレウルが笑う。
そんな姿に、ケイとエニは小さい溜め息を吐いた。
「リトさんの言う通りですわね」
「付き合いの長いリト様には敵いませんね」
二人はお互いを見て笑い合い、レウルだけは眉をしかめる。
そしてレウルを見て微笑むと、その服に手を掛けていった。
「お、おい。何してんだ? だからそういうのは……」
「黙りなさい」
「もう、レウル様は静かにしていて下さい」
ハッキリと拒絶され、レウルが驚いた表情になる。
「本当、我慢ばかりしていたこっちがバカバカしくなってきましたわ」
「最初からこうすれば早かったですね。振り出しに戻る必要もありませんでした」
言いながら二人は器用にレウルの服を脱がしていった。
抗おうとしたレウルだが、薬の影響で上手く力が入らず諦める。
やがて覚悟したように口を開いた。
「今の俺は薬の影響でまともじゃないぞ……それでも良いのか?」
「問題ありませんわ。むしろそっちの方が楽しめるというもの」
「たまには三人というも、趣があって良いでしょう」
「……そうか。遠慮はできないから、覚悟しろよ」
レウルが上半身を起こし、ケイとエニを見つめる。
そんなレウルに二人は微笑んで抱きしめた……。
******
レウルが入院した翌日の朝。
レウル、ケイ、エニたちはロスパーが管理している施設のロビーへと来ていた。
他にも待機している職員が何人か居る。
「いやぁ、実に気持ちの良い日だ」
無事に退院できたレウルは、背伸びをして活き活きとしていた。
一方、ケイとエニはどこか少し疲れたような顔をしている。
「さて……じゃあ、いっちょやり返すか。俺たちなりのやり方で、な」
そんなケイとエニに、レウルはニヤっと笑った。




