ダンジョン プロローグ
※本編に過度な性描写などはありません※
******
ある日、リセイユ国転移物対策組織第1支部の司令部は、新しく転移してきた建造物の調査をする調査隊のサポートをしていた。
どの国の転移物対策支部も、支部長が総司令官を兼務しているが、現場に立つ事が多いため、司令部の職員が代わりをしている。
トップがいなくなる、あるいは独断専行などが起きても、混乱を最小限を抑える為の処置であり、それぞれが自分の成すべき事を考える体制が作られていた。
『こちら所定の位置に着いた。転移物は山の中に埋まっている模様。入口を発見』
その建造物は大きい為、普段使われる転移場から少し離れた山に転移していた。
調査に向かったのは男女二人ずつ四人の隊で、何かあった時のために救助隊と医療隊も離れて待機している。
「司令部了解。カメラを付けて記録しながら、注意して進んで下さい」
『あー……。一応言っておくが、見ても驚かないように』
調査隊の隊長である男性の声が、妙に戸惑っている。
そしてカメラがオンになると、司令室にいた職員全員が目を疑った。
『ようこそ、エロトラップダンジョンへ。種族繁栄こそ、未来へ繋がる架け橋! さぁ、恐れずレッツ子作り!!』
司令室の大きなモニターに打つし出されたのは、そんな文言が書かれ、極彩色の看板をデカデカと掲げた大きな門だった。
さらにそこには開店準備中とも書かれている。
「……はい?」
司令室に居た職員たちが目を丸くして、間抜けな声を上げた。
『言いたい事は分かるが、何も聞くなよ? それでどうする? 準備中だとよ』
「あ……そうですね。建物だけの場合、開店する事もないでしょうし、注意して中を確認して下さい」
『了解。おい、行くぞ。陣形を乱さないよう注意しろ』
門は鍵などは掛かっておらず、隊員が押すと簡単に開く。
中には受付ロビーのようになっていた。
カウンターがあり、奥へと続くドアが一つあった。
そして、職員が奥へ続く扉を開ける。
そこで広がっていたのは、山の中とは思えないほど、整地され迷路になっている場所だった。
『どうやら看板通り、中は入り組んでるな。迷路みたいになっている』
「そのまま中へ進んでください。何がある分からない以上、細心の注意を」
『了解した。みんな、慎重に進むぞ』
職員たちが、注意しながらゆっくりとさらに奥へと進んでいく。
モニターは入り組んだ道を歩く職員たちを映し出していた。
その時、軽快な音楽と共にアナウンスが流れる。
『ようこそ、明るい未来計画。人は宝、宝は人。労働力こそ、新たな世界を築きます。滅亡にひんした世界を今こそみんなで救いましょう』
合成された機械音声が迷路中に響く。
その時、迷路に入った職員の一人が叫んだ。
『た、隊長さっきまであった道がありません!?』
『なんだと! 他の道は?』
『それが……我々が歩いた道が無くなっています!』
『くそっ、罠か!!』
「すぐにその場からの退避を! 救助隊も準備が終わり次第、突入して下さい!」
司令部が指示を飛ばしたその時だった。
『な、なんだこれは! 壁から複数の触手が!!』
と、カメラに壁から生える触手が映し出されたが、その時に触手が当たったのか映像が途切れ、音声だけが司令室に流れる。
『何これネバネバした液体が天井から……きゃあぁあ! ふ、服! 服が溶ける!!」
『この触手さっきからなんで変な絡み方して来るんだ! そんなとこ触んな!』
『おい! ガスだ、全員気を付けろ!』
『このガス……なんだか甘い匂いがする。か、身体……熱い……』
音声だけで切羽詰まった状況が知らされる。
「救助隊! そっちはどう!?」
『こちら救助隊、建物内の扉を開けたら壁だった。本当に道が無くなっている』
「中に入った職員の位置は?」
『それはそう遠くない』
「魔法でも道具でも何でもいいから、掘り進んで救出を。すぐに応援をそちらに送ります」
『了解した』
一方、侵入した職員たちは不気味なほど静かだった。
「調査隊、大丈夫? 返事をして下さい!」
『……熱い、凄く熱い……うずく』
「?」
とりあえず返事は帰って来たが、どうもその声は熱を帯びているようだった。
そして調査隊四人からは、妙な発言が聞こえて来る。
『隊長……私、隊長を見ていると、身体が疼いて仕方ないんです……」
『俺もだ……お前は綺麗だな』
『俺さ、お前の事、好きだったんだ……』
『わ、私も……この身体の熱を一緒に冷まさない?』
司令室に居る職員全員が怪訝な表情を浮かべる。
『俺の子を産んでくれ……』
『もちろんよ、ダーリン』
『お前は俺の天使だ……』
『そんな、恥ずかしい……でも、嬉しい。一緒に天国へ行きましょう』
そんな会話を皮切りに、とてもお子様には聞かせられない音声が、司令室中に響き始めた。
「……」
絶句し、静かな司令室に何とも言えない音と声が響き渡る……。
やがて何かが終えて、静かになった。
『こちら救助隊。急に道ができて調査隊の四名を発見、これから救助に……』
「こ、こちら司令部。四人状態は!?」
『あー、そのなんていうか。軽く調べた結果、命に別状はなく、怪我も擦り傷程度。ただ……』
「ただ?」
『全員なぜか裸で抱き合って気絶している模様。とりあえず、回収して近くの病院へ移送する。以上』
「り、了解です。何か分かり次第、至急連絡して下さい」
そこで、通信が終わりモニターも消される。
「これ、どうする? 何か凄い面倒くさそうな感じがするんだけど?」
司令室に居た一人の男性が言った。
「確かにそうね。こういう時は……」
「レウル支部長に任せましょうか。あの人、こういうの好きそうだし」
「そうだな。率先して調査してくれるかもしれない」
「じゃあ、この件は支部長にお願いするという事で」
司令室に居た全員が納得したように頷く。
優秀な理解ある職員のお陰で、レウルに仕事が与えられる事になった。




