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第6話 僕は変わっていないのに

挿絵(By みてみん)

 僕の評価は、あの日を境に変わった。


 理由は単純だった。

 超絶美人の彼女がいる。

 学校という閉じた世界では、それだけで株価が跳ね上がる。


「なあ南川の彼女って、芸能人なの?」

「どこで知り合ったんだよ。すげーな南川」


 挨拶すら交わしたことのなかった陽キャが、声をかけてくる。

 肩を並べ、同じ空気を吸うことが当然のように振る舞う。


 廊下ですれ違うときの視線も違った。

 ひそひそ話は減り、敬意めいた感情が向けられる。


(……こんなに、変わるもんなんだな)


 僕自身は、何も変わっていない。

 ただ、神源さんと一緒に帰り、普通に話し、普通に笑っているだけだ。

 そもそも付き合っていない……と、思う。

 名前も、連絡先も知らないのだ。


——その日も、いつものように


「おい中村、ノートよこせって言ってんだろ」


 教室の隅で、聞き慣れた不快な声が響く。

 相変わらず、中村はいじめられていた。


 僕は、ため息をついてから立ち上がる。


「やめろよ」


 声を張り上げることもなく、ただ一言。


 いつもなら、ここからだ。

 いじめっ子が僕に絡んできて、周囲がざわつく。

 それで先生がやってきて、終わり。


 殴られたら、むしろラッキーだ。

 診断書をとって、学校側の対応次第では警察に届けると伝える。

 それで大概、相手の低学期間が長くなる。


——だが、今回は違った。


「……あー、南川か。もういいや」


 いじめっ子は僕の顔を一瞬見て、あっさりと引いた。

 それから教室に、奇妙な沈黙が残った。


「……え?」


 中村は、小さな声で


「ありがとう、南川くん」


 昼休み、弁当を食べている時。

 中村は、少し照れたように、でもはっきりと口にした。


「いつも、ありがとう。南川くん」

「……南川くんに素敵な彼女いるの、当然だと思ってるよ」


 何を言っているんだ。意味がわからない。

 僕は笑って答えた。


「僕なんて、勉強も運動もできないし。オタクの陰キャだよ」


「南川くんは、優しいよね。誰よりも」


 中村は、真面目な顔でそう言った。


 その日からだった。

 女子が僕に話しかけてくるようになった。

 そして、やけに距離が近い。


(いや、待て。おかしいだろ)


 特にLINE交換を求められるのには困った。

 丁寧に、お断りしているけど。


 今日も困惑したまま、放課後になる。

 いつもの校門で。


「……南川悠人さん」


 聞いたことのない、かなり低い声。

 プク顔。明らかな不機嫌を乗せて。


——か、かわいい。


「ど、どうしたの?」


 歩み寄ってきて、僕を見上げる。


「知ってます。最近、悠人さんがモテてるって」


 怒っている。かなり。


「え、いや、その……」


「違うとでも?」


 にこり、と笑う。

 目は笑っていない。


 彼女の視線が一瞬、校舎の方を向く。


「悠人さんがモテるのは、当然のことですから……」


 さらにプク顔を膨らました。

 たまらず、声に出てしまった。


「……かわいい」


 と。


 彼女は顔を真っ赤にした。


 見ても、いいんだ。

 もうガン見しても、キモくないんだ。


——か、かわいい。


 校門の前、夕焼けの中。

 ずっと彼女を、見ていたい。



お読みいただき、ありがとうございます。

とっても嬉しいです。

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