第4話 確かなこと
リアル女性から「好き」と言われている。
その事実を、何度も頭の中で反芻していた。
好きだと?
僕が?
現実の?
女性から?
いや、間違いない。罰ゲームだ。
ゲームマスターから「陰キャへの告白」を命じられたのだ。
戦士たちなど、初めからいない。
知ってたじゃないか。
——でも
彼女の声、身体の距離、潤んだ瞳。
全部、覚えてる。忘れられない。
死ぬ前に思い出す情景リストのトップ。
絶対にトップ。
僕の耳に”最悪”が届いたのは、昼休みだった。
「ねえ、南川ってさ」
「インキャ女子背負ってたんでしょ」
「やばくない?」
「献身キャラ気取ってんの?」
廊下の端で、陽キャどもの笑い声がする。
言葉の破片が、針みたいに刺さる。
——違う
これは、そんな軽い物語じゃない。
廊下にいた陽キャどもが、声をかけてきた。
「ブスと付き合ってるんだって? 南川」
「さすが南川、ププッ」
瞬間。
「……は?」
声が低すぎて、自分でも驚く。
視線を、相手の目から少しも離せない。
「ブス?」
一歩、近づく。
「お前ら、なにを見て、なにを言ってる」
誰も答えない。
笑っていたはずの顔が、引き攣っている。
「めちゃくちゃかわいい子だ!」
「めちゃくちゃかわいい子だ!」
「めちゃくちゃかわいい子だ!」
この世界に確かなことなどない。
そう思っていた。でも違った。
——彼女は、かわいい。それだけは確かなことだ
沈黙が落ちる。
「それと、彼女とは付き合ってない」
「彼女の迷惑になるから、そういうのやめろ」
少しだけ震えていた。
怖かった。
でも、後悔はなかった。
きっと罰ゲームだ。間違いない。
だから、なんだ。
——彼女は、かわいい。それだけは確かなことだ
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