最終話 始まりの日
空港は、明るすぎる。
ガラス張りの天井から、光が落ちてくる。
現実的で、逃げ場がない。
人の流れが途切れない。
誰かの人生の節目が、作業のように処理されていく。
彼女は、そこにいた。
黒縁のメガネ。黒い私服。
制服ではない。
それが彼女との距離を強調する。
僕は、少し離れた場所で立ち尽くしていた。
近づけば終わる。
声をかければ、すべてが決まってしまう。
それでも——。
足が、勝手に前に出た。
彼女が振り向く。
目が合った、その瞬間。
僕が、溢れた。
「詩織!」
彼女が、泣き出す。
「呼んでもらえた……」
喉が震える。
「闇のサイキックはやめる」
息を吸って。
「詩織のストーカーになる」
彼女は吹き出した。
笑って。それから泣いた。
手で口を押さえて
「……ずるいです」
涙が、次々と落ちる。
「そんなこと言われたら……行けない」
「行っていい」
近づく。
今度は、止まらなかった。
「必ず、迎えに行く」
彼女の前に立ち、彼女を見る。
「どこにいたって、絶対に見つけてみせる」
彼女は、一歩下がって。
でも、目は逸らさなかった。
「……約束ですよ」
「約束だ」
彼女と、つながった気がした。
違う。
自分の力で、つなげるんだ。
彼女は、何度も振り返りながら離れていく。
最後に、もう一度だけ、手を振った。
その姿が、人混みに溶けて消えても
僕は、ずっとそこから動かなかった。
空港は、相変わらず明るすぎる。
でも。
もう、闇に逃げる気はない。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
とっても、とっても嬉しいです。
リアクションや評価も、ありがとうございました。
またどこかで。
八海クエ
Xアカウント https://x.com/yakkaikue




