トリカゴ(後編)
ちと仕事が忙しく、ざっくりですいません
道路の脇にある緑地スペース、ほんの小さな公園に白い人影があった。
ー間違いなくあの青年だろう。
俺はさりげなく、そっと近寄ってみた。
気付かれたら面倒臭い事になりそうな気がするからだ。
…いや待てよ?つい先日一度会っただけだし俺の事を覚えているのだろうか。
そっと様子を伺ってみたつもりだったのに目が合ってしまった。
しまった油断した!青年はこちらを見てニッコリしている。
「あの…ええっと…。」
「やぁこの前ぶり!」
しかも覚えられてた…。
仕方無く側まで来ると青年は木に向かって一心不乱に叫びながら掌をかざしていた。
所謂か◯はめ波の姿勢だ。
勿論気功波の類は出ていないが、俺はこれを知っている。
子供の頃に遊んだ格闘ゲームのキャラが使う技だ。
あの時は一緒に遊びに行く相手が居て、毎日ゲームセンターに通っていたっけ。
この青年もきっとあのゲームが好きでコスプレでもしているのだろうか?少しだけ親近感が湧く。
「あの…それって…アレですよね…?格闘ゲームとかお好きなんですか?」
「そうだな。オレより強いやつに会いたくてさ」
まるで答えにはなっていないが好きなのは間違いなさそうだ。
青年の姿を見てある言葉が浮かんできた。
…トリカゴ
格闘ゲームにおいて画面の端=相手の逃げ場所を無くしてから、気功波の様な攻撃で一方的に攻め立てる事。
じわじわと体力を奪い、業を煮やして逃げたとしても予め想定していた別の技で叩き潰す。
逃げ難い事から通称鳥籠=トリカゴなのだ。
ー何だか現実社会に似ている。
兎角この世は綺麗事だけでは済まされない。
理不尽に思うもひたすら我慢するしか無い状況がいかに多い事か。
どうやら苦笑いをしていたらしい。
不思議そうな顔で青年が話しかけてきた。
「どうした?」
「いや、トリカゴを抜ける方法を考えていて…」
そうだなと青年。少し考えて笑顔で言い放った。
「相手の行動パターンを読んで隙を見つけたり、油断させておいて意表を突けば良いんじゃないかな?」
…俺の胸の中に何か熱いものが灯るのを感じた。
収穫があった様な無かった様な?でも何故か懐かしい感じがして何となく嬉さを感じる。
しかし不意な金属音で我に返ってしまった。
音の方向を見ると歩きがままならないお爺さんが歩道の小さな段差で四苦八苦していた。
杖がガツガツと音を立てていたのだ。
でもこのままでは躓く!助けに行くには距離があるが、危ない!
「はぁっ!」
一瞬何か掌を模した半透明な塊がスッと目の前を横切りお爺さんの胸に直撃した…様に見えた。
お爺さんはその反動で倒れずに済んだ…気がする。
お爺さんは助かったけど、そんな馬鹿な!?
背後でドヤ顔をしている青年が感じ取れたので俺は急いでその場から逃げ出した




