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白道着の青年

 年末の押し迫るある朝、俺は会社へ急いでした。

内容は忘れてしまったが変な夢を観たせいか寝覚めが悪く、頭がぼーっとして時間を無駄にしたからだ。

いかん!これからの時期は年末商戦で増々忙しくなるし遅刻は許されない。


 信号待ちは通勤時の小休止である。

その時間を利用して俺は目を閉じ深呼吸をした。

キンと冷えた空気を肺一杯に満たし、寝ぼけた頭に喝を入れるのだ。


 聴き慣れたメロディにハッとして目を開けたーまだ寝ぼけているのだろうか?

青信号と左右を確認しつつ横断歩道を小走りで渡り…出したのだが、何故かメロディが途中で切れてしまった。

信号も真っ暗なので停電だろうか?


…背後でべしゃっという音。


振り返ると小学生の男の子が転んでいた。

まるでカエルの様な格好だ…えっ!?


信号が消えてパニックになったであろう1台の車が、倒れた小学生に迫っていた。


俺は両手を振り上げながら小学生の元へ向かう。


車を止めないと!間に合え!


その時、視界に白い何かが滑り込んで来た。

鉢巻に白い道着姿の青年だ。この辺に道場あったかな?それともコミケ?

青年は走って走って、小学生の手前で突然しゃがみ歩きになり…強烈なブレーキ音が鳴り響く。

しかし青年はそのまま車に激突し弾き飛ばされたのだった。


唖然としながらも俺はまず車と小学生の方に駆け寄る。

あの青年が身を挺してくれたお蔭で小学生は無事だ。

運転していたお爺さんも車から降りてきて胸を撫で下ろしていた。


ーではあの青年は大丈夫なのだろうか?


恐る恐る青年の方を向くとケロッとして普通に立っていた。


「君っ!大丈夫か!?」と俺。大丈夫そうでビックリである。


「あ、ああ大丈夫だ。しかし…」


しかし?


「封竜ステップは15F(フレーム)無敵の筈なのに車に当たってしまった」


…は?


「あっフレームというのはね1/60秒の事なんだ!それを利用してあの子を押し出そうと思ったんだけど」


…どうやら関わってはいけない人物だったらしい。

した事は素晴らしいのだが何とも言えない気まずさがある。

視線を逸らすと自然とあの車の方に目がいった。


 お爺さんが不思議そうに車を点検していた。

ブレーキかけたとはいえ青年がぶつかったのだから多少は凹みがあったりするのだろうか?いや無い?

車は傷一つ無く無事に停まっていた。

こんな事ってあるのかな?

混乱している間にお爺さんは車に乗って走り去ってしまった。


…轢き逃げじゃんか!


一方で全く気に留めず笑っている青年の姿が。


「あの、轢き逃げなんですけど?あの車逃がしちゃって良いの?」

「ああ、大丈夫さ!」


訳の分からないまま、俺は遅刻が確定した。

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