23.超悪い子軍団と友達
「あんたたち……一個気になってたんだけど、ちゃんと友達いるの?」
何気ないアレプトの疑問が発端だった。こいつらに、友達はいるのか、と。
「え?いるよ、当たり前じゃん」
「同期の絆というのは意外と固いものなんですよ」
「いらないだろう、そんなもの」
三人は口々に答える。
「やっぱり!あんた絶対いないと思ってたのよ、オティス!」
「オティスは、いるって言われた方が驚くかも……」
「おや、以前言っていた無口友達はどうしたのですか?」
「彼女ができてからウェイ系になって疎遠になった」
淡々とオティスは答える。
「え、逆に今までいたんだ……」
「まあいいじゃない、そのうち全員私たちの配下になるんだから」
「……友達を?」
「ええ、そうよ。統治のための民衆よ。一日三食配給制の社会よ」
「……改めて聞くとディストピア世界ですよ、統治方法を変えましょう」
グシオンはホワイトボードを部屋の隅から持ってくる。
「そういえばブエルが入団してからやってなかったわね。じゃあ改めて、『統治後の世界について』を議題にするわよ」
アレプトはホワイトボードに文字を書いていく。
「まず私が内閣総理大臣になるでしょう」
「前提が大きすぎる」
「まず民主主義を撤廃するわ」
民主主義、と書くと大きくバツ印をつける。
「内閣なのに?!」
「ええ、独裁者アレプト様の誕生よ。それでそうね……正義の味方は全員地下労働行きね」
「どこの?」
「どこでもいいじゃない。それで、そうね……」
「はい、食事はどうなるのでしょうか」
グシオンが手を挙げる。
「一日三食、スイーツ付き。配給制よ。階級によって食事の内容も変わってくるわ」
「戦前?」
「なるほど、その階級によって通える店も変わるということか」
オティスは頷く。彼の脳裏には彼専用の美容院が浮かんでいることだろう。
「ですが、階級配給制だとそのうち下層が爆発してしまうのではないでしょうか。その上毎日同じものだと飽きがきて不満が溜まると思います」
グシオンが異を唱える。
「ふん、そんな不満出るのは承知の上よ!私をその辺の独裁者と一緒にしないで。配給するのは……食券よ」
「食券?」
「ええ、学食形式よ!これで好きなものを選べるわ!もちろん病人食も選べるわよ!」
「毎日ラーメンでもいいってこと?!」
「野菜をちゃんと摂れ」
「その上月に一度は上流の配給食堂を使えるわ!全員等しくね!逆も可能よ、上流層が下層の食堂を使うのもあり!」
「以前よりは現実的になりましたね」
グシオンが言うとペンが飛んでくる。
「うるさいわね。それでゆくゆくは世界各国のベースとなり一番の先進国として活躍していくわ」
ふん、とドヤ顔で言うアレプト。そんな中、ブエルは一つの疑問を浮かべる。
「あれ?でもこれって日本だけの話だよね?俺たちの目標って世界征服じゃないの?」
「そうよ、これは一歩にすぎないわ。……次はね、胃袋で世界を掴むのよ」
「胃袋で?」
「そう、食のすべては日本にあり。日本の独裁者アレプトこそ模範的な独裁者であるとね!」
「独裁者に模範的とかあるんだ」
「当たり前でしょう、言ってるでしょ、私をその辺の独裁者と一緒にしないでって。こんなの序の口にすぎないんだから」
「……で、なんで友達がいるかの話からこんな飛躍しているんでしたっけ」
グシオンが言う。何故こんなに飛躍してしまったのだろうか。
「それもそうね。とりあえずの目標はフリーヶ丘……いえ、世知谷区の区長当選よ!」
「そこからなんだ……」
「夢は一歩ずつ確実に固めていくものよ。じゃ、会議はおしまいよ」
……本当にここは悪の組織なのだろうか。櫛で髪を漉くオティスを横目にブエルは考える。
携帯のバイブ音が鳴る。
内容を見ると、明日の放課後にカラオケに行かないかという誘いだった。
「ま、いっか!」
行く!と連絡を返す。今はこの日常を過ごすことにした。




