22.大岡谷と大騒動
丁京都フリーヶ丘。
住みたい街ランキング常連・スイーツの聖地として知られるこの街には──
今日も恐ろしい(?)悪の組織が存在していた。
そしてその近隣、グシオンの通う大学では
何やら一波乱が起きそうな気配が……。
今回は大岡谷編。
やりたいことを詰め込んだ回です。
ごゆるりとお楽しみください。
「いやあ、すみませんね。今回の発明は結構大きくて……わざわざ持って帰るのが大変だったので」
超悪い子軍団はグシオンの通う大学━━丁京工業大学へときていた。
丁京工業大学は大岡谷にある、国立名門大学だ。
「思ってたけどグシオンって本当は頭いいんだね」
「失礼ですねえ!ブエルってたまに痛いところを突いてきますよね!」
そう言いながら大学の敷地に入る。
敷地内ではサークルの勧誘活動が行われており、学生たちで溢れかえっていた。
その中で一つ、際立つ閑散としたスペースがあった。看板には『悪の組織サークル ファインマン・ダイアグラム』と書かれていた。
「悪の組織のサークル活動……?」
「ああ、そういえばそんな話を聞いたことがありますね。リーダーは悪の組織活動を続けるためだけに十留してるとかなんとか」
「そもそもファインマン……なんちゃらって何?」
「量子論の専門用語です」
そんなコソコソ話をする。すると後ろから女の声がかかる。
「ああ、アレプトじゃないか?どうだ?うちと同盟を組む気になったか?」
「正義の味方のダメージボイスを集めるためだけに十留しているやつと同盟組みたくないわよ。別の用事で来たの」
「じゃあ仕方ない……やっちまいな!」
「……残念ね!私たちは今悪の組織ライセンス更新期間中のただの一般人よ!助けてー」
アレプトは棒読みで助けを求める。
すると突如、音楽が流れ始める。校内の放送をジャックしているようだ。
「……正義の味方、クォーク!」
「正義の番人、レプトン」
「「我らの学舎で悪事など、許さない」」
仮面を被った、スーツの男が二人現れる。腰にはベルトを巻いている。あれが変身装置のようだ。
「お嬢さん、我々がきたからには安心です」
(……この声、青年、というよりは中年ね)
声から察するに、四十から五十代くらいの男たちだろうか。
アレプトは渾身の演技でクォークに縋り付く。
「前からよくわからない因縁をつけられて困っているんです、貴方たちは正義のヒーローよね?助けてください!」
内心、潰しあってくれれば自分達の領域を広げるチャンスがあるな、と思いながら涙目で訴える。
「そうだ、私たちこそ大岡谷の正義のヒーロー、クォーク&レプトンだ」
「君は……」
レプトンはグシオンの方を見て驚いた声を上げる。
「貴方、その声は……!いえ、悪の組織法があります、詳しくは言いません」
「グシオングシオン、知り合い?」
小声でブエルはグシオンに尋ねる。
「ええ、恐らく僕のゼミの教授かと……」
同じく小声でグシオンは答える。
「あんたたち、やってしまいな!」
「あの、悪の組織サークルとは聞いていたんですけど戦闘があるなんて聞いてません、辞めます」
「部長〜、だから言ってるじゃないですか、ちゃんと悪の組織として活動してるって言わないとって!」
「すみません、十七時までに提出物出さないと単位ヤバいんで今日は出ないです」
ファインマン・ダイアグラムはどうやら統率が取れてないらしく、正義の味方を前にしても好戦的ではないようだ。
「……グダグダね」
「……ここのサークル、僕も勧誘を受けたんですけど、表向きは悪の組織を語る会みたいになってるんですよ」
「なんでこれで公認なの?」
「申請を出し、今まで悪事を働いていたからだろう」
「付き合ってられないわ、早くグシオンの研究を見に行きましょう」
アレプトはそう言うとグシオンに案内を再開するように促す。
「くそっ、今日こそいい悲鳴サンプルが取れると思ったのに……覚えてろ!」
そんな声を後ろに聞きながら。
「これが僕の研究です!」
そう言うとグシオンは説明を始める。
「まあ手っ取り早く言うと物を合成する機械です。実際に稼働しているのを見てもらった方がいいですね」
そう言うと黒のボールペンと赤のボールペンを機械に入れる。
そしてボタンを押すと、そこには二色ボールペンがあった。
「このように!ボールペンを二本持ち歩かなくても済むようになります!まあこれ、無機物にしか使えないんですけどね」
「最初から二色ボールペン買いなさいよ」
合成機械の実装はなしになった。
正義の味方の悲鳴を聞くために居座るリーダー、
サークル感覚の悪の組織。
この世界の悪の組織、どんどん軽くなってきていますね。
クォーク&レプトンは地味にお気に入りのコンビです。
次回更新は明日!
お楽しみに!




