16.悪の組織と会合
丁京都フリーヶ丘。
住みたい街ランキング常連・スイーツの聖地として知られるこの街には──
今日も恐ろしい(?)悪の組織が存在していた。
そして、他の街にも悪の組織は存在していた──!
第二部、開幕です。
ごゆるりとお楽しみください。
「アレプトちゃん、おっそ〜い!」
「アレプト、三十二秒の遅刻だ」
「……悪かったわね」
だからここに来たくなかったのだ、とアレプトは目の前のそっくりな姉弟を見て心の中で思う。
それは一週間前に遡る──
双子ヶ丘間共同戦線──デカ井町線沿線の都市、双子玉川からフリーヶ丘の間の六都市で活動する悪の組織で結んでいる不可侵条約の定例会の案内が来たのだ。
「ね、アレプトちゃんは来てくれるよね?」
フリフリのロリィタ服に身を包んだブラン──双子玉川の悪の組織「Nico×Jumeaux」の片割れが聞いてくる。ちなみに男だ。
「もちろん君に拒否権はない」
そう言うのはブランの片割れのノワールだ。彼女も同様にフリフリのロリィタ服を着ている。しかしブランと違いその格好は少年のような姿をしている。
「わかってるわよ……ったく、このくらいメールでよこしなさいよ……」
突然の面倒な来客にアレプトは苛ついていた。ブエル、グシオン、オティスの三人がわかりやすく距離を取るレベルだ。
「そんでそれを言うために来たわけじゃないでしょ?」
「うん。僕、アレプトちゃんとお茶会したいんだあ」
「ブランの言うことだ。もちろん聞くよな?」
「嫌よ、今確定申告してんのよ……あんたたちもちゃんとやりなさいよ?医療費控除とか結構馬鹿にならないんだから」
タブレットの前で頭を抱えながらアレプトは答える。ちなみに期限はもうすでに迫っている。
「そ・れ・じゃ・あ♡気分転換!アレプトちゃん、眉間に皺ができちゃうわよ?」
「うるさいわね、ブエル、あんたこいつらの相手してやって」
「俺ぇ……?」
「ダメだ、ブランはアレプトとアフタヌーンティーをしたいんだ。もう場所は押さえてある。なに、場所はフリーヶ丘だ。問題ないだろう」
「問題あるわよ!さてはあんたたち、脱税──」
「「さあ、行こう」」
とまあ、無理やりお茶会に誘われたのだった。今思い出しても頭痛がする。
そして今、だ。フリーヶ丘の公民館へと全員集まっている。目の前には六人の人間がいるはずだが、一人いない。
「絵心は?」
上模毛の創造破壊デザニウムのリーダー、絵心がいないのだ。
「あそこは協調性がないからね。まあこないのは想像の範囲内だ」
「今日の議題ですがやはり皆さんも自然を共に愛してくれると?ああ、なんて嬉しいことでしょうか」
そう言うのは等々久の愛♡自然一体派のリーダーだ。こいつも話を聞かないことをアレプトは知っている。
「それよりも美味しいお店、共有しませんか〜?あたしぃ、皆さんの街の美味しいお店知りたいなあ」
こちらは尾山谷のグルメ思想パラダイムのリーダーだ。その隣では十品仏の熱烈思想奏天派のリーダーがひたすらお経を唱えている。
全員話を聞く気がないことはわかりきっていたが、改めて目の当たりにすると目眩がしてくる。
「それで今回の定例会のテーマは何?共同戦線?同盟の強固化?」
「え~、そんなのどうでもよくない?楽しくおしゃべりできれば♡」
「ブランが言うんだ、それでいい」
「じゃあじゃあ、ブランさんのおすすめのお店、知りたいですぅ~」
「この会議室から見える、自然はやはりいい。フリーヶ丘はもっと自然を増やすべきだと私は常日頃から思っており──」
「真面目な話題を出した私が馬鹿だったわ!あんたたち普段の悪いことなにしてんのよ!」
本当にこいつらは普段から何をしているのか。何故こいつらは悪の組織をできているのか。
「僕たちは普段から双子玉川ライスにロリィタの店の誘致をしているぞ」
「ね~、入っている店に地道に嫌がらせしたりね♡」
「地味に嫌なことしてるじゃない!」
「あたしはぁ~、街のみなさんの体重を増やしていますぅ」
「こっちも地味に嫌ね!」
「私はそこかしこに苗を植えている」
「普通に迷惑!」
熱烈思想奏天派はひたすらお経を唱えている。
「これ騒音被害出てるわね!」
「熱烈思想奏天派ちゃんのお経、あたしのところまで聞こえてくることあるわよぉ」
「なんであんたたちきちんと悪事やってんのよ!」
心からの叫びが出る。毎月別の悪事を考えている自分が馬鹿らしくなる。
そして気付く。双子玉川から十品仏の間で街が壊された、という報告を聞かないということに。
「もしかしなくても真面目に悪事をやってるの、私たちだけじゃない!」
アレプトの叫びが町中に響く。
その日、騒音が酷いとのことでこの公民館は借りれなくなった。
そんなこんな(?)でまとまりがない不可侵条約なのであった。
みんな悪事は地味ですが、それでも大真面目に取り組んでいます。
それぞれの悪の組織のあり方、というやつですね。
第二部、お楽しみください。
次回もお楽しみに!




