閑話休題1.一班甚と入団面接
丁京都フリーヶ丘。
住みたい街ランキング常連・スイーツの聖地として知られるこの街には──
今日も恐ろしい(?)悪の組織が存在していた。
そして、そんな悪の組織では入団面接が行われていた。
今回は過去編、ブエルこと一班甚の入団面接回です。
ごゆるりとお楽しみください。
「じゃあ面接を始めます」
目の前の少女、超悪い子軍団のリーダー、アレプトが声を上げる。
緊張しながら、俺は座っていた。
俺の名前は一班甚。春から高校生になる。
丁京都の高校に合格できたはいいけど、金がなかった。だから金になるバイトが欲しかった。
だからこそ、俺は、金のために悪に手を染めることに決意したのだ。
──だって住み込みOK、三食付き、兼業OK、ノルマなしなんてあまりにも夢みたいな条件じゃないか!
「まず弊組織への加入希望とのことだけど、悪の組織について知識はある?」
「実はないんですよね」
「そう、じゃあ説明してあげるわ。この世界の悪の組織は『地域を統治する能力』を見るために存在しているの。一種のカリスマ性、それを見るための制度でもあるわ。実際に他の地域では悪の組織のリーダーから政治家になった人間もいるの」
そういえばそんなニュースを見た気がする。アレプトは続けて言う。
「悪の組織に許されている権利、それは街の破壊よ。それもただの街の破壊。歴史的建造物の破壊や人へ危害を加えることは禁止されているわ。なんでかわかる?」
「えっと……カリスマ性を見るためだから、価値のあるものを壊すのはルール違反、とか……征服した後に価値になるものを残しておくため、ですか?」
そう答えると、アレプトは二コリと笑った後言う。
「その通りよ。街は復興できるけど歴史や人は修復できない。だからそのような行為は禁止」
「でも、たまに迷惑系悪の組織とかがニュースになっているじゃないですか?」
ネットで見かけるニュースを例に出すとアレプトは関心した顔をする。
「あら、意外とわかってるじゃない。あれは『やりすぎた』例よ。交通の阻害とかね。地道な嫌がらせとかはOKよ。ポストに入っている迷惑なチラシを抜くとかね」
「なるほど、意外と理に適ってるんだ……」
「そうよ、嫌になるくらいにね」
アレプトは一瞬顔をゆがめるが、すぐに笑顔に戻り続ける。
「それで、悪の組織のメンバーはそのリーダーを支えるための土台よ。土台がなければどれほど立派な柱も立たないわ。あんたはその土台になる覚悟、ある?」
「……あります、だって俺、お金欲しいもん」
場が凍る。本音が出てしまった。
「……アレプト様、この者、金目当てです」
アレプトの隣に黙って座っていた男が声を上げる。
「まあ、あんな条件で出してるんだもの。金目当てで来る輩がいるとは思ってたけど……びっくりするくらい素直ね」
「す、すみません。つい本音が……」
これはやらかしてしまったな、と猛省する。これは、落ちた──
「でもこのくらい素直なほうが使いやすいわね。いい?ここからは本音で話しなさい。志望理由を話しなさい」
「金です!高校に通いながら働ける職場が欲しかったんです!」
「……あんた、家族は?」
「ああ、特に期待されてないんで」
アレプトが複雑そうな顔をする。
「……一個だけ聞くわ。あんた、今黒髪だけど、髪染めれる?」
「え?校則で禁止されてなかったから染めれると思いますけど……」
「ああ、もう採用よ採用!一つだけ条件!髪を金髪にしなさい!いいわね?!」
「え?!いいんですか?!ありがとうございます!」
そんなこんなでとんとん拍子に採用が決まった。やった、早く引っ越す準備しなきゃ!
「いいから、お礼は働いてしなさい!」
「はい、わかりました!」
そんなこんなで、俺は悪の道へと足を踏み入れたのだった。
「アレプト様、何を基準に彼を採用したのですか?」
甚が帰った後、オティスがアレプトに尋ねる。
「簡単よ、私の勘。彼がいればアイツに人の心を理解させれるってね」
「……あれが、そう簡単に人の心を理解できるでしょうか?私にはそう思いませんが」
オティスは言う。その通り、一班甚は何も持たない、いたって普通の善良な少年だった。
「だからよ。何も持っていない。だからこそ、足掻いた時になにかを残せる……そんな存在を探していたの。一班甚、あいつは何もないのが長所になる。そう、思ったの」
「そうですか、いえ、アレプト様の決めたことに異論はありません」
「そう、それでいいのよ。いずれわかるわ」
いつかを夢見て。そう信じながら。
そんなこんなで、今の超悪い子軍団があります。
悪の組織法、意外とよくできています。
ルールがあるからこそ、悪は成り立つのかもしれません。
まあ、受かったところで待遇は本編の通りですが。
応援(ブクマ・評価など)いただけますと、超悪い子軍団の活動資金になります。
次回もお楽しみに!




