15.悪の組織はままならない
丁京都フリーヶ丘。
住みたい街ランキング常連・スイーツの聖地として知られるこの街には──
正義と、悪が存在していた。
第一部、最終話です。
超悪い子軍団はどうなるのか。
その目でご覧ください。
「天使……セラっ!」
「決着をつけましょう、アレプト……いえ、あかり」
ホログラムのセラは微笑む。
「熊手神社、午前零時。そこで私とあなたの最終決戦を行いましょう」
そう言うとホログラムを投影していた機械は爆発した。
「どうするの、アレプト様」
「計算しなくてもわかります、百%罠ですよ!」
「……私はアレプト様の判断に従う」
「……行くわ。奴との決着はつけなきゃいけない。例え罠だったとしても。私は行くわ」
アレプトの目には硬い決意が宿っていた。
「ただ一つだけお願いしたいことがあるの。それは──」
午前零時。熊手神社。
アレプトは一人でその地に降り立つ。
「来ましたね、あかり」
「その名前で呼ばないで」
鋭い目でセラを睨む。
「一人で来てよかったんですか?私としてはありがたい話ですが……」
「いいのよ、一人で。私はあんたと違ってあいつらのことを信じているから。……それで、呼び出したからには理由があるんでしょう?」
一定の距離を保ったまま、セラへ問いかける。
「そうですねえ、まあ、見てもらった方が早いでしょう」
セラは地面へ手を向け、唱える。
「神の意も我が意のままに。……目覚めなさい、『素戔嗚尊』」
そうセラが言うと、地響きが鳴る。アレプトは咄嗟に近くの木へしがみつく。
その場には、十メートルをゆうに越す巨大なロボットがいた。
「これは『素戔嗚尊』、私が作り出した最終兵器です。悪の組織を殲滅するための、ね。でもね、パーツが一つ足りないんです」
「……そのパーツが私、ってことね」
「ご名答。流石我が妹です。今の素戔嗚尊には一つの命令しか与えてません。『天使あかりを捕まえ、完成せよ』と」
その言葉と共に素戔嗚尊は動き出す。
(今の素戔嗚尊は完成していない、ということは勝ち目は……ある……!)
そう確信するとアレプトは走り出し、わざと素戔嗚尊の前に出る。
素戔嗚尊は目論見通り、自身を捕まえる。
「聞き訳のいい妹は好きですよ」
セラはにこり、と微笑む。
アレプトには、一つだけ勝機があった。
(一か八かだけど、賭けるしかなさそうね……!)
そのまま素戔嗚尊に取り込まれる。
そして、そこにはメインコンソールがあった。
「私の勝ち、よ!」
素早い動作で服の中に隠し持っていたキーボードを接続する。そしてプログラムコードを全て白紙に上書きし、再起動をする。
「……素戔嗚尊、なにをしているのですか?」
素戔嗚尊から光が溢れ出る。
「ただ一つだけお願いしたいことがあるの。それは、フリーヶ丘の住民を全員避難させなさい」
「えっ……?!」
「僕たちが、ですか?」
「……なにか考えがあってのことだろう。急ぐぞ」
命令したのは、最初から自爆する気だったからだ。この邪悪な男と一緒に散る覚悟は、決めていた。
プログラムを書き換えていく。動力源にエネルギーを加入力するように、どんどん暴走させていく。
「この手のことならグシオンのほうが得意なんだけどね」
自身の計算が九十九%の確率で当たる男を、脳裏に浮かべる。
「それにブエルの愛嬌なら、フリーヶ丘の人たちの信頼は得れるはず」
最近入ってきた新人の笑顔を思い浮かべる。
「オティスなら、どんな時でも冷静に対応してくれるはず」
キャラ被りだけ嫌うが、それ以外は冷静な男を思いだす。
「まさか、あかり。私を巻き込んで自爆する気ですか?」
「その通りよ、バカ博士!……悪の組織はままならないのよ。思い通りになると思った?バカね、あんたの計画は──フリーヶ丘と共に吹き飛ぶわ」
最後のソースコードを入力する。
実行ボタンを押す。
次の瞬間。
巨大な爆発が起こり、フリーヶ丘一帯は、更地となった。
素戔嗚尊の残骸の中で気を失うアレプトを前に、急遽防護フィルターを張ったセラは、ボロボロになりながらも言う。
「……まさかここまで愚かだとは思っていませんでした。ああ、でも──」
雲ひとつない夜空を見上げ、セラは言う。
「悪の組織はままならないからこそ、面白い」
そしてそのままその場を立ち去っていく。
『フリーヶ丘 謎の爆発か。住民は全員無事』
翌朝のニュースはそれで埋め尽くされていた。
アレプトは爆発の中心にいたからか、激しい怪我を負っており、現在は回復ポッドに収容されている。
「……まさかこんなことになるなんて」
ブエルは呟く。
「……アレプト様は天使セラを倒すことに必死でしたからね、でもこれで少しは報われたのではないでしょうか」
グシオンは微笑みながらアレプトが収容されているポッドへ視線を向ける。そしてふと、落ちている金属片に気づき、目を見開く。そして無言でそれを拾い、元の位置へ戻る。
「それがアレプト様の意思というのであれば、私は尊重するだけだ」
崩壊したフリーヶ丘の元アジトでカップ麺を食べながら三人は言う。
「今は、アレプト様の回復を祈ろう」
三人はポッドへ視線を向ける。回復を祈って──
するとポッドの扉が勢いよく開かれる。
「ああ、やっぱりこれ嫌いだわ!窮屈なんだもの!」
「あ、アレプト様……?」
「お怪我はどうですか?!」
「まだ全身痛いわ。でもいいのよ。──あいつに勝った名誉の傷なんだから」
「……アレプト様、感謝いたします」
オティスが頭を下げる。
「いいのよ、私がしたくてしたことなんだから。私にもカップ麺ちょうだい」
「わかりました!」
そうして超悪い子軍団の日常は続いていく。
これからも、ずっと──
「あらあ、アレプトちゃんに遊んでもらおうと思ったけど、お取り込み中ねえ」
「そうだな、ブラン、今日は帰ろう」
「そうですわね、ノワールお姉様」
「フリーヶ丘で遊ぶのは」
「また今度ですわね。そう」
「「我らがNico×Jumeauxの遊び場は!」」
悪の組織は、ままならない。
だからこそ、面白い。
こうして超悪い子軍団は日常を取り戻した……?
不穏を残したまま、物語は第二部へと続きます。
また、次回から三話、閑話休題と称して番外編をお送りします。
次回もお楽しみに!




