12.夢見る乙女と夢小説
丁京都フリーヶ丘。
住みたい街ランキング常連・スイーツの聖地として知られるこの街には──
今日も恐ろしい(?)悪の組織が存在していた。
それと同時に、正義の乙女はシミュレーションをはじめていて……?!
ハマリエル回です。お気軽にお読みください。
「違う、これはいざという時の戦闘シュミレーションよ……!」
私、ハマリエルこと処能空は、机に向かって自分に言い聞かせる。
そう、これから書くのはシュミレーションなのだから──!
「……悪の組織か!」
巻き上がる爆風に、彼の長い黒髪が揺れる。
その爆風から現れたのは、それまた別の、黒い長髪を結い上げた男だった。
「……貴様、私と同じキャラをしているな?」
「一体どういうことだ?」
「私とキャラ被りをしている人間はいらない。ここで死ぬがいい──」
「やめなさい!」
急遽、空から翼を生やした少女が現れる。
「……君は」
「……私、処能だよ、等館くん。大丈夫。等館くんは私が守るから!」
そうして手を前にやり、空気を操る。そして出来上がった空気弾を、オティスへと投げつける。
当然、オティスもそのまま受ける真似などせず、空気弾を切る。
「……負けないわよ、等館くんは私が守るんだから……絶対!」
「処能……」
「でへへ……」
おっと危ない。顔が完全にニヤけてしまっていた。こうなれば等館くんも私に釘付けに──!
「……いや、でもこんな可能性も、あるのでは?」
「その男を守りたいのか」
「そうよ、なにか文句ある?」
オティスは刀を下げ、ハマリエルへと近づく。
「その男と同じ属性でいいのなら、私でもいいのではないか?」
「なっ……!」
「そうよ、私ってばモテるほうだし、案外あいつが私に突っかかってくるのも私のことが好きだからじゃないの?」
そうよ、そうに決まってる!
……でもこうなったらどうしよう。私は……やっぱり等館くんが好きだし……。
いや、これはシュミレーションなのだ。あり得る事態は全て書くべきだろう。
「──処能に触れるな」
「……等館くん?!」
近づいたオティスに、等館が立ちはだかる。ハマリエルは困惑する。
当然だ。一般市民である等館が、悪の組織へと立ちはだかっているのだから。
「だ、駄目だよ等館くん!」
「「ここは私に任せて下がって……!」「いや、処能は俺の守るべき女性だ、悪の組織になぞ渡すものか……!」「貴様……!」」
声に出して気づく。……私、等館くんが自分のことをなんて呼んでるのか知らない。
「普通に考えて俺、だよね?いや、私か僕も……うーん、等館くんの見た目で僕は……アリかも。」
キーボードを叩きながら思考を整理する。……しかし一人称私の等館くんもありでは?オティスとキャラ被りもするし。
「処能は私の守るべき女性だ、悪の組織になぞ渡すものか!」
そう言いながら等館くんはハマリエルの肩を抱く。
「……等館くん!」
「こんな場で言うのもなんだが、処能、私はお前が気になっていた……。まずは友達から、どうだ?」
「ありがとう、私、嬉しい……!」
ハマリエルが一筋の涙を流す。それを見たオティスは激昂する。
「貴様!その女を泣かすのは私だ!……ただでさえ貴様はキャラ被りしているというのに……忌々しい」
「……等館くん、私は大丈夫だよ。……オティス!私と等館くんとの仲は邪魔させないんだから!」
「オティス!」
少女の声が響く。彼らのリーダー、アレプトのものだ。
「ブエルとグシオンがやられたわ、一旦引くわよ」
「しかし……!」
「いい、これは命令よ!……その女の処遇は世界征服してからよ」
「……承知」
刀を鞘に納め、オティスは立ち去る寸前にハマリエルに近づく。
「次は必ず私のものにしてやる……」
そう囁くと、その場から立ち去った。
「よし、これでシュミレーション終了!モテる女って辛いわね!でも私は等館くん一筋だもん!えへへ……」
そう言いながらベッドに倒れ込む。明日、アイちゃんに提出しよう。そうして意識を手放した。
翌日。
「はい、レポートを受理しました!軽く拝見しましたが、これは所謂夢小説、といったものですね!」
アイちゃんが答える。
「夢小説……?」
「はい、架空のキャラと自分の恋愛──いえ、恋愛とは限らないんですけれど、「こういう関係になりたーい!」っていう欲望の塊です!ハマリエルさんの欲望度、グッドです!」
「え?あの、そういう意図で書いたわけじゃ……」
「謙遜しなくていいんですよ!これ、ハマリエルさんのところを名前変換できるようにしたらオティス夢として大ヒット間違いなしです!」
「ちょっ、まっ」
「ではデータベースに〜、オン!これで日本全国の正義の味方に共有されました!」
終わった──。ハマリエルは絶望から床に膝をつく。
後日。ハマリエルに悪の組織と自分との恋愛小説を書いて欲しい、という依頼が山ほど来たのはまた別の話。
才能が評価されてよかったですね。
欲望度、グッドです。
彼女はこれから先どうしていくんでしょうか。
次回もお楽しみに!




