第3話
はじめまして、作者の”のすけ”です。
この物語は、中学生たちが異世界に転移し、成長していく群像ファンタジーです。
少年少女たちの葛藤・仲間との絆・壮大なバトルといった熱い展開が好きな方に届けば嬉しいです。
転移、バトル、伏線、そして最後には希望を込めた結末を目指しています。
感想・評価など、お気軽にお寄せください。
よろしくお願いします!
朝の光が、石造りの街並みに差し込んでいた。
町の名前はセラフィル。
半円状に広がるような構造をしており、外縁は巨大な壁に囲まれている。外敵から町を守るためのもので、壁の上には常に数人の衛兵が見張りについていた。
道は整っていて石畳が敷かれ、中央には市場や鐘塔、広場が広がっている。小さな噴水が朝日を反射し、鳥が軽やかに飛び交っていた。建物は木と石を組み合わせた二階建てが多く、屋根は赤茶色の瓦。遠くから見ると、町全体が温かなオレンジに染まっているようだった。
だが、その美しい町並みの中を歩く“東の来訪者たち”──西ヶ丘中学校の生徒たちは、どこか場違いに見えた。
町の人々は、生徒たちに距離を置いている。視線は冷たく、好奇心というよりは警戒の混じった恐れ。
「……なんか、見られてるな」
たけるがぼそりと呟く。
「無理もないよ。見たことのない服、異様な数……」
こはるが言いながら、腕に鳥肌が立つのを感じていた。
この世界では、東の血を持つ者──東洋人は“異形”と呼ばれていた。
遠い昔、この世界に災厄をもたらしたとされる「蒼眼の悪魔」が、東から現れたという伝承が残っている。肌が薄く、髪と目が黒い者は忌避される傾向にある。
「悪魔の血が流れている」
「災厄を連れてくる」
そう言われて、かつての東洋人が迫害を受けた記録もあると、ローリは話していた。
「でもさ、それって本当にただの偏見じゃない?」
はるとが言った。
「うん。だって、こっちの人たちだって普通の人間に見えるし、僕らだって何もしてないじゃん」
ゆいが、ほのかに同意を求めるように言う。
「……でも、だからこそ気をつけないと。ここじゃ私たちは“人間じゃない”かもしれないんだよ」
こはるのその一言に、全員が黙った。
町の中ではローリの取り計らいにより、公会堂を一時的な拠点とすることが認められていた。
食糧や水の配給も受けられるが、やはり“奇妙な存在”として扱われているため、町の中心部にはあまり出歩かないよう、制限がかけられている。
「これって……つまり、監視されてるってこと?」
しずくが少しだけ笑って言った。冗談のような本音だった。
**
だが、日常は少しずつ形を取りはじめていた。
たけるとまことが班分けと日直制を提案し、しずくがまとめ役に立ち回り、ゆいとほのかは料理や水の運搬を助けるようになった。えいじやりくは時にふざけながらも、物資管理や伝達係を担っていた。
「ななせは絵がうまいから、地図を描いてくれてるんだってさ」
「すげぇな、いつの間に!」
「へぇ~、これが広場か~。あっ、このとがった屋根の建物ってあれだね」
草の根のように、小さな“暮らし”が生まれていく。
しかし、不安は消えない。
なぜ、自分たちはこの世界に呼ばれたのか。
この世界は何なのか。
のぞむは、どこにいるのか。
夜、公会堂の屋上に立ったこはるは、遠くの壁を見た。
その先には、外の世界がある。
まだ見ぬ敵がいるかもしれない。
その向こうで、のぞむは……。
「……私たちは、帰れるのかな」
風が静かに、彼女の髪を揺らしていた。