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神の選定  作者: のすけ
3/4

第3話

はじめまして、作者の”のすけ”です。

この物語は、中学生たちが異世界に転移し、成長していく群像ファンタジーです。

少年少女たちの葛藤・仲間との絆・壮大なバトルといった熱い展開が好きな方に届けば嬉しいです。

転移、バトル、伏線、そして最後には希望を込めた結末を目指しています。

感想・評価など、お気軽にお寄せください。

よろしくお願いします!

朝の光が、石造りの街並みに差し込んでいた。


町の名前はセラフィル。

半円状に広がるような構造をしており、外縁は巨大な壁に囲まれている。外敵から町を守るためのもので、壁の上には常に数人の衛兵が見張りについていた。


道は整っていて石畳が敷かれ、中央には市場や鐘塔、広場が広がっている。小さな噴水が朝日を反射し、鳥が軽やかに飛び交っていた。建物は木と石を組み合わせた二階建てが多く、屋根は赤茶色の瓦。遠くから見ると、町全体が温かなオレンジに染まっているようだった。


だが、その美しい町並みの中を歩く“東の来訪者たち”──西ヶ丘中学校の生徒たちは、どこか場違いに見えた。


町の人々は、生徒たちに距離を置いている。視線は冷たく、好奇心というよりは警戒の混じった恐れ。


「……なんか、見られてるな」

たけるがぼそりと呟く。


「無理もないよ。見たことのない服、異様な数……」

こはるが言いながら、腕に鳥肌が立つのを感じていた。



この世界では、東の血を持つ者──東洋人は“異形”と呼ばれていた。

遠い昔、この世界に災厄をもたらしたとされる「蒼眼の悪魔」が、東から現れたという伝承が残っている。肌が薄く、髪と目が黒い者は忌避される傾向にある。


「悪魔の血が流れている」

「災厄を連れてくる」


そう言われて、かつての東洋人が迫害を受けた記録もあると、ローリは話していた。



「でもさ、それって本当にただの偏見じゃない?」

はるとが言った。


「うん。だって、こっちの人たちだって普通の人間に見えるし、僕らだって何もしてないじゃん」

ゆいが、ほのかに同意を求めるように言う。


「……でも、だからこそ気をつけないと。ここじゃ私たちは“人間じゃない”かもしれないんだよ」

こはるのその一言に、全員が黙った。



町の中ではローリの取り計らいにより、公会堂を一時的な拠点とすることが認められていた。

食糧や水の配給も受けられるが、やはり“奇妙な存在”として扱われているため、町の中心部にはあまり出歩かないよう、制限がかけられている。


「これって……つまり、監視されてるってこと?」

しずくが少しだけ笑って言った。冗談のような本音だった。


**


だが、日常は少しずつ形を取りはじめていた。


たけるとまことが班分けと日直制を提案し、しずくがまとめ役に立ち回り、ゆいとほのかは料理や水の運搬を助けるようになった。えいじやりくは時にふざけながらも、物資管理や伝達係を担っていた。


「ななせは絵がうまいから、地図を描いてくれてるんだってさ」

「すげぇな、いつの間に!」

「へぇ~、これが広場か~。あっ、このとがった屋根の建物ってあれだね」


草の根のように、小さな“暮らし”が生まれていく。




しかし、不安は消えない。


なぜ、自分たちはこの世界に呼ばれたのか。

この世界は何なのか。

のぞむは、どこにいるのか。


夜、公会堂の屋上に立ったこはるは、遠くの壁を見た。


その先には、外の世界がある。

まだ見ぬ敵がいるかもしれない。

その向こうで、のぞむは……。


「……私たちは、帰れるのかな」


風が静かに、彼女の髪を揺らしていた。

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