3︰沈黙を破る謝罪と許し
ギルドに戻り、ルナと思いもしない再会をした僕は非常に困っていた。
なんで困っているかというと、ずっとルナがボロボロと涙をこぼし泣いているからだ。
ひとまずルナを連れて二階の個室へ逃げ込んだ僕だけど、やっぱり困っていた。
「…………」
「…………」
『…………』
向かい合うテーブルで、椅子に腰がけた僕とラディッシュはルナを静かに見つめていた。
ルナはというと、会話が切り出せないのかずっと黙っている。
そのためか、すっごく気まずい沈黙が個室を支配していた。
あれ? なんでこんな状態になっているんだ?
確か、僕が泣かせたような構図になっていたけどそのせいかな?
いや、でもひどい目に合ったの僕だし。
なら気まずさなんて普通感じないよね?
「えっ、えっと……」
「…………」
空気が重い!
なんだこの重さは!
え、何?
僕、何か悪いことした?
いやいや、大変な思いをしたの僕だよ!
だからこんな思いをするのは違うと思うんだけど!
そんなことを考えているとラディッシュが小さな声で訊ねてきた。
『なぁ、レオス。お前、何かやったのか?』
「何もしてない! むしろやられたほうなんだけど!」
『ふーん。まあ、ここは試しに謝ってみたらどうだ?』
「え? なんで?」
『このまま沈黙も気まずいだろ? キッカケを作るためにもってやつだよ』
キッカケって……そのために謝るのもおかしい気がするんだけど。
でもまあ、このまま黙ってても仕方ないか。
「ルナ」
僕は俯いているルナを呼んだ。
するとルナはゆっくりと顔を上げ、僕を見つめる。
その目はどこか怯えているようにも見え、不安が色濃く支配していた。
そんなルナに僕は、謝罪の言葉を口にした。
「ごめん! 僕が弱かったから、ルナに迷惑をかけちゃったよ。もっと強ければ、こんなことにならなかったよ」
「そんなこと――」
「いや、僕が弱かったことには違いない。だから迷惑をかけちゃったよ。僕が強かったらこんなことには――」
「そんなことないから!」
僕が謝ると、ルナは慌てて立ち上がった。
確かにルナはそんなこと思っていないかもしれない。
でも、これは僕の本心だ。
だから僕は、ルナに頭を下げる。
「本当にごめん。僕、強くなるよ」
「……私が謝らなきゃいけないことよ」
僕の謝罪を受け、ルナはようやく言葉を発した。
そこからはルナの謝罪が始まる。
「ホントは、私が悪いのよ。あの時、ゼルコバ達を止められたの私だけだったのに。言うことなんて聞かないであなたを助けたらよかった。あんな奴に脅されても、そうしたらよかった」
ルナは僕を庇えなかったことに大きな罪悪感を抱いているみたいだ。
涙を流しながら、ただただ贖罪の言葉を吐き出す。
そして、ちょっと落ち着いてきたのかルナは僕を見た。
「生きててくれてよかった。ホントに、ホントにホントによかった」
ルナの気持ちが痛いほど伝わってくる。
たぶん、この言葉はルナの本心だろう。
だから僕がルナを恨むのは、違うと思った。
「ありがとう、ルナ。とても嬉しいよ」
「私、なんでもするから。だから――」
「あははっ。気持ちだけで十分だよ」
僕は笑う。
そんな僕を見てか、ルナは安心したかのように顔を綻ばせた。
「ありがとう、レオス」
ルナの謝罪を受け、僕は彼女を許すことを決める。
そんな僕の選択を見守っていたラディッシュはうんうんと満足そうに頷いていた。
ひとまずこれで一段落かな。
ゼルコバ達が何をしているのか気になるけど、あいつらのことは置いておこう。
僕はそう思い、落ち着いたルナとの会話を続けるのだった。




