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2:運命的な出会いⅠ

 追放宣言され、ボコボコにされ、ダンジョンに置き去りにされた僕は生還するための方法を探していた。


 だけど、さっきアイテムを全部取られたのもあってか頼りになるものがなかった。


 いや、一応愛用している短剣が残ってたな。

 頼りない武器だけど、ないよりはマシだね。


 でも、万が一モンスターと出くわしたらどうしよう。

 僕の魔力の影響で出てくるのは強いモンスターだけだから余計に困るよ。


 もしかしたら本当に食べられちゃうかもしれない。

 そんなことになったら、ああ想像しただけでも最悪だ。


「いや、悪いことを考えちゃいけない」


 とにかく脱出しなきゃ。


 悪いことを考えている暇はないし、外に出なきゃ話にならない。

 運だろうがなんだろうが、利用できるものは利用して戻らなきゃ。


 僕はそう考え、起き上がる。

 身体のあちこち(特にお腹)が痛むが、それでも無理矢理立ち上がった。


 ふらつきながら、何か使えそうなものはないか探してみる。


 でも、ゼルコバ達があらかた回収したみたいでたいしたものはなかった。

 目に入るのは茂る緑と空っぽになった宝箱、石ころに正体不明な草花といったものだ。


 それでも僕は探してみる。


 何かないか、なんでもいいからないかって。

 そんな努力が実ったのか、一つの不思議な石を見つけた。


「これは、なんだ?」


 見たことのない文字が刻まれた石だった。

 なんて読むのかわからない。

 なんとなく視線を地面に向けると、似たような石が三つ転がっている。


 僕は何気なく近くにあった石を手にとってみると、今度は違う文字が刻まれていた。


「なんだこれ?」


 僕が頭を傾げていると、唐突に地面が揺れ始める。

 なんだ、と思っていると今度は地面が割れた。


 そこから出てきたのは、一体の赤いゴーレムだ。


「オォオオオオオォォォォォッッッ!!!!!」


 その赤いゴーレムは雄叫びを上げる。


 確かこいつは、冒険者達の返り血を浴びて赤く染まったと言われる【ブラッディゴーレム】だ。

 上級冒険者でも苦戦するモンスターで、精霊がおらず戦う力もない僕では当然相手にならない存在。


 なんでそんなモンスターがここにいるんだよ!?


『封印を解除した者を発見。直ちに排除し、封印を元に戻します』


 わっ、ゴーレムが喋った。

 もしかして話が通じるのか?


「え、えっと、元に戻すから見逃して欲しいなぁー。なんて」

『封印の石を発見。これより侵入者の排除を行います』

「ちょ、ちょっと待ってよ! これを戻すから!」


 僕の言葉を聞かず、ブラッディゴーレムは拳を固く握った。

 途端に転がっていた石ころが集まり、拳が三倍も大きくなる。


 そんな大きな拳がものすごい勢いで突き出された。


 容赦ない一撃が僕に迫る。

 精霊のいない僕では防ぐ術はなく、このまま死ぬ運命だ。


 本来ならば――


『おいおい、それはないだろガラクタ』


 唐突にブラッディゴーレムの右腕がえぐり取られたかのように消える。

 何が起きたのかわからず、僕が呆然としているとまたあの声が放たれた。


『そいつはオイラの恩人だ。いきなり殺すことはないだろ?』


 ブラッディゴーレムの後ろに僕は目を向ける。


 そこには銀色に輝くネコのような姿をした精霊がいた。

 モコモコとした尻尾を持ち、かわいらしい丸い目を持つ精霊は僕にこんなことを言い放つ。


『お前だな、オイラの封印を解いてくれたのは。お礼にこのガラクタを倒してやるよッ』


 そういって銀色の精霊はブラッディゴーレムと戦い始める。


『精霊【悪食のラディッシュ】を確認しました。これより取り押さえにかかります』


 ブラッディゴーレムはそう宣言し、消滅した腕を地面につけると途端に腕が復活した。


 精霊はそんなことなどにせず、ゴーレムとぶつかり合う。

 長引くかと思われた戦闘だが、すぐに決着はついた。


『うわっ』


 銀色の精霊が簡単に殴り飛ばされ、僕の近くに転がってくる。

 よく聞くと、ぐぅーっというお腹の虫が鳴いている音が聞こえた。


『くそー、腹が減って力が出ない……』


 そういえば精霊って魔力を食べてお腹を満たす存在だったな。

 この精霊はずっと封印されてたのか、必要な魔力を得ていなかったかもしれない。

 なら、魔力を与えればこのブラッディゴーレムを倒せるかも。


 だけど、この精霊は僕と契約してくれるのか?

 また嫌われちゃうんじゃないか?


 いや、嫌われてもいい。

 今はこの窮地をどうにかするのが最優先だ。


「ねえ、精霊! 僕と契約してくれないかっ?」

『契約? あー、なるほど。お前【精霊なし(ノーティ)】か。珍しいな』

「そんなこといいから契約してくれ! そうすれば――」


『いいけど、お前こそいいのか? ()()()()()()()()()()()()()()()()だぞ。()()()()()()()()()()()()()()()だ。それにオイラは封印されていた精霊だぞ? そのことを考えないのか?』


「そんなことわかってる! とにかく契約してくれ!」


 僕達が生き残るためには、契約を交わすしかない。


 僕は覚悟を決め、銀色の精霊に伝える。

 そんな僕の覚悟を知ったのか、銀色の精霊は嬉しそうに笑った。


『わかった。じゃあ、契約しよう。お前の魔力、たっぷり味わってやる。あとオイラの名前はラディッシュだ。今度からそう呼べ!』


 ラディッシュがそう叫ぶと、僕の胸に飛びついた。


 直後、鼓動が激しくなり胸が熱くなる。

 目を向けるとそこには、不思議な模様の紋章が胸に刻まれていた。


『辛ッ! なんだこの辛さは!』


 ラディッシュがそう叫ぶ。


 え? 辛いって何が辛いんだ?

 そう思っているとラディッシュがこう告げた。


『だけど癖になる激辛だ。お前の魔力、激辛だけど最高のスパイスだな!』


 何がなんだかわからないが、ラディッシュは喜んでいる様子だった。

 何はともあれ、僕と契約してくれたラディッシュと共にブラッディゴーレムへ挑む。


 生き延びるために精霊と初めて契約を交わし、僕は初めての戦闘に臨むのだった。

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