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妹は魔法少女になりましたか?  作者: 吉本優
6月

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第17話 文化祭ってハプニングの予感⑦






 元気な声と同時に、ふわりと白いフリルが視界に飛び込んできた。


「……え?」


 振り向いた先に立っていたのは、可愛らしいメイド服に身を包んだ少女――佐々木星菜だった。

 紺を基調にしたクラシカルなデザインに、藍色のツインテール。どう見ても完成度が高い。


「星菜ちゃん……?」


「うんっ♪ 本日は――」


 くるりと一回転。


「中等部アイドル系美少女メイド、佐々木星菜でーすっ!」


「……いや、自分で美少女とか言うか?」


 思わずツッコミを入れるが、星菜は意に介した様子もなく、満面の営業スマイルを浮かべていた。


「月菜ちゃん、遊びに来てくれるよね? 今なら焼き立てクッキーとドリンク、サービス料金にしちゃうよ♪」


「えっ、いいの?」


「もちろん! 知り合い特典だから♪」


 月菜の目が、きらきらと輝く。


「お兄ちゃん、行こう!」


「いや、まだ何も――」


「はい決定ー!」


 星菜は有無を言わさず、月菜と俺の手を取った。


「ほらほら、早くしないと席埋まっちゃうから!」


「ちょ、引っ張るなって!」


 ずるずると引きずられながら、俺は内心で溜息をつく。

 これはもう、抵抗するだけ無駄だな。


 ――というか、冥夜はあの格好を見て何も言わないのか?


 ミニスカメイド服姿。

 もし月菜があんな格好をしていたら、俺は確実に落ち着かなくなる。


 完璧な笑顔で先を行く星菜の背中を見つめながら、小さく息を吐いた。


 どうやら、次の目的地は決まってしまったらしい。




―――――




『『『お帰りなさいませ、ご主人様♪』』』


 クラスに入った瞬間、メイド服姿の女子たちの声が一斉に響いた。

 なるほど、男子は裏方担当らしい。


「お帰りなさいませ♪ ご注文はお決まりですか?」


 席に着くと、星菜がメニュー表を差し出してくる。


「はぇ……本当に『お帰りなさいませ』って言うんだな」


 正直、これだけでお腹いっぱいなんだが。


「ご主人様ぁ、チェキも一緒に撮りませんかぁ?」


 猫撫で声で、星菜がぐっと顔を近づけてくる。


「お兄ちゃん、鼻の下、伸びてるよ」


 月菜の視線が、やけに鋭い。


「……伸びてねぇ。それに、デレデレしてたら冥夜が黙ってないだろ」


「もぅ、ご主人様ってば♪ そんな人のこと、気にしなくていいですよー」


 星菜はさらに距離を詰めてきた。


「うふっ♪」


「…………」


 分かる。

 今、月菜は確実に怒っている。


「え、えーと……じゃあ俺は、さっき言ってた手作りクッキーとコーヒーで」


「……私もクッキーとオレンジジュース」


「ご主人様、お砂糖とミルクはお入れしますか?」


「いや、ブラックで」


「きゅーん♪ ご主人様、大人ですねぇ」


 余計なことは言わないでくれ。後が怖い。


「せ、星菜ちゃん……」


「ふふっ。タクロー先輩がカッコいいから、ちょっとからかっただけだよ♪」


 星菜はウィンクを一つ残し、去っていった。


「お兄ちゃん……」


「は、はい」


「お兄ちゃんは……年下メイドが好みなの?」


「えぇ……?」


 別に好みってわけじゃない。

 ……嫌いでもないけど。


「……私に言ってくれたら、いつでも着てあげるのに……」


「え? 何か言ったか?」


「な、何でもない! とにかく、鼻の下伸ばしちゃダメだからね!」


「へーい」


「お待たせしました♪」


 注文した品を運びながら、星菜が戻ってくる。


「それじゃあ、美味しくなる魔法をかけますね♪」


 星菜は手でハートを作り――


「美味しくなーれ、萌え萌えキュン♪」


「……それ、やってて恥ずかしくないのか?」


 見てるこっちが恥ずかしい。


「きゃっ、そんなことないですよ〜?」


「…………」


 わぁ、目の前の月菜さん、すごく怖い。


「わ、私だってできるもん!」


 月菜は立ち上がり、俺に向かって――


「お、美味しくなーれ……萌え萌えキュン♪」


「お、おぅ……」


 迫真の月菜(現役魔法少女)による萌え萌えキュンが放たれた。


「くくくっ……月菜ちゃん、この魔法は人に向けるんじゃなくて、こっちにやるんだよ」


「////っっっ!!」


 星菜の笑いを堪えた声に、月菜の顔は一気に真っ赤になる。


「月菜ちゃんがお兄ちゃん大好きなのは知ってたけど……まさか本人にやるなんてね。じゃあ、あとは兄妹水入らずで楽しんでね♪」


 笑いながら、星菜はその場を離れていった。


「……月菜さん?」


「――今は、何も言わないで」


 月菜は静かにクッキーをかじる。


「恥ずかしいなら、やらなきゃよかったのに――って、痛っ」


 後頭部に何かが当たった。

 丸められた紙だ。


「何だよ……」


 広げてみると、そこには一言。


【憎しみで○すぞ?】


 ……あー。


 周囲から向けられる視線が、殺気じみている理由がよく分かる。


 三菜姫の二人と一緒にいれば、そりゃこうなるか。


 ――さっさと食べて、出ていこう




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