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妹は魔法少女になりましたか?  作者: 吉本優
6月

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第17話 文化祭ってハプニングの予感⑤






「では、私は日文研の方に顔を出して来ますので」


 そう言って、陽菜ちゃんは軽く会釈をし、にこやかにその場を後にした。


 ミアの応急処置のおかげで、俺の足はなんとか歩ける程度には回復している。正直、完全に痛みが消えたわけじゃないが、紫苑祭を棒に振るほどじゃない。


「ほんとに大丈夫? まだ痛むなら、無理しなくていいんだよ?」


 月菜は少し距離を詰め、覗き込むようにして俺の顔を見る。その表情は、さっきまでのお化け屋敷での慌てぶりとは打って変わって、真剣そのものだった。


「大丈夫だって。せっかくの紫苑祭を、一日丸ごと潰す方がもったいない」


「……じゃあ、約束通り。一緒に回ろ?」


 控えめに差し出されたその言葉に、俺は軽く肩をすくめる。


「はいはい。エスコートは期待するなよ?」


 そうして俺たちは、人で溢れかえる校内へと足を踏み出した。


 


――――― 


 


「わ……すご……」


 月菜が小さく声を漏らす。


 廊下の天井には色とりどりの装飾が吊るされ、壁際には各クラスの看板やポスターが所狭しと並んでいる。あちこちから聞こえてくる呼び込みの声に、焼きそばやクレープ、甘い菓子の匂いが混じり合い、まさに“文化祭”そのものだ。


「人、多いな……」


「うん。でも、楽しい」


 そう言って月菜は、普段より少しだけはしゃいだ様子で周囲を見渡している。


「まず、どこ行く?」


「えっとね……あ、あそこ!」


 月菜が指差した先には、二年生のクラスがやっているクレープ屋があった。手書きのポップには、やたらと力の入ったイラストと「大人気!」の文字。


「よし、分かった。並ぶか」


「うん!」


 列に並び、順番が来る。


『いらっしゃい! 何にします?』


「俺はチョコバナナ。月菜は?」


「じゃあ、私は……イチゴカスタード」


『合計で1200円になります』


「これで丁度で」


 財布を出すと、月菜が慌てて手を伸ばす。


「お兄ちゃん、私も払うよ?」


「いいって。俺が払う」


 そのために、こっそりへそくりを用意してきたんだ。


「……お兄ちゃん、ありがと」


『はい、お待ちどうさま。お熱い二人のために、ちょっとサービスしといたからね!』


「え、えぇっ?!」


「どもっす」


 ……お熱い関係の兄妹、とは一体なんなんだろうな。


「そこに飲食スペースあるし、そこで食べよう」


「う、うん。……わぁ、美味しい!」


 出来立てのクレープを両手で持ち、月菜は目を輝かせている。


「そんなに喜ぶほどか?」


「だって、外で食べるクレープって特別じゃない? ……ねえ、お兄ちゃんも一口食べる?」


 そう言って、月菜は自分のクレープを差し出してくる。


「ん? いいのか」


 少し顔を近づけ、一口かじる。


「……ああ、普通にうまいな」


「でしょ?」


 満足そうに笑う月菜を見て、今度は俺の方がクレープを差し出した。


 正直、味は特別じゃない。だが、この賑やかな空気の中で食べると、不思議と美味く感じる。


「じゃあ、こっちも食べてみるか」


「い、いいの?」


 月菜はほんのり顔を赤らめながらも、少し遠慮がちに一口。


「……あ、こっちも美味しい」


「だろ?」


 そんなやり取りをしていると、近くのベンチに座っていた生徒たちの視線が、妙にこちらに集まっているのに気づく。


「……なあ、月菜」


「なに?」


「周りの目が、やたら温かいんだけど」


「え?」


 きょろきょろと周囲を見回した月菜は、すぐに状況を察したらしく、さらに顔を赤らめた。


「……あ」


「お熱い二人、ってこういうことか」


「わ、私たち……そんな風に見られてるのかな?」


 慌てる月菜を見て、思わず笑ってしまう。


「微笑ましい兄妹、って感じだろ」


 そう言いながら、残りのクレープを一気に食べ切った。


「むぅ……」


「次、どこ行く?」


「えっと……あ、占いのところ! オカ研がやってるらしいよ」


「……嫌な予感しかしないな」


「大丈夫大丈夫。ほら、行こ!」


 そう言って、月菜は俺の袖を軽く引いた。




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