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妹は魔法少女になりましたか?  作者: 吉本優
6月

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第17話 文化祭ってハプニングの予感④






―――――





「ほんっっっっとうにごめんなさい!!」


 月菜の強烈なふみつけにより、俺が負傷。

 一旦休憩を挟むという事でお化け屋敷の入り口には【一時休憩中】の看板がぶら下がっている。


「いいよ……いずれこうなるかなと予想していたしな」


 あんな暗闇でいきなり足を掴まれたら、そりゃ踏みつけたくもなるよな。


「ぎゃはははぁっ!! タクロー、マジでうけるぞ!!」


 その隣では大爆笑のショージがいた。


「あんたのせいでタクローがこんな目にあったんだから、少しは反省しなさいよ」


 そして、血まみれナースのミアが俺の手当てをしてくれていた。


「タクロー、めんご!」


「よし、次からはお前が俺の代わりをやれ。踏まれるのはすきだろ?」


「そりゃ踏まれるのはご褒美だけど、女の子限定だぞ?」


「そうね。ショージがやりなさい」


 ミアがにっこりと笑いながら、きっぱりと言い切った。


「え、ちょ、なんで俺!?」


「あんたも男なら言葉よりも行動で示しなさい」


「いやいや、さっきの月菜ちゃんの反応はお化け屋敷としては満点だろ!?」


「その結果、タクローは踏まれてるんだけど?」


 ミアの冷たい視線に、ショージは一瞬だけ目を逸らした。


「……まぁ、それは不可抗力ってやつで」


「不可抗力で済まされたら、俺の顔と体は今頃もっと平和だった」


 幸い、骨に異常はないっぽい。


「本当にごめんね……」


 月菜は深々と頭を下げたまま、顔を上げようとしない。


「ほらほら、もういいって。怪我も軽いし、踏まれたのは……まぁ、こっちが悪い」


「でも……」


「それに」


 俺はわざと軽い調子で続けた。


「月菜があそこまでビビるって分かってるなら、陽菜ちゃんにするべきだったかな?」


「ちょ、タクローさん?」


 陽菜が少し困ったように眉を寄せる。


「……あの時、止めきれなくてすみませんでした」


「いやいや、あれは無理だろ。あの状態の月菜を止めるのは、熊を素手で制圧するのと同じだ」


「熊扱い!?」


 月菜が顔を上げ、むっとした表情になる。


「……ありがとう。お兄ちゃん。でも、陽菜の足を掴むのはダメ。掴むなら私のにして」


 小さくそう言われて、思わず視線を逸らした。


「……はいはい、妹ラブコメよろしくですなぁ」


 そんな空気をぶち壊すように、ショージが手を叩く。


「よーし! じゃあタクローはしばらく休憩中ってことで、その役は俺が引き受けようじゃねぇか!」


「本当に大丈夫なのか?」


 お前がやったら女性から訴えられそうな気がするぞ。


「任せろって! 足を掴むだけだから掴むだけ」


 嫌な予感しかしない。


「……いや、やっぱやめ――」


「よし、再開しまーす!」


 ショージは俺の制止を聞かず、勝手に入口の【一時休憩中】の札を裏返した。


「おい」


「大丈夫大丈夫。警察沙汰にはしねーよ」


 それは当たり前の事だろ。


「はぁ、私がやりなさいと言ってなんだけど、ほどほどにしなさいよね」


 イキイキとするショージと呆れた感じのミアが持ち場に戻っていった。


「さて、もう十分楽しんだし……」


「楽しかった、のかな……?」


 二人の温度差がひどい。


 俺は壁にもたれながら、しばし様子を見ることにした。


 ……その時だった。


 ふと、視界の端に誰かがいるのが見えた。


 入口の影。

 次の客――のはずだが、なぜか列に並んでいない。


 さっきの、お化け屋敷の中で会った少年であった。


 無表情で、こちらを見ている。

 騒がしいはずの教室前で、その子の周囲だけが妙に静かだった。


 ……気のせい、だよな


 俺が瞬きをした瞬間、少年の姿は人混みに紛れて消えていた。


「お兄ちゃん? どうかした?」


「いや……なんでもない」


 そう答えながらも、胸の奥に小さな引っかかりが残る。


 文化祭。

 賑やかで、楽しくて、非日常な一日。


 ――なのに。


「まぁ、考えすぎか」


 俺はそう呟き、再びお化け屋敷の方へ視線を戻す。


 中から――


『うわあああああっ!!』


「ちょっ!!! 男に踏まれたくねぇーよ!!」


 ショージの声が響いた。


「……あいつ、ちゃんとやってるみたいだな」


 




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