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妹は魔法少女になりましたか?  作者: 吉本優
6月

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第17話 文化祭ってハプニングの予感







「お兄ちゃん、早く早く!! 学校に行くよ!!」


 玄関先で月菜が元気よく叫ぶ。

 いつもは登校準備にやたらと時間がかかるくせに、今日はどういうわけか異様に早い。


 そう――今日は学園祭当日。

 紫苑学園最大のイベント、紫苑祭の日なのである。


「おいおい、そんなに早く準備できるなら、普段からそうしてくれよ」


「だって今日は学園祭……紫苑祭当日だよ? それに、準備だってあるでしょ」


「でも、月菜のクラスの発表は午後からだろ? そんなにやることあるのか?」


「セリフの打ち合わせとか、色々あるんだよ。それに……」


 月菜は一度言葉を切り、少し照れたように笑った。


「お兄ちゃんと、色々見て回りたいしね!」


「今さらだけどさ。兄と文化祭を回るのって、恥ずかしくないのか?」


 普通なら友達や恋人同士で回るものだろうに。


「いいの! 私はお兄ちゃんと一緒がいいの!」


「はいはい。分かったよ。とりあえず、うちのお化け屋敷が落ち着いてからな」


「うん!」


 こうして、俺たちは家を出た。





―――――






 通学路の空気は、いつもと少し違っていた。

 人通りが明らかに多く、制服姿に混じって私服の学生や、保護者らしき大人の姿も目に入る。


「わぁ……もう賑やかだね」


 月菜は落ち着きなく周囲を見回している。


「まだ校門にも着いてないんだけどな」


 校舎が見えてくると、その理由はすぐに分かった。

 正門には大きな横断幕が掲げられている。


『祝・紫苑祭』


 風に揺れるその文字と、校内から漏れ聞こえてくる音楽やアナウンスが、今日は特別な日だと嫌でも主張していた。


「……相変わらず、紫苑祭の盛り上がりは凄いな」


 中等部の頃からこの空気を味わってきたが、私立校だからなのか、紫苑学園の文化祭は規模も熱量も段違いだ。


「ふふーん。去年まではお母さんと見て回るだけだったけど、今年はお兄ちゃんと同じ立場で楽しめるんだなぁ」


「そうか? 俺はあんまり良い思い出がないけどな」


 去年の紫苑祭では、オカ研が色々とやらかした。

 主にショージとユウゲンのせいで。


 その結果、今年のオカ研は出展禁止。

 正直、俺としては気楽で助かっている。


 校門をくぐると、さらに空気が変わった。

 焼きそばやクレープの甘い匂い。軽音部の演奏。あちこちから聞こえる呼び込みの声。


『いらっしゃいませー!』


『こちら空いてますよー!』


『演劇部、午後一時から公演でーす!』


「すごいなぁ……」


 月菜は目を輝かせ、次々と屋台を指差す。


 ーーすると


『あ、あれ見て! 占いの館だって!』


『あれって……もしかして、あのオカ研……?』


 聞き捨てならない周囲の話題に思わず足が止まる。

 周りを見渡すと校舎の隅に張られた怪しげな看板。

 そこには【あなた、○わよ】と書かれた、どう見ても胡散臭い看板が掲げられていた。


 ……うん、見なかったことにしよう。


 そう心に決めたとき、背後から聞き慣れた声がした。


「おはよう、月菜。それに……タクローさん」


 振り返ると、桑原陽菜が立っていた。

 今日は制服ではなく、上は【中等部1年B組 演劇やります!】とプリントされたTシャツ、下は制服のスカートという格好だ。


「陽菜、おはよ! 来るの早いね」


「うん。あの子には負けてられないし」


 陽菜は静かに闘志を燃やしている。

 どうやら演劇の件で、星菜に煽られたらしい。


「そういえば、日文研は何か出すのか?」


「えっと……うちの部は、主にエ……由香里さんが準備してくれたみたい。詳しくは分からないけど」


「……あまり詳しく知らない方が良さそうだな」


 陽菜の表情は微妙に曇っていた。


 田中さんは、うちのクラスでは裁縫作業を担当していたが、目立った動きはなかった。

 ただ、やけに席を外していた記憶はある。

 あれも日文研の準備だったのだろうか。


 そのとき、校内放送が流れ始めた。


『――皆さま、おはようございます。本日は紫苑祭にお越しいただきありがとうございます』


 ざわめきが一段と大きくなる。


『紫苑祭、ただいまより開幕です!』


 拍手と歓声が校舎に響き渡る。

 その中で、月菜は本当に楽しそうに笑っていた。


「ね、お兄ちゃん。今日はいっぱい楽しもうね!」


「ああ……そうだな。とりあえず俺はクラスに顔を出してくる。月菜も準備してこい」


「うん! じゃあ、また後でね!」


「失礼します」


 月菜と陽菜は、それぞれの教室へと向かっていった。


 ――さて。

 この賑わいの中で、何も起きなければいいんだが。


 そんな考えが、頭をよぎった。




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