第15話 雨が降ってますよ。③
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教室に戻ると、すでに授業は始まっていた。
「遅れてすみません……」
月菜が小さく頭を下げると、担任は軽く頷くだけで黒板に視線を戻した。
月菜は自分の席に座り、ようやく深く息を吐く。
(……つ、疲れた……)
体操服姿なのもあって、視線が少し気になる。
だがそれ以上に、頭の中を離れないのは、さっきの星菜の言葉だった。
(……最近、人が集まるところにニブラが出る)
偶然?
それとも――。
「月菜」
小声で呼ばれ、隣を見る。
陽菜がこちらをじっと見ていた。
「大丈夫?」
「……うん。ありがと」
陽菜は月菜の体操服姿と、机の横に掛けられた濡れた制服袋を見て、眉をひそめる。
「……保健室、誰か来なかった?」
一瞬、月菜の肩がびくっと揺れた。
「え、えっと……」
陽菜はその反応で察したように、声をさらに落とす。
「……佐々木星菜?」
「……うん」
陽菜は小さく舌打ちした。
「やっぱり。何かされなかった?」
「え?」
「いわゆる寝込みを襲われたとか?」
「ねっ……! そんな事ないよ。ただのたまたまーーなのかな?」
「私に聞かないで」
『おーい、授業中に話をするなー。桑原、ここの答えを言ってみろ」
「はい」
陽菜は何事もなかったようにスラスラと答えを話していった。
(陽菜、凄いな……)
月菜にとって難問でも、問題なく答えている陽菜に感心しつつ。
そろそろ学期末テストが近づいていっており、憂鬱な気持ちになるのであった。
だが月菜の意識は、ほとんど黒板に向いていなかった。
(星菜ちゃん……何を知ってるんだろう)
―――――
一方その頃。
別の教室。
窓際の席で、佐々木星菜は頬杖をつき、空を眺めていた。
(京田琢郎……月菜ちゃんのお兄ちゃんか……)
名前を、心の中でなぞる。
(あの反応。やっぱり、ただの一般人じゃない)
視線を落とし、星菜は小さく笑う。
(面白くなってきた)
チャイムが鳴る。
「さて、と」
星菜は立ち上がり、教室を出る。
(次は……放課後、かな)
点と点が、少しずつ繋がり始めていた。




