第12話 新たな魔法少女?④
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朝のホームルーム前。
月菜は自分の席に腰掛け、頬杖をついたまま校庭の方をぼんやりと眺めていた。
まだ朝の空気が残る校舎の外では、運動部の掛け声がかすかに聞こえてくる。
(……眠い、というより……落ち着かない)
理由は分かっている。
思い出したくもない、今朝の出来事のせいだ。
「おはよう、月菜。……元気ない?」
少し遅れて教室に入ってきた陽菜が、席に鞄を置きながら淡々と声をかけてくる。
その声はいつも通り落ち着いていて、余計な感情が混じっていない。
「うん、おはよー。朝、ちょっと色々あって……」
「色々?」
短く問い返すだけ。
続きを促すような圧はない。
「……ラッキースケベって、本当にあるんだなって……」
「ラッキースケベ?」
陽菜は一瞬だけ瞬きをし、ほんのわずかに首を傾げた。
「聞いたことない単語」
「陽菜は知らなくていいことだよ」
「そう」
それ以上は何も聞かない。
陽菜は深追いせず、壁の時計に視線を移した。
「もうすぐホームルーム始まる」
「うん……」
助かった、と思う反面、少しだけ寂しい。
そんな複雑な気持ちを抱えたまま、月菜は前を向く。
二人の会話から少し離れた場所では、朝特有のひそひそ声が広がっていた。
『おい、見ろよ。京田さんと桑原さん、朝から並んで話してるぞ』
『明るくて優しい京田さんと、クールビューティーな桑原さん……やっぱうちのクラスのツートップは違うな』
――今日も平常運転、らしい。
『でもさ、隣のクラスの佐々木さんも相当可愛くない?』
『あー、佐々木星菜さんな。中等部のアイドルって感じ』
『ただなぁ……』
『兄貴がなぁ……』
その一言で、空気がわずかに変わった。
『あの佐々木冥夜だろ?』
『学園の番長の』
『この間も不良をしめてたって噂だぞ』
「……」
会話の断片が、嫌でも耳に入る。
(……佐々木星菜ちゃん)
名前だけが、妙に頭に残った。
「どうしたの?」
隣から静かな声。
「陽菜、佐々木星菜ちゃんって知ってる?」
「知らない」
即答だった。
その瞬間、チャイムが鳴り響く。
「はいはい、席つけー」
担任の声と共に、教室のざわめきは一気に収束した。
月菜は背筋を伸ばし、黒板の方を向く。
(……どんな子なんだろ)
横目で見ると、陽菜はすでにノートを開き、いつも通り涼しい表情をしていた。
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「ふはははっ、アズマアイランドは楽しんでくれたか?」
ホームルームが終わるや否や、ユウゲンが俺たちのクラスに顔を出した。
「まぁな、あんがとよ」
「で、ショージは結局一人で行ったの?」
「あたぼーよ! チケットが勿体ないだろ!」
「お前……すげぇな」
俺と月菜が行った時、ソロ客なんて一人も見かけなかったぞ。
「ジェットコースターに乗って、お化け屋敷行って、観覧車にも乗った。そして夜はホテルに泊まって夜景を楽しんだぞ」
「……満喫してるな」
「不思議と涙が出てきたけど」
「ふむ。アズマアイランドに感動し、涙したのだな。感無量であるな!」
「多分、感動の涙じゃないぞ」
「へー、だったら私も今度行ってみたいなぁ」
ミアがぽつりと呟く。
「機会があればまたチケットをくれてやろう。流石に頻繁には無理だがな」
「今度は三人で行こうぜ! もう一人で行くのは嫌だぞ!!」
「「えーっ」」
「おぉぉいっ!!」
教室に、いつもの騒がしい笑い声が戻っていた。




