第12話 新たな魔法少女?③
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「月菜ーっ、起きろーっ! 今日から学校だぞ」
ゴールデンウィークも終わり、今日から学園生活が再開する。
学生にとっては憂鬱だが、逃げるわけにもいかない。
ーーえ? ホテルではどうなっただって?
そりゃあ、健全に終わりましたよ。
健全に。
……朝起きたら、目の前に月菜がいて心臓が跳ねたのは内緒だ。
「……返事がないな。こりゃまだ寝てるな」
月菜の部屋をノックし、声をかけても返事なし。
まぁ、昨日も帰りが遅かったから仕方がないのかね。
「しゃーない。月菜ーっ、入るぞー!」
遅刻確定を避けるため、勢いでドアを開ける。
「おー……い?」
ベッドの上で、月菜が無防備な格好のまま寝返りを打っていた。
うん、黄色のパンツ見えてるね。
「って、ちがうちがーうっ!!」
思わず一人で突っ込みを入れつつ、慌てて視線を逸らす。
その間に、月菜の瞼がゆっくりと開いた。
「ーーあ、お兄ちゃんだぁ。おはよー」
寝ぼけた声で、目をこすりながら上体を起こす。
無防備な格好がより無防備になる。
前を隠すんだ前をっ!!
「んー、なんで顔を逸らすのー?」
「いや、それはだなぁ……」
「むぅ、月菜の事嫌いになったのぉ?」
しゅんと寂しげな声を出す。
明らかに寝ぼけて現状を把握できていないようだ。
「いやいや、嫌いにはなってないぞ。それよりも前をだなーーー」
「はぁー、よかったぁ。お兄ちゃんに嫌われてなくてぇ」
ふにゃりと月菜は笑った気がした。
「わたしねぇ、頑張ってるんだよぉ。この町とお兄ちゃんの為にぃ」
「うんうん、分かったから! とりあえず今の服装をどうにかしてくれ!! 目のやり場に困る!!」
「わたしの服装ぅ?ーーーって、きゃあああっ!!!!」
どうやら意識がハッキリしたらしい。
とりあえずは今母さんが仕事に行っており、家に居ない事に安堵しよう。
チョッキンは嫌だ。
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「うぅ……最近お兄ちゃんに恥ずかしいところいっぱい見られちゃってるよー」
いつもの通学路、月菜は項垂れたようにしながら登校していた。
「だからゴメンってば。俺にそんなラッキースケベばっか起こらないって」
「ラッキースケベと声が聞こえ、俺、参上!」
月菜と並んで歩いていたら後ろから猛スピードでショージが合流した。
「勝手に参上するな。さっさと退場しろ」
「そんな硬い事言うなよ。お兄ちゃんよぉ」
「お前にお兄ちゃんだなんて言われたくない!」
「んで、今日は月菜ちゃんとどんなラッキースケベが起きたんだい? お兄ちゃんに教えてみなさいな」
お兄ちゃんと呼ばれたくないし、お兄ちゃんとも呼びたくないな。
「なんもねーよ」
「ふむ……俺の予想では月菜ちゃんの部屋に入って無防備な月菜ちゃんの姿を見たと推測できるな」
「――――っっっ!!!?」
次の瞬間、月菜の顔が一気に真っ赤になった。
「ちょ、ちょっと! なに言ってるのショージさんっ!?」
「おお、図星?」
「違う!! 違うから!!」
月菜はぶんぶんと首を横に振り、慌てて俺の背中に半分隠れた。
「いやいや、その反応はどう見ても――」
「黙れ」
ショージの額に、ぐりっと指を押し当てた。
「それ以上、変な想像を口にしたら、そのおしゃべりな口をホッチキスでとめるぞ?」
「お、おお……お兄ちゃんの圧が強い……」
「お兄ちゃん言うな」
「でも否定が弱いんだよなぁ。『部屋に入った』までは否定してないあたりがさ」
「……お前な」
月菜が、きゅっと服の裾を掴んだ。
「お兄ちゃん……もういいよ……」
「いや、よくない。ショージ、いいか。朝起こしに行ったら寝てただけだ。以上」
「ほうほう」
「それ以上でも、それ以下でもない」
「ふむ……健全だな」
「当たり前だ!」
月菜はまだ赤い顔のまま、ぽそっと呟く。
「……でも……恥ずかしかったのは本当だもん……」
「月菜?」
「な、なんでもないっ!」
そのまま早足で歩き出していった。
「あ、ちょっと待てって!」
月菜がを追いかけて行く後ろでは、ショージが楽しそうに腕を組んでいる。
「いやー、朝からいいもん見た」
「見てねぇよ」
「兄妹ラブコメは鉄板だからな」
「だから違う!」
「ま、でもさ」
ショージはにやっと笑って言った。
「兄妹仲が良いってのはいいよな」




