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妹は魔法少女になりましたか?  作者: 吉本優


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5話:はい、シスコンですね。





「じゃ、俺部活あるからまた明日な」


「私も今日は部活だから、月菜ちゃんと仲良く帰りなさいよ」


昼食後、最高潮の眠気に耐えてようやく放課後を迎えた。


本日、ショージは文芸部、ミアは科学部と部活に参加するようである。


「お前らしっかり部活に入るなんて真面目だな。特にショージなんて文芸部ってイメージ全くないぞ」


「バッカ、お前、小説は人間が生み出した素晴らしい物なんだぞ! フィクション、ノンフィクション含めて人間の想像力を深めていくんだよ!」


「お前にその心があるとは思わなかったよ。ミアは……何か想像通りだな」


何ていうか……マッドサイエンティストていうか……


「あんた、今失礼な事考えていたでしょ?」


「いえいえ、ミアはイメージ通りの理系女子って思っていただけですとも」


「嘘くさいわね…、アンタは部活に入らないの?」


「今更なぁ…、それに家の事もしないといけないしな」


「何だお前、主夫にでもなるつもりか?」


「ならねーよ!」


「まぁ、タクローの家は共働きで家の事を誰かしないといけないしね。月菜ちゃんも部活に入らないの?」


「月菜は今いろんな部活を見学しているみたいだな。家の事は俺がやるから月菜には部活に入ってもいいぞって言ってある」


「やはりタクローはシスコンではないか」


「お前なぁ……家のことをちゃんとやるのがシスコンだっていうなら、世の中の家族全員がシスコンだろ!」


「まぁまぁ、ショージ。タクローは単に家族想いなだけよね。ね?」


ミアが助け船を出すが、ショージはにやにやと笑みを浮かべている。


「いやいや、月菜ちゃんのために家事をするって発言がすでにアウトだろ。家族想いじゃなくて妹想いって言わないと!」


「……いい加減にしろよ。今度お前ん家の秘蔵のエ○本を全部燃やしてやるぞ」


「おい、それはやめろ! 俺が悪かった!」


ショージが慌てて両手を挙げる姿に、俺たちは思わず笑ってしまった。


「まったく、いつも騒がしいわね。……じゃ、そろそろ私たち部活に行くからね」


「ああ、行ってこい。俺もそろそろ帰るわ」


ミアとショージが教室を出ていき、俺はカバンを肩にかけて立ち上がった。




―――――




放課後、校門の前で月菜を待つ俺。最近は部活見学のために少し遅れることが多いが、今日は珍しく時間通りに出てきた。


「お兄ちゃん! 待たせてごめんね!」


月菜が少し小走りで駆け寄ってくる。その姿を見て、俺は思わず微笑んだ。


「珍しいな。今日は見学しなかったのか?」


「うん、なんだか疲れちゃって……今日は早く帰って休みたい気分なの」


「そっか。まあ、無理しないのが一番だな」


俺たちは並んで歩き始める。夕陽が沈みかけた空が赤く染まる中、月菜はどこか物思いにふけっている様子だ。


「どうした? なんか悩み事でもあるのか?」


「えっ? ううん、なんでもないよ!」


月菜は慌てて首を振るが、俺の目は誤魔化せない。


「お前、最近ちょっと元気がないぞ。何かあったなら話してくれよ」


「……本当に何でもないの。ただ、少し考え事をしてただけ」


「考え事?」


「うん。私、どんな部活に入るのがいいのかなって……」


月菜が俯き加減で言うその表情は、どこか寂しげだった。


「無理して入る必要はないだろ。お前が楽しいって思えることをすればいいんだ」


俺がそう言うと、月菜は少しだけ笑顔を見せた。


「……ありがとう、お兄ちゃん」





―――――




家に帰ると、月菜は早々に自分の部屋にこもった。


(何か隠してるような気がするんだよな……)


部屋で一人、俺はさっきの会話を思い返していた。


月菜はいつも通りの明るくて元気な様子であるが、明らかに疲れた表情である。


(……多分、部活見学じゃなくて魔法少女としての活動に疲れているのか?)


その疑念が頭をよぎるが、根拠も証拠もない。ただ、俺は兄として月菜の力になりたい。それだけだ。


「……もう少し様子を見てみるか」


俺はため息をついて、明日の準備に取りかかった。





―――――





その頃、月菜は自分の部屋でアンクルに手を当てていた。


「また、呼ばれてしまった……」


輝く腕輪からは、どこか遠い場所からの声が聞こえる。月菜は小さくうなずくと、窓から夜の街へと飛び出していった――。


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