第11.5話 兄妹だから間違いは起きませんよ!③
―――――
「ほっっっんとうに! 本当に何も無かったんだよ!!」
「月菜、興奮し過ぎ」
同日の深夜、エヴァよりニブラの反応があったと連絡があり、泣く泣く月菜はホテルの屋上に向かい、エヴァたちと合流した。
その際にうっかりエヴァが二人を観察していた事をバラしてしまっていたのである。
「ふむ…そういう展開もありですが、流石に実の兄とそういう展開となると、やや邪道である気が……」
「エヴァ、変なこと考えない」
「え、でも私とおーーー」
「おっと、話はここまでみたいですね」
先ほどまでからかうように笑っていたエヴァが、すっと真顔になる。
「……来てる」
陽菜が指差した先。
月明かりすら届かない園内の一角、遊具の影を縫うように、黒い影がゆらりと動いた。
「あれ……ニブラだね」
人影より一回り大きい。
不定形な身体が、まるで周囲の闇を引きずるように蠢いている。
「うぅ……真っ暗でよく見えないよ?」
「視覚に頼る必要はありません。こういう時は魔力の流れを感じるのです」
数時間前までパレードの光と歓声で満ちていた遊園地は、嘘のように静まり返っていた。
その暗闇の中でも、エヴァと陽菜は確かにニブラの存在を捉えている。
「月菜、魔力感知。いける?」
「……うん」
月菜は小さく息を吸い、胸の奥に意識を集中させた。
すると、空気の温度がわずかに歪む感覚が伝わってくる。
「……右。観覧車の下。動いてる」
「正解です」
エヴァは満足そうに頷き、カードを口元に付けた。
「では、いつも通り。陽菜ちゃんは前衛、月菜さんは援護。私は後方で指揮を担当します」
「了解!」
「……了解」
二人はペンダントを空にかざす。
「《シャイニー・オン》っ!!」
二人は魔装を見に纏いニブラを迎撃しに行く。
ニブラはそれに気づきぐにゃり、と影が膨張し、地面を蹴るように跳ねる。
「来るよ」
陽菜が一歩前に出る。
夜気を切り裂くように、炎の魔力が剣に宿った。
「――サンバースト・スラッシュ!」
一直線の灼光が闇を裂き、ニブラの胴体を貫く。
だが、手応えは浅い。
「分裂型ですね」
エヴァの声と同時に、影が二つ、三つと分かれた。
「数が増えた!?」
「慌てないで、月菜さん」
「っ……!」
月菜は足を踏みしめ、両手を前に出す。
「――行くよ。ルナ・ジェイルド!」
淡い光の膜が広がり、陽菜の背後を守る。
分裂したニブラが結界に触れ、ぎちり、と嫌な音を立てて弾かれた。
「ありがとう、月菜」
「……えへへ」
一瞬、気が緩む。
――その刹那。
死角から伸びた影が、月菜の足元を掠めた。
「っ……!」
「月菜!」
バランスを崩しかけたその身体を、別方向からの光が救う。
「油断大敵ですよ」
エヴァの魔法弾が、影を正確に撃ち抜いた。
「戦闘中は、余計なことを考えないこと。……お兄さんとデートできて浮かれているのは分かりますけど」
「……っ、は、はい!」
顔が熱くなるのを感じながら、月菜は頷く。
(だめだ……ちゃんと集中しないと)
夜の遊園地。
闇の中で蠢く敵。
そして、隣で戦う仲間たち。
月菜はもう一度、深く息を吸った。
「……次、行くよ」
杖を構え月菜の周囲に魔法陣が展開される。
「《ムーン・オーブ》っ!!」
月光の魔力弾を放ち、ニブラを直撃させる。
『ギ、ギギギッ……』
この一撃でニブラはだいぶ怯んだ。
(流石は月菜さん。一撃の魔力は高い)
「このまま押し切る」
陽菜は一閃をニブラに与えようとすると……
『それはあたしの獲物っ!!』
突如、陽菜の死角から飛び出してニブラを吹っ飛ばしていった。
「だ、誰っ!?」
三人がその人物の方を見ると、
そこには青を基調とした魔装、月菜と陽菜と同い年ぐらいの背丈。
そして手には長い柄のハンマーを持っている
そう、月菜、陽菜と同様魔法少女であった。




