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妹は魔法少女になりましたか?  作者: 吉本優
5月

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11話 GW、遊ぶぞっ!⑫






 気まずい……


 今まで先程のような事が起きた事はある。

 

 あるのだが、それはまだまだ小さかった時だ。


 流石に直近で月菜の胸を掴む事などない。


 いや、あってはならないな!!


「あ、お兄ちゃん、これ……」


 月菜は持っていたパンフレットのとある部分を指差した。


「ん? これ…ナイトパレードっていう奴だな」


 どうやら、夜の遅い時間にアズマアイランドでパレードが行われるらしい。

 しかも、夏限定の。


「……見たいのか?」


「見たいっ!! けど、結構遅い時間……」


 そう、パレードが始まる時間は20時。

 因みにうちからアズマアイランドまで電車を使用し、およそ1時間半かかる。

 そして、母さんには19時までには帰ってくるように言われている。


「あー、門限が間に合わねーな」


「うぅ、お兄ちゃんと見たかったなぁ……」


 しゅんとなる月菜。

 俺が付いているとはいえ、夜遅くまで月菜を連れ出すのはなぁ……

 門限破ったら多分滅されそうだしーーー俺が。


「しょうがない、諦めるしかーーー」


「ふはははっ!! 話は聞かせてもらった!!」


「……この声は」


 声のした方を向くと、アズマアイランドのマスコットキャラであるアズマくんが謎のポーズをとっていた。


「あ、アズマくんだ! お兄ちゃん、一緒に写真撮ってもらおうよ!」


「……ユウゲン、お前何やってるんだ?」


「流石は我がオカ研のメンバー。正体を見破るとはな」


 アズマくんに扮したユウゲンがこちらの方に近づいてきた。


「え? ユウゲンって……オカ研の部長さんですか?」


「いかにも! 我の事はタクローと同様にユウゲンと呼ぶがよい」


「いや、質問に答えろよ…」


 その喋り方、可愛い感じのアズマくんに全然合ってないぞ。


「うむ、今はアズマくんに変装し、顧客の満足度を調べているところである」


「他の人にお願いすればよくないか?」


「否っ!! こういうのは実際に見聞きしなければ本当に満足しているのかは分からんのだ」


 つまり、現場に出てくるタイプのお偉いさんって事か。


「それよりもタクローよ。お前、夜のパレードを見ないで帰ってしまうのか?」


「流石に門限あるからな。俺一人ならまだしも」


「ならば泊まればよいではないか。アズマアイランドに併設されているホテルに」


「いや、ホテルに泊まる金ねーよ!」


「何を言っている。お前たちに渡したそのプレミアムチケットは無料でホテルに泊まれるぞ」


「え、そうなのか?」


 そんな凄いチケットをタダでくれるなんて、やっぱお金持ちなんだな。


「……でも、着替えとか持ってきてないよ」


「ちょい待ちや。月菜さん、何を泊まる事を検討しているの?」


月菜が少し不安そうに言う。


「問題ない」


 アズマくん――もといユウゲンは即答した。


「併設ホテルには売店もあるしアニメティも完璧である。そして最悪部屋着で事足りる。何より、夜のパレードを最前列で見られる特典付きだ」


「最前列……」


 月菜の目が、分かりやすく輝いた。


「お兄ちゃん……」


 ちら、とこちらを見る視線。

 期待が八割、不安が二割。


「……」


 正直、俺としては即決できる話じゃない。

 泊まりとなれば、母さんへの連絡は必須だし、

 何より――


「月菜」


「な、なに?」


「お前、ちゃんと連絡して許可取れるか?」


「……うん! ちゃんと説明する!」


 即答だった。


 その必死さに、少しだけ肩の力が抜ける。


「……分かった。

 母さんがOK出したらな」


「ほんと!?」


「ほんとだ」


「やったぁ!!」


 月菜は思わず両手を握りしめて、小さく跳ねた。


「夜のパレード……一緒に見れるんだ……」


「まだ決定じゃないからな」


「でも可能性はあるもん!」


 その笑顔を見て、

 さっきまでの気まずさが、少しだけ薄れていく。


「ふふふ……」


 満足そうに笑うユウゲン。


「やはり遊園地とは、人の心を動かす場所よな」


「お前が言うと全部仕組まれてる感あるんだが」


「細かいことは気にするな。

 では我はこれにて失礼する」


 ユウゲンはひらりと手を振り、再びアズマくんの着ぐるみへ戻っていった。


「……すごい人だったね」


「ああ。関わると大抵ろくなことにならん」


「でも……ありがとう、だよね」


「まあな」


 月菜はパンフレットをぎゅっと握りしめる。


「ねぇ、お兄ちゃん」


「ん?」


「もし泊まれることになったらさ……」


 少しだけ言い淀んでから、続けた。


「今日、帰らなくていいって思えるくらい、楽しい日にしよ?」


「……もう十分楽しいだろ」


「えへへ、じゃあもっと楽しくする!」


 月菜はそう言って、先に歩き出した。


 夕方の園内。

 少しずつ傾き始める太陽。


 夜に向かって、

 この一日は、まだ終わらないらしい。




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