11話 GW、遊ぶぞっ!⑦
コースターはカタカタとレールを登っていく。
月菜はすでにガチガチに固まっていた。
「お、お兄ちゃん……上、すごい高い……!!」
「今さら気づいたのかよ」
「ムリかも……ムリ……ムリぃ……!!」
頂上が近づくにつれ、風が冷たくなる。
視界が開けて、遠くの街まで全部見える。
安全バー越しに月菜の手が震えていた。
あー……これは叫ぶな。
「月菜、目閉じ――」
「ムリ!! 閉じたらもっと怖い!!」
「じゃあ前見――」
「それもムリ!!」
「どうしろってんだよ!」
そんなやり取りをしているうちに――
ついにコースターは頂点に到達した。
数秒の静寂。
そして。
ドッッッッッ!!!
一気に落下した。
「ぎゃああああああああああああああああああっっっ!!!!!」
月菜の絶叫は、もはや周囲の悲鳴をかき消すレベルだった。
ループに突入し、
「ひぃぃぃぃぃぃぃっ!!」
横回転で、
「むりむりむりむりむりぃぃぃ!!」
ツイストで、
「お兄ちゃん死ぬ!! これ死ぬやつ!! 絶対死ぬ!!!」
「死なねぇよ!!」
もはやライド中ずっと会話していた。
しかし――
最後のひねりに入った瞬間。
「……っ!!!!」
月菜の口から声が途切れた。
その代わりに、両目がぱぁぁぁっと輝いた。
「……きゃっ……!」
小さく漏れたその声は――
叫びではなく、歓声だった。
そこからの数秒、月菜は完全に吹っ切れたようで、
「すごい!! これ!! 楽しい!! めっちゃ楽しい!!!」
と、全力で笑っていた。
……あ、これハマってるわな。
そしてコースターは無事に帰還し、ブレーキがかかる。
「月菜、降りられ――」
カチャン、と安全バーが上がる瞬間。
「お兄ちゃん!!」
「うおっ?!」
月菜が抱きついてきた。
「めっちゃ楽しかった!! 死ぬかと思ったけど楽しかった!! ていうかもう一回乗りたい!!」
「お、おう……」
テンションが振り切れている。
彼女は頬を真っ赤にして、肩で息をしながらはしゃいでいた。
「ねぇねぇ次どれいく!? コースター!? それとも落ちるやつ!? 回るやつ!? 飛ぶやつ!? やばい、全部乗りたい!!」
「お前絶叫系ダメじゃなかったのかよ」
「今、克服した!!」
全力笑顔で言い切った。
その瞳の輝きたるや、さっきまで泣きそうだったとは思えないな。
―――――
一方その頃。
「……陽菜ちゃん」
「うん」
「月菜さん、楽しんでいますね」
「うん」
「私も乗りたいです」
「監視は?」
「監視の一環です!!」
「言い訳すごいね」
陽菜は呆れた表情をしていた。
―――――
月菜は俺の腕を引っ張りながら次のアトラクションの案内板へ小走りする。
「お兄ちゃん! 次はね――」
振り返った月菜は、太陽みたいに明るく笑った。
「今日、絶対ぜぇーんぶ楽しむから!!」
「……はいはい。好きにしろ」
そう言いつつ、
俺の口元も自然と緩んでしまっていた。




